歴史的な利上げ
歴史的な利上げ
リーマンショック以降、私たちは金融緩和の中に生きてきました。緩和とは、金利を下げて、市中にお金をふんだんに供給することです。目には見えませんが、先進国の中央銀行がふんだんな資金を金融市場に送っていたのです。
現在の政策金利(中央銀行が決める金利)は、日本が0.1%、米国が0.25%、欧州が0.05%。過去の米国政策金利(FFレート)が、リーマンショック前で5%台でしたから、いかに異様に低いかが分かろうというものです。そして、先進国の中で、米国が超低金利政策からの終わりの始まりをいち早く決定したのです。
金利が上がるとおきること
金利とは、お金が稼ぐ報酬の率ですから、お金を持っている人は高い方がうれしいのです。だから、金利が上がると、上がった場所にお金は集まります。今までは、世界の先進国がほぼゼロ金利でしたので、お金は金利の高い新興国に投資されていました。しかし、資源安、インフレ、政治的混乱などで、新興国は穏やかではありません。世界で一番安心できるお金の置き場所である米国で、金利が上がれば、お金は喜んで米国に戻ってくるはずです。
久しぶりの利上げは、0.25%という慎重な上げでしたが、米国利上げは世界経済の正常化を示す一つのサインです。米国の国債や優良社債に資金が集まりやすくなります。このようにして、金利の高い債券(預貯金や国債、社債)にお金が集まるということは、株式市場からお金が逃げていくということでしょうか。
金利が上がると株は下がる?
金利高には、二つの方向性があります。一つは、金利が上がって株価が下がるケース。こちらは、悪い金利上昇です。悪い金利上昇は、景気の過熱とインフレを引き起こしします。金利は上がる、給料も上がる。しかし、物価や資産がもっと上がるので、庶民は相対的に貧しくなっていく道です。
もう一つは、金利が上がって株価も上がるケース。こちらは、良い金利上昇です。良い金利上昇は、投資意欲をかきたてるので、眠っていたお金が働き出します。結果として、企業活動が活発になり、物価上昇を超える賃金アップや税収アップが実現して、みんなが豊かになります。
悪い金利上昇との違いは、物価上昇がコントロールできているかいないかです。FRBがここでようやく決断したのは、今ここで上げないと、景気が過熱して、物価上昇をコントロールできなくなる可能性があると認識しているからです(それだけ景気回復には自信ある)。
物価上昇がコントロールできている限りは、良い金利上昇であり、株価にも悪い影響は与えないだろうといわれています。過去の統計をみると、株価は利上げの前後には大きく変動しますが、1年後にはいつも上昇してきました。
1983年から7回あった金融引き締め期において、最初の利上げ後の年間騰落率は6.4%だったという統計もあります(S&P500)。
2016年から株価は本格回復へ?
リーマンショックの世界的な危機から7年目の2015年は、大きな株安に見舞われました。特に新興国のダメージは大きく、ブラジルなどは年間20%ほどの下落です。しかし、この株安も、さらなる上昇のためには必要な調整が起こったと考えられます。こうした崩壊を経て、株式市場は成長をしていきます。今回の米国利上げも、株価の成長のために必要なプロセスの一つだと考えられます。初めの利上げが決まったものの、この先の不透明感はぬぐえません。2回目以降の利上げの、時期、回数、上げ幅なども、将来を占う重要な要素です。欧州のデフレ懸念、テロの頻発、原油など資源安など、世界の不安も尽きません。
今回の利上げの直後にも、いろいろな余波が世界中のマーケットに影響を与えるでしょう。良い影響も、悪い影響もあります。それでも、利上げの衝撃が落ち着いたら、来年の後半には新たな成長ステージに上っていくものと期待しています。