住まいは人がつくるもの。その完成度(安全性など)や満足度は、当然それに関わる人に大きく左右されます。このため、私たち消費者は住まいづくりや購入、さらにはその前提となるハウスメーカー選びにあたって、人の善し悪しについてよく注目したいものです。で、住宅事業者は優秀な人材の確保や教育に力を入れており、最近はこの分野でも様々な取り組みが行われています。その取り組みを知ることは、ハウスメーカー選びなどの判断材料の一つになるはずですので、今回改めて注目してみたいと思います。

ハウスメーカーと学生がコラボレーション

先日、人材の確保や教育とはややニュアンスが異なるのですが、ユニークな事例を取材してきましたので、まずその紹介をします。一つ目は、スウェーデンハウスと東京芸術大学美術学部の学生たちがコラボしたものです。

スウェーデンハウス1

スウェーデンハウスのモデルハウスの様子。吹き抜けを大胆に使った学生の作品が展示されていた。このような展示は、研究室ではなかなかできないスタイルだ(クリックすると拡大します)

同大学は、芸術分野で多数の有名アーティストを輩出してきたことで知られています。今回紹介するのは、工芸科染色研究室の学生が制作した作品が、東京都江東区にある住宅展示場「スマートハウジング豊洲まちなみ公園」内のスウェーデンハウスのモデルハウスに展示されたというものです。

スウェーデン大使館も関わった取り組みで、作品はスウェーデンのクリスマス「Jul(ユール)」をテーマしたもの。我が国の伝統的な「絞染」や「ろうけつ染め」「友禅染」などといった染色技法が用いられた14作品が、モデルハウスの各所に展示されていました。

大学関係者によると、「学生には作品を発表する機会が少ない」とのことでした。モデルハウスのような実際の生活空間に近いスペースで発表行うことは、なおさらレアなことだそうです。要するに、スウェーデンハウスは発表の場を提供するという社会貢献を行ったわけです。

もう一つ紹介します。埼玉県南部を中心に住宅を供給しているポラスグループによるもので、同社は「ポラス-建築デザインコンペティション」という取り組みを行っています。ユニークなのは、このコンペに応募された作品を実物件化、要するに分譲住宅に反映するという内容であることです。

具体的には、グループ会社の中央住宅が分譲する「MIRAI's 三郷中央 nextstage 絆ぐ街。(ミライズ・ミサトチュウオウ・ネクストステージ・ツナグマチ)」という分譲住宅地に、東京工業大学大学院の児玉理文さんによる作品「斜め玄関の家」のデザインアイデアが採用されました。

学生に作品製作や発表の機会を提供する背景とは

建物は坪庭から玄関、そして和室につながる空間構成。適度な和のデザインの採用や、近所の人たちなどとのコミュニケーションを促進するという狙いが込められており、一般的な分譲住宅にはこれまでなかったスタイルとして新鮮に感じられました。

スウェーデンハウス2

スウェーデンハウスのモデルハウスの様子。階段スペースもこのように彩れば豊かな空間になる。学生のセンスやアイデアが生きている(クリックすると拡大します)

ちなみに学生のアイデアをそのまま取り入れたのではなく、ちゃんとプロの人たちがアレンジして建築されていました。では、なぜこのような取り組みをするのでしょうか。大学などで建築を学ぶ学生の題材となるのは大型建築物が中心で、戸建て住宅についてはあまり機会がないといいます。

そうした学生たちに戸建て住宅について学び発表する機会を提供し、応援するということをこのコンペは目的としているのです。このようなコンペは、ポラスグループだけでなく、近年、様々な企業が行うようになりました。

若い人たちの斬新なアイデアを取り入れ商品開発に役立てたり、優秀な人材を採用するためのアピール材料として、という意図もあるのでしょうが、社会貢献的な意味合いも強く、価値ある取り組みといえそうです。

このような取り組みを行う事業者は、住まいづくりにおける人材の重要さを認識しているということです。そして、少なくとも優秀な人材を獲得する努力をしており、それにより満足度の高い住まいづくりをしようと考えていることです。

大変地味な取り組みですが、そんな姿勢を持っているかどうかも、ハウスメーカー選びの際に検討の材料となるのではないでしょうか。次のページでは、さらに住まいづくりと人の関係に踏み込んでいきます。