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誰も住まない親の家、でも手放す気になれないときは?

親の家を自分の代で無くしてしまうことが申し訳なく、また親との絆や小さい頃の思い出がなくなってしまうようでと、親の家をたたむこを躊躇してしまっている方も少なくありません。といってずっと空き家にしておくわけにもいきませんので、どこかで自分を納得させなければなりません。

大久保 恭子

執筆者:大久保 恭子

これからの家族と住まいガイド

家を継がないという後ろめたさが空き家を生む

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親の家といえど、育った家の場合が多いですので、たたむのにも迷いがでてしまいます。

家を継がずに自分の代でなくしてしまう、という後ろめたさが、親の家をたたむことや、有効活用の道を選択することへのためらいを生じさせます。その結果、空き家のままにしている、とう方々は多いのではないでしょうか。特に長男に多く見られるようです。

家そのものは次世代にバトンタッチしてしまいますが、「家の系譜」や「家・親の思い出」は引き継ぐことができます。決まった方法があるわけではないのですが、皆さん思い思いのやり方で継承しているようです。


家の系譜をたどることで自分のアイデンティティを保つ

自分の存在を考えるとき、永続的なものとして「家」を大切にする、という方は多いのではないでしょうか。

親、祖父母、曽祖父母、と自分の系譜をたどることで、日本人のアイデンティティは保たれてきました。「家」がなくなれば自分が自分である所以を失ってしまう。だから、家をたたみ次世代へバトンタッチすべきだと、頭では分かっていても、気持ちがついていかない。

であれば、この機会に実際に「家」の系譜をたどり、明らかにしてみてはいかがでしょうか。具体的には家系図をつくったり、親の伝記を出版したり、といった方法が考えられます。


家や親を象徴するものを引き継ぎ思い出とする

家や親の思い出として象徴的なものを親の家から、自分の家へ移転するという考え方があります。知人の親の家の庭は大きく、父が植えた木がたくさんありました。家は売却しましたが、植物は持ってきて庭に植えて父母をしのんでいます。また、親の趣味の三味線を引き継いだという方もいます。

このように、庭木 、灯篭、水鉢など庭の一部、床柱などの家の一部を自宅へ移築したりすることで、家を偲ぶことができます。また、親の愛用の椅子やテーブルなどのインテリアを引き継げば、毎日使うたびに親を思い出すことができます。

さらに、親が趣味で書いた書、絵を壁に掛ける、趣味で使った茶器、花器、楽器などを棚などに並べ、それらを見るたびに、親の笑顔が思い出せそうな気がします。また、着物を引き継いだことをきっかけに、折々に着てみることで、父、母を偲ぶという方は少なくありません。

私が会社勤めをしていたときの上司Sさん(62歳)は、生前にお母様が遺された和歌を一冊の本になさいました。本にする過程で、一首一首読む中で、自分が知らなかった母と出会うことになった。とあとがきに書かれており、とても印象的でした。


物ではなく心の記憶を大事にする

思い出の品は何を残しても色あせてしまうので、親の思い出や家の記憶を心の中にとどめていたら良いと思う、という方もいます。心の中の思い出は宝物。絆つながりは消えないと思います。あたたかな言葉や経験は時々思い出すようにしているそうです。

この方のように、言葉や経験を思い出す、ということでいえば、恒例だった季節の行事や家伝の料理を引き継ぎ、再現する、という方法もあります。物ではなく心の持ちようです。

このように、「家の系譜」をたどる、親や祖先を象徴するものの一部を引き継ぐ、季節の行事や家伝を再現する、ということを自覚的に行うことで、親の家を継がない後ろめたさや、後悔は軽減できるのではないでしょうか。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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