ガジェット好きにはたまらない、数々の装備
話題のP85Dに乗ってみた。フロントに193kW、リアに375kWのモーターを積む。0→100km/h加速3.3秒という、恐ろしい無音マシーンだ。
まるでクーペのように美しいサルーンフォルムは、セダンの最先端、流行の先駆というべきデザインだ。特にサイドウィンドウのグラフィックが美しい。ロックを解除すると、きれいにデザインされたドアハンドルがセリ出てくる。こういう仕掛けが、最新ガジェット好きにはたまらないはず。50過ぎのオッサンでも、思わず、クール!と叫びたくなる。
インテリアは、オーバー1000万円のクルマとしては、かなり安っぽい。デザインも平板で、造り込んだ形跡がない。よく見れば、レバーやスイッチ類は、メルセデス・ベンツの流用品である。言ってみれば安直な造りなんだけれども、それをそうとは思わせないのが、センターの巨大スクリーンの存在だ。
ここで、ナビやらエアコンやら車両モードやら、とにかく全てをコントロールする。走行中に使うもの以外のコントロール系は他にない。確かに、これは新しい。これの代わりにスマホを入れて、ナビはフロントガラスかメーター内に映し出す、なんてことが、すぐ先の将来として見えてくる。
もっとも、こうすることで相当のコストダウンも図れたはず。実をいうと、インテリアの小物(レバーやスイッチ、ダイヤルなど)をオリジナルでデザインし、生産することは、非常にコストが掛かる(だからベンツからパーツを買った)。そこを思い切って省いたばかりか、画面でことを済ませるという新しさに転換する自由で大胆な実行力こそ、テスラの面白みであり、強さだろう。
静かだが猛烈な加速がヤミツキになる!?
運転席に座って、ブレーキを踏んだ状態で、既に発車準備完了だ。あとは、メルセデスと同じコラムシフトレバーでドライブポジションへ。ゆっくりアクセルペダルを踏み込んで、無言のスタート!
小さなEVならまだしも、これだけの巨体が無音でしずしずと、そして極めて滑らかに走り出す風情は、いまだやっぱり新しい。あと何年すればフツウの感覚になるのか分からないけれども、今しばらくはこの新鮮さだけでも十分、テスラの魅力として少しずつでも信者を増やしていくに違いない。
踏み込めば、いきなりドーンと弾けて飛び出す。プロセスなし、容赦なし、いきなりの強烈な加速である。途中、内臓がきゅっと縮こまり、腹と腰がふわっと無重力状態になった。途方もなくスリリングだ。しかも無音、風を切る音とロードノイズだけが強調される。この加速、病み付きになる人も多いだろう。
しかも、それなりに安定している。低重心であることが、はっきりと分かる。シャシーの動きには、多少ぎこちなさがあるし、しなやかさには足りない。けれども、静かだが猛烈な加速が、ライドフィールの全てを忘れさせてくれる。
ハンドリングも、最新の欧州レベルからすれば、二、三周遅れの感は否めないが、逆に、この高出力をよくもここまでコントロールできたものだと、感心するほかない。
360度センサーやレーダー、カメラを用いて自動駐車や自動運転が可能となる。自動運転機能はソフトウェアのアップデートを通じて段階的に有効になるとのこと。2016年1月のソフトウェア配信ではオートパイロット、オートレーンチェンジ、オートパークが可能となった
モデルSに乗って、満足する人のパターンは2つあると思う。全くの初心者か、古今東西のクルマに乗り尽くしたベテランか、そのどちらかではないか。特に後者で、ガレーヂに操る悦びに充ちたクラシックカーやスポーツカーがあれば、他の用はテスラモデルSで過ごそうと思うに違いない。