名づけに使ってはいけない漢字をどうしても使いたい場合、どうする?
戸籍のほかに本名はない
A: まず、つけたい名前が出生届に書けないから違う名前を書いておく、ということは成り立ちません。禁止された字を使った名前は、違法で存在できないわけですから、そちらのほうがウソの名前、違う名前なのです。戸籍に登録した名前こそが、正真正銘のその人の本名なのですから、それが本当につけたい名前でなければなりません。
ただし本名とは別に、職業や趣味で芸名やペンネームを作って使うことは違法ではなく、使う漢字にも制限はありません。
名前を二つ持つことは原則として違法
「戸籍と違う名字や名前を名乗っていいか」ということについては、やる人も多いので「かまわない」と思う人も多いでしょう。しかし厳密には違法とされるのです。それは1872(明治5年)、日本ではじめて戸籍制度がスタートした時までさかのぼるのですが、この時2つの原則が作られました。
布告149号:一名主義「名前はひとつにしなさい」
布告235号:改名禁止「名前を変えてはいけません」
当時は法律と言わず、太政官布告と言いましたが、法律と同じです。この一名主義と改名禁止は、今に至るまで貫かれている原則です。一つしか持てず、変えられない名前を戸籍に登録するのですから、戸籍の名前のほかには、名前はあり得ないことになります(ただし作品発表のためのペンネーム、芸名、雅号などを作って使うことは法的に認められています)。
戦後に新しい戸籍法が作られた時、改名禁止の古い布告に代わって、「改名は正当な事由によって裁判所の許可を得て届けなさい」という条文が作られました(戸籍法107条の2)。
ところが一名主義のほうは、なぜか新しい戸籍法に書かれなかったのです。しかし明治の布告が廃止されたわけでもありませんので、名前は一つしか持てないはずなのですが、今の法律に書かれておらず、罰則もありませんので、実際は野放しだということです。
皇族と紛らわしいだけでは罰せられないが…
かなり前のことですが、有栖川識仁(ありすがわさとひと)という、皇族のような氏名を名乗る人物らが、結婚式で多額の祝儀を集め、逮捕された事件がありました。実際には、私たちが皇族のような氏名を語って歩いただけでは罰せられることはないのですが、彼らが逮捕されたのは、その氏名を使って結婚披露宴をやり、多額のご祝儀を集めたからです。当人たちは「私たちは皇族だなんて言っていない。人が勝手にそう思ったんだ」と言っていましたが、人がそう思うことを承知のうえで、その氏名を使って他人から金銭を集めたら問題です。他人を勘違いさせてお金を出させたのですから、詐欺になるわけです。