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四代目シグナスX EBJ-SEA5J登場
ヤマハのシグナスXといえば原付二種市場で常に人気の一台。大きな特徴はエンジンのポテンシャルが高いことで、原付二種のレースなどではカスタムベースにもされています。今回のフルモデルチェンジによって、シグナスXは4代目になりますが、まずはシグナスXの歴史を振り返っていきましょう。 初代シグナスX【型式EBJ-SE12J】がリリースされたのは2003年。当時は環境規制もあまり厳しくなかったので、ガソリンの供給方式もアナログのキャブレターを採用していました。初代のシグナスXから現在の4代目シグナスXまで一貫して生産は台湾ヤマハが担当していますが、国内仕様の初代シグナスXはキャブレター方式を採用しており、台湾からの逆輸入車には一部コンピューター制御のインジェクションを採用しているモデルも存在しました。 2代目シグナスX【型式EBJ-SE44J】は2007年に登場し、このモデルは燃料供給方式にインジェクションを採用しました。外装を一新することでシャープなイメージになり、当時は「新シグナスX」の愛称で親しまれました。 3代目シグナスX【型式は変わらずEBJ-SE44J】は2013年に登場。台湾での型式は【SE465】と変更になりましたが、日本国内では【SE44J】のままでした。外装が大きく変更されているため旧型SE44Jと呼び方に差をつけるためにユーザー間では「3rdシグナスX」の愛称で親しまれました。
>>シグナスX3rd 試乗レビュー
どのモデルも非常に人気が高く、リリースされる度にシグナスXはバイク専門誌やブログなどで前モデルと比較されながら取り上げられてきました。そして2015年11月20日に販売が開始されたのが4代目シグナスX【型式EBJ-SEA5J】です。トータルなグレードアップを図ったという4代目シグナスX。全てのモデルのシグナスXに試乗経験があるガイドが一週間都内の通勤で試乗してインプレッションをお届けします。
まずは四代目シグナスXの装備をチェック!気になる通勤での燃費は?
アップグレードされたというシグナスXの装備でユーザーが心待ちにしていたのが「リアブレーキのディスク化」です。3代目まではリアブレーキにドラム式を採用しています。絶対的にディスクブレーキが良いというわけではありませんがタッチの良さ、安定した制動力、整備性の良さに秀でているディスクブレーキはシグナスXユーザーが熱望していたポイントです。シグナスXのフロント周りを見ると先代と同じくハンドル左下に給油口、右下にはペットボトルが納まるインナーポケット、そして真下には掛けやすさが考慮されたコンビニフックが装備されています。 デザイン面で特徴的なのが導光材料を新採用したというLEDテールランプ。LEDのストップランプとバルブウインカーの上に配置されたLEDテールランプは後ろから見ると特徴的で一目でシグナスXだとわかる演出です。
シート下スペースは先代シグナスXと比べると2L減の29Lですがフルフェイス一つと合羽ぐらいであれば収納できそうです。 また、これまで国内仕様はAIS、台湾モデルはO2センサーという装備が採用されていましたが4代目シグナスXから国内・台湾どちらのモデルもO2センサーが採用されています。ちなみにAISとは日本の環境基準に適合するために排気ガスの濃度を薄くする装置で、O2センサーは排気ガス中の空気とガソリンの割合を感知して理想的な比率をコンピューターに信号で送る装置のこと。新設計の吸排気系とエンジンパーツを採用することで環境性が向上しAISが必要なくなったということなのでしょう。
街中通勤での快適性を左右するシート高は775mmです。初代シグナスXは755mmでしたが、2代目、3代目シグナスXは785mm。先代モデルに比べると若干シート高の数値は下がっています。シート形状の変更もあるため2代目シグナスXと比べると足つき性はかなり向上している印象。 個人的に感動した点は、センタースタンドが非常に軽く上げられること。シグナスXはサイドスタンドが標準装備なので駐車の際はサイドスタンドを使うことが多いと思いますが、整備する際などに使うことが多いセンタースタンドの使い勝手が良いのはストレスがなく快適です。
街中での燃費を計測してみたところ31.48km/Lで、スズキ・アドレスV125の燃費が同じく街中で42.53km/L、ホンダPCXも40km/L以下になることがなかったことを考えると、燃費はあまり良くありません。ただ先代モデルのシグナスXもあまり燃費面は優れておらず、私が街中で試乗した際も30km/Lを切ってしまうことが度々ありました。そう考えると燃費性能は以前のモデルに比べると向上しているといえます。
4代目シグナスXは走りも燃費もグレードアップ
走り出してみるとシグナスXの一番の弱みであった発進時の加速が改善され力強くスタートできるようになっていました。走り出しから法定速度ぐらいまでは軽快に加速するので常用域での使いやすさを重視したセッティングになっています。さらに4代目シグナスXでは軽量化に取り組んでいます。フレームとフロント、リア周りの軽量化に取り組んだことで先代と比べると4kg軽くなりました。エンジンセッティングの見直しと軽量化されたことが走り出しの加速の向上につながっています。
特に街中での走行時の快適性が増しており、ストップ&ゴーが多いシチュエーションでは極低速から中速域でのレスポンスが非常に良好。
エンジン自体の出力は4代目シグナスXは9.8ps/7500rpm。3代目シグナスXは11ps/8500rpmとなっており、最高出力的には1.2馬力落ちていますが、法定速度までの加速で馬力が落ちたことを体感することはありません。むしろパワーアップした印象を受けるはずです。
また、注目したいのが新型の液晶大型マルチファンクションメーター。非常に見やすく数字類が全て大きく表示されるので視認性は抜群です。
低・中速度域での加速が非常によくなったので60km/hぐらいまではあっという間に加速してしまうのですが、制限速度を超えないようにするためにも視認性の良いスピードメーターは役立ちます。
旋回性も抜群で、非常にシャープに曲がっていきます。常用域で加速が良いエンジンの特性は旋回して加速していく際にもレスポンスがよく扱いやすい印象です。前述したリアのディスクブレーキ化も、タッチが良くなっただけでなく制動力もアップしたので減速時には抜群の効果を発揮しています。
シグナスXの快適性は間違いなく向上している
最高出力の数値こそ先代シグナスXに劣っていますが、街中の走行ではパワーが落ちている感じは一切せず、むしろスルスルとスムーズに加速している印象を受けました。レースでもやっていなければ使わない高速域を犠牲にして万人が乗りやすいセッティングにしてきたといえるでしょう。しかし原付レースでシグナスXが人気なのもまた事実。今回はエンジンや駆動系をばらしたわけではありませんし、あくまで街中での走行性能のチェックでしたので4代目シグナスXエンジンのポテンシャルはわかりませんが、相変わらずシャープなハンドリングやカスタムしやすい車体構成はシグナスXファンの期待を裏切らないモデルチェンジとなっています。
ライバルのPCXやアドレスV125に比べて、フルノーマルのシグナスXは加速性能が鈍いイメージがありましたが今回の試乗でライバルに勝るとも劣らない加速性能を体感することができました。
スペックだけ見れば馬力ではPCXに劣り、軽さではアドレスV125にその座をゆずっていますが、エンジンや駆動系のセッティングによりあらゆるシチュエーションでの快適性が向上しています。この点は、スペック表だけ見ていてもわからない部分かもしれません。4代目シグナスXはサーキットだけなく、街中を一般の人が走るのに最適なモデルチェンジを遂げたと言えるでしょう。
シグナスXをちょっとカスタムするなら
こちらは、シートオープン時にスプリングの力でシートが自動で開閉する商品です。肝は勝手にシートが開閉するところではなく、シートが勝手に閉まってしまうことがなくなる点です。
これは、シグナスXのリア周りをスッキリとさせるキットです。通常フェンダーレスキットを装着すると雨天時泥はねなどの心配がありますが、シグナスXはインナーフェンダーがついているので心配がありません。
こちらはリアスポイラーの裏に装着するタイプのリアキャリアです。装着が簡単で最大積載量も5kgと充分なので大きめのリアボックスを装着することも可能です。
■主要諸元■
車名/型式 | ヤマハ シグナスX/EBJ-SEA5J |
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総排気量 | 124cm3 |
全長×全幅×全高 | 1895mm×690mm×1115mm |
軸間距離 | 1305mm |
シート高/最低地上高 | 775mm/115mm |
車両重量 | 118kg |
始動方式 | セルフ式 |
燃料消費率(km/L)(国土交通省届出値60km/h定地燃費値) | 43.3km/L |
最高出力 | 7.2kW(9.8PS)/7500rpm |
最大トルク | 9.9N・m(1.0kgf・m)/6000rpm |
燃料供給方式 | フューエルインジェクション |
燃料タンク容量 | 6.5L |
メットイン | 29L |
タイヤサイズ(前) | 110/70-12 47L |
タイヤサイズ(後) | 120/70-12 51L |
ブレーキ形式(前) | 油圧式シングルディスクブレーキ |
ブレーキ形式(後) | 油圧式シングルディスクブレーキ |