今回は、この映画の監督であり共同脚本を書かれた山本透さん、そして大人になってからのクロを演じた「りんご」ちゃん、チンを演じた「のりこ」ちゃんから話をうかがうことができました。
映画「猫なんかよんでもこない。」
1年半ぶりのご対面
撮影が終了してから約1年半。久しぶりにりんごちゃんとのりこちゃんに逢えた監督は、ひたすら「なつかしいなぁ~」「覚えてるかなぁ~」と、ふたりのご機嫌伺い。人間大好きで、環境適応能力が高いのりこちゃんは、早速監督の膝を陣取り、ごろごろ咽を鳴らします。これまた人間は大好きだけど、猫が嫌いなりんごちゃんは、のりこちゃんが監督の膝を奪ったのがイマイチ、納得できていないご様子。
山本監督の膝を独り占めしているのりこちゃんを凝視するりんごちゃん
猫大好き山本監督、でも最初は?
山本監督ご自身、5歳になる「さくら」ちゃんを猫かわいがりしている愛猫家。猫の扱いには慣れていると自信があったそうですが、撮影初日にスタンバイしていたのは生後3ヶ月過ぎの、今まさにエネルギーのかたまりのような兄弟。スタッフの中に猫を飼いたいと希望していた人がいたので、原作漫画に合わせた白黒ハチ割れとクロの兄弟を探してきて、映画デビューです。この兄弟猫は、現在スタッフさん宅で、いまだに映画出演時と変わらぬテンションで元気に成長中とのこと。「ひさしぶり~」と2頭に逢えて嬉しそうな山本監督
猫なんかよんでもこない。
上手から下手に駆け抜けるここでご飯を食べる
ここに来て水を飲む
この場所で2頭一緒に5秒だけ、じっとして
なんて、スタッフの「指示」なんかどこ吹く風。
さぁおいで! こっち来て! と呼んでも、タイトル通り、猫なんか呼んでも来ないのであります(笑)。だって、箸が転がっても楽しい子猫ですもの。
思い通りのカットを撮るのは至難の業。最初のころは、なんて無謀な映画を撮ろうと思ったんだろうと、挫折しかけたこともあったとか。
しかし。
山本監督:
「最初は、(猫が)思い通りに動かなかったけれど、最終的には思ったシーンが撮れました。準備を整えて待っていて、ここでやって(演じて)欲しいというときに、そこでやらずに別のところでやるとか、1匹が全然違うところに行っちゃうとか(笑)。でもずっと(カメラを)回していたら、こう、集まってくるの。やりたいようにはなかなかできなかったけれど、お互い歩み寄って近いものになっていきました。また役者の風間くんにも猫にあわせるように演技してもらったんで、これができなかった(撮れなかった)ということは、最終的にはなかったです」
Q:思いがけず撮れたいいシーンとか、ありましたか?
山本監督:
「予定外によかったシーンはいっぱいありますね。猫たちがスタッフとか場所にも慣れていったと思うんですよ。どんどん自然になっていったんですね。(ロケ現場の)アパートに通ううちに、だんだん勝手なことをするようになって、自分の場所だという気分になってくれたんじゃないかな。最初は、(キャリーから)出したらしっぽ下がってましたけど、普通に歩き出すようになりましたからね。その辺、よじ登ったり、その辺で寝てたり、ご飯食べたりするようになって、どんどん自然な表情が撮れるようになっていきました」
猫のしっぽの高さで猫の気持ちがわかるなんて、監督は相当の猫通ですね!
Q:主演のミツオを演じた風間俊介さんには、猫と絡むお芝居の時、特別な演技指導などされましたか?
山本監督:
「基本的には猫がどこに行って、何をしようが、自分がカットというまで芝居を続けてくれと。(猫が)違うことをはじめたら、違うことを突っ込んで、アドリブ的にしてくれたらいいしって。思った通りには猫が動かないから『なにやってるんだろう』って突っ込んでもらうことがあったり、猫にリアルに翻弄されていたということですね」
Q:昔は犬を飼っていたという山本監督。猫とはじめて暮らしはじめたときに感じたことは?
山本監督:
「勝手だなと思いました。呼んでも来ないくせに、来たいときは呼ばなくても来る。撫でられても嫌になるとプイと行ってしまう。最初は『嫌われたのか?』とびっくりしました。寝ているところに突然入ってきたり、上に乗ってきたり。そのツンデレさや自由な感じがビックリでしたね」
Q:猫好きな人にこの映画の見所を。
山本監督:
「猫映画として観て頂きたいところもあるんですけど、一番は、主人公が夢として追いかけていたものがなくなってしまって、違う夢といってもなかなか簡単にはみつけられない。その時間の長さを描くときに『(猫が)いてくれたからなんとかなった』『なんとかやってこれた』という感覚を、押しつけがましくなく、その役割を担ってくれたんじゃないでしょうか」
猫には猫の、猫だからこそできる役割、ちゃんと猫のお仕事をしましたね。
新たな猫映画を手掛ける可能性も?
タイトルの「猫なんか~」、この「なんか~」の後ろに「でも」「だから」をつけて、「猫は○○なんだよ」としたら、山本監督は、どんな言葉を繋げますか? と尋ねたところ……。「そうだなー、考えてみたこともなかったけれど、『だから~かわいい』とか、『だから~自由』かな」とステキな笑顔を見せて下さいました。
またもう一度、猫が登場する映画を撮る可能性はありますか? もう懲りちゃいました? と伺うと……
「ありますよ。ちょっと、逆に自信を持ちました。あ、意外にやれるなって」と爽やかな笑顔。
では、どんな映画を?
「続編を撮ってみたいし。猫に何かをさせるというより、そばにいるだけでいいという物語もいいと思うんですよね」
ステキです! 是非、続編、そして猫が自然体で生き生きしていて、本領発揮して人を振り回す映画を期待しています!
主演女優猫のご紹介
チンの大人時代を演じたのは「のりこ」ちゃん、5歳。「わたしは女優」モード全開ののりこちゃん
クロの大人時代を演じたのは「りんご」ちゃん、8歳。
「わたしは演技派」りんごちゃん
※原作ではクロはオスですが、映画ではメス猫がクロを演じています。
映画の中でボス猫を目指すクロには、ほかの猫とケンカをする重要な見せ場があります。といっても、実際にケンカをさせるわけにはいかないので、それらしく相手猫を威嚇してくれればいいのですが、これは猫にはなかなか難しい注文。お眼鏡にかなう演技派俳優をみつけるために、山本監督は多数の動物プロダクションにいる黒猫を見に行ったそうです。
りんごちゃんは、人間は大好きなんですが、実は大の猫嫌い。だからほかの猫が自分のテリトリーを侵してくると、すごい形相で「シャーー!」。この特技(?)のおかげで、りんごちゃんはオーディションに合格し、クロ役を射止めました。りんごちゃんの迫力満点の威嚇シーン、どうかお見逃しなく。
のりこちゃんは、駐車場の車の下に潜り込んで勝手にお昼寝したり、撮影現場から逃走を図ったりと、大変マイペース。しかし、ご覧ください、この美貌。本当に美しいハチ割れ美人です。
映画「猫なんかよんでもこない。」の見どころ
映画「猫なんてよんでもこない。」の原作は、元ボクサーで漫画家・杉作さん著による実話を基にした同名漫画。「大人が泣ける猫漫画」として大きな話題を集めています。ある日、兄(つるの剛士)が「拾った」と連れ帰ってきたのは2頭の子猫。居候の身でボクシングに情熱を捧げる弟ミツオ(風間俊介)の「オレは犬派だ!」という叫びもむなしく、2頭の世話を押しつけられます。そして、白黒ハチ割れ猫のチン(メス)と、黒猫のクロ(オス)に振り回される日々が始まるのです。しかし、やがて、ミツオは人生を賭けていたものを失い、失意のどん底に。その時彼の傍らには……。
生き物と暮らすこととは? 一緒に暮らす日々は、楽しいだけじゃない、かわいいだけじゃない、面倒なことも辛いことも、想像や本やネットからの知識だけでは気づけないことを教えてくれます。この映画は、猫と暮らしたことがある人なら「そうそう!」「うちも同じだった!」「あんな時代があったのねー」と懐かしく想い出すでしょう。これから猫と暮らしたいと思っている人には「わ、想像以上に大変かも」「寝てるときは天使だけど」「一緒に生きるってことは……」と考えさせてくれる貴重な時間になると思います。
構われるのは大好き!りんごちゃん
映画は映画館で観てこそ、最高に楽しめます!
ぜひ、猫好きのお友達を誘って映画館でご覧ください。
<作品情報>
『猫なんかよんでもこない。』
出演:風間俊介 つるの剛士 松岡茉優 内田淳子 矢柴俊博/市川実和子
監督・脚本:山本透 共同脚本:林民夫
(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会
「猫なんかよんでもこない。」公式HP