蒙古斑(もうこはん)とは……アジア人の赤ちゃんに多いお尻の青いあざ
日本人の赤ちゃんにはよく見られる蒙古斑。なぜ人種によって違いがあるのでしょう?
蒙古斑とは赤ちゃんに生まれつき、もしくは生まれてすぐ出現する、腰からおしりにかけての青いあざです。自分の子どもにあった、兄弟にあった、というのを覚えている方も多いと思います。青いあざは一生残るわけではなく、多くは1歳、ほとんどは4歳になるまでに消えていきます。
<目次>
- 蒙古斑の症例画像・写真
- 蒙古斑の割合は? 日本人を含むアジア人は90%以上だが、人種によって差が大きい
- 蒙古斑はなぜアジア人に多いのか……メラニン色素の量が原因か
- 蒙古斑の治療はほぼ必要なし。まれにレーザー治療が必要な場合も
蒙古斑の症例画像・写真
蒙古斑は病気ではありませんので、「症例画像」という呼び方は適切ではないかもしれませんが、実際の写真をいくつか見てみましょう。■蒙古斑の画像
蒙古斑の実際の写真。日本人の赤ちゃんには非常に多く見られます
腰からおしりにかけての蒙古斑。通常4歳までには消える
赤ちゃんがお腹の中にいて発達するときに、「メラノサイト」というメラニンを作る細胞が、神経堤という部分から皮膚の表面の表皮まで移動するのですが、その過程で真皮にメラノサイトがとどまってしまうことが蒙古斑の原因とされています。
蒙古斑の割合は? 日本人を含むアジア人は90%以上だが、人種によって差が大きい
蒙古斑は英語でも同じようにMongolian spot(モンゴリアンスポット)と呼ばれ、100年以上前に東京に住んでいたドイツ人の人類学者が、日本人の赤ちゃんを見て最初に記載したと言われています。名前の通りアジア人に多く見られ、なんと90%以上の赤ちゃんに多かれ少なかれ蒙古斑があります。同じ有色人種のヒスパニック(ラテン系)では50%にみられますが、白人では10%以下と稀です。アジア人にはほとんどの子どもに見られる蒙古斑も、白人にはまれ
黒人の赤ちゃんでも9割以上に蒙古斑があるというデータがありますが、アジア人で多いことが強調されているのは、もともとの黒い肌の色で蒙古斑が目立たないからかもしれません。
蒙古斑はなぜアジア人に多いのか…メラニン色素の量が原因か
人種によって蒙古斑が出現する確率は大きく違うものの、新生児のおしりの皮膚を顕微鏡で調べると、人種や蒙古斑の有無に関わらず、皮膚の深い部分である真皮にメラノサイトが存在することがわかっています。蒙古斑のある部分ではこの真皮のメラノサイトが多く、また白人の真皮のメラノサイトはメラニンをあまり作らないということがわかっています。そのため、アジア人で蒙古斑が多いのは、真皮のメラノサイトが作られる期間が長く、それぞれのメラノサイトが白人よりも多くメラニンを作るからではないかと考えられます。
蒙古斑の治療はほぼ必要なし。まれにレーザー治療が必要な場合も
ごく稀に遺伝病に関係しているという報告もありますが、日本人では9割以上にみられ4歳までにほとんどで消失するため、蒙古斑に検査は必要ありません。蒙古斑が背中や腕、脚など広範囲にわたるときには自然に青あざが消えないことも多い
腰からおしりにかけての蒙古斑は自然に消えることがほとんど。通常は様子を見るだけで大丈夫です。肩や腕、脚などほかの広い範囲に蒙古斑がある場合には「異所性蒙古斑」と呼ばれ、大人になっても通常は消えません。この場合には「ピコレーザー」もしくは「Qスイッチレーザー」というメラニンに反応するタイプのレーザーを使用して治療を行うことができます。5回程度レーザー治療を行うと多くの場合かなりの改善がみられます。3ヶ月に1回の治療は保険治療の適応になります。お子さんであれば公費の適応になり自己負担は無料のこともありますし、3割負担の場合は範囲によりますが6千円~1万円程度が一回の治療費です。見た目以外には悪さをしない異所性蒙古斑ですが、保険適応でレーザー治療が可能ですので、治療を希望される場合はピコレーザーもしくはQスイッチレーザーをもっている皮膚科医を受診してみましょう。
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