コロッケが食べたくなって菊坂へ!
樋口一葉の「たけくらべ」を読んでいると、急に菊坂コロッケが食べたくなった。肉汁がじわっと出てくるあの「まるや肉店」の菊坂コロッケだ。実は昨年の暮れにも菊坂コロッケを買いに「まるや肉店」へ出かけたのだけれど、定休日だったのか、お店が閉まっていた。でも、こういう素敵なシャッターが見れたので、それはそれでよかった。
というわけで、東京メトロ丸の内線に乗って本郷三丁目駅。駅の場所は、少し奥まったところにある。改札のところに「都営大江戸線ではありません」の文字があった。間違える人が多いのだろう。
東京メトロの本郷三丁目駅は一か所で、大きめの駅があるのに対して、都営地下鉄線の本郷三丁目駅は、シンプルで、春日通り沿いなど出入り口がいくつかある。
本郷三丁目の交差点のところに昔からある「かねやす」さん。ここの説明書きが「本郷も かねやすまでが 江戸の内」とある。これは江戸時代の川柳で、江戸の北限がかねやすだという意味だ。
そのかねやすから、本郷通りを交差点を渡って少し歩くとこんな案内板があった。
裏に説明書きがある。要約するとこうだ。時代は太田道灌が統治したころだから、徳川家康が江戸幕府を開く100年以上も前のこと。ここに「別れの橋」というのがあったのだそうだ。橋の両側には坂があった。ひとつは「見送り橋」。もうひとつが「見返り橋」。江戸で犯罪を犯した者が刑罰として、江戸から退去させられたのだが、そのとき家族が見送ったのが見送り坂。犯罪者は別れの橋を渡り、後ろを見返りながら進んだので見返り坂になったんだそうだ。
この説明文を読み、再び本郷三丁目の交差点に戻って、本郷通りを眺めてみると、なるほど、弓形のように、下り坂から上り坂になっている。上の画像でわかるだろうか。一番低い当たりにかつては小川が流れていて、その上に橋がかけられていたのだそうだ。
別れの橋跡の説明板の先に菊坂の入り口がある。本郷通りから言問通りまでの600mの何気ない坂だが、東京の街歩きの中ではいちばんスリリングでエキサイティングな散歩エリアだと僕は思っている。
青っぽい説明板がある。樋口一葉の日記とそれに対応する地図を示してくれている。
菊坂は多くの文学者がかかわりをもっているが、その中でもスター中のスターは樋口一葉だ。菊坂に住み、短い生涯ながらも日記にこの界隈の記述が多く出てくる。
さて、菊坂界隈を歩いてみよう。
次ページでは菊坂コロッケを売っている「まるや肉店」へうかがいます。