2016年は、期待の景気はやや停滞気味、収入も据え置き
マネープランクリニックの家計相談アドバイスを行うFP深野康彦さんに2016年の景気動向をおうかがいしました
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2016年の景気は不透明、波乱含みと言わざるを得ません。
投資には「小回り三月、大回り三年」という格言があります。相場の動きは、短期的には3ヵ月サイクル(山と谷を作る)、長期的には3年サイクルという意味です。2012年末からアベノミクスが始まって昨年末で丸3年。この格言どおり、アベノミクスによる景気の上昇や株高の効果は、ひとまず打ち止めと考えてよさそうです。
それはデータにも表れています。たとえば、国内の倒産件数は2008年から減少し、2014年は9731件と、1990年以来、24年ぶりに1万件を切りました。しかし、同年の休廃業・解散の件数は2万6999件。倒産の2.7倍もの件数に達し、この6年間、2万5000件以上の高い水準で推移しているのです(東京商工リサーチ調べ)。休廃業・解散は限りなく倒産に近い、いわゆる「隠れ倒産」。指標結果のいいデータだけを見ると、実は現実とに大きなギャップが生じているというわけです。
決算を発表する企業を見ると、足元の業績も芳しくないというところが増えています。給与水準については、少なくとも今年は昨年や一昨年のような、軒並みベースアップというわけにはいかないでしょう。多くの中小企業は据え置き。好業績の大企業であってもボーナスで還元というケースが多いと思います。
来年の消費税に備え、政治や経済の動向に目を向けよう
家計については、アベノミクスの恩恵でやや緩んでいるという家庭も多いはず。もう一度締め直し、無駄がないか家計を見直す。そのことが大切な1年になるでしょう。貯蓄は、マイナス金利の影響で、定期預金も普通預金並みの金利になってしまうことも。ネット銀行や地方金融機関のインターネット支店などで、少しでも高い金利のところがあれば移し替えることも大切です。一方、投資については、相場はすでに年明けから大きく値を崩し、昨年末より3000円近く下落しました。こういった乱高下は今後も続くと見ていいでしょう。そうなれば、投資にはこれまで以上にリスク管理が必要となります。
また、家計にとっても日本の景気にとっても重要な意味を持つ「消費税10%」が来年4月に予定されています。それに合わせて、政治の動きも活発になってきました。衆参ダブル選挙にはならないとしても、年内に「消費税選挙」として衆院選は行われるかもしれません。選挙の争点は消費税引き上げの時期を問う形になると思われるので、自民党が勝てば消費税引き上げは再延期されると思われます。この再延期は朗報になる可能性が高いでしょう
したがって、今年は今後の家計にとっても分岐点となる大事な1年となります。家計防衛のためには、政治や経済に関心を持ち、その動向を絶えずチェックしておくことが大切なのです。そして、どういう結果になってもいいように、今年は家計支出を抑えた「我慢の1年」とすべきだと考えます。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
業界歴26年目のベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/清水京武