日本人の死因からみる突然死リスク……25%が心疾患・脳血管疾患で死亡
『平成29年人口動態統計の年間推計』(PDF)によると、日本人の死因は、1位「悪性新生物(がん)(27.9%)」、2位「心疾患(15.3%)」、3位「脳血管疾患(8.2%)」、4位「老衰(7.6%)」、5位「肺炎(7.2%)」となっています。
ここまでで66.2%。4位の老衰と5位の肺炎は高齢者が増えたことによる死因ですので、ここに含まれる人は大往生で「天寿を全うした」と考えてもよいのかもしれません。しかし、残りの3つは天寿を全うしたとは言いづらい死因です。
悪性新生物、心疾患、脳血管疾患だけで51.4%。2人に1人以上の人がこれらの疾患で命を失っています。このうち心疾患・脳血管疾患は突然死を起こすこともあります。心疾患・脳血管疾患の合計は23.5%。約4人に1人がこの病で命を失っています。
これらの人たちのすべてが突然死であったわけではありません。しかし、一命を取り留めたとしても片マヒなどの障害が残ったりすることもあります。再発の危険性も高く、QOLの低下は免れません。
心疾患・脳血管疾患の予防法……肥満や高血圧などの予防・改善が有効
このように突然死のリスクもあり、非常に怖い心疾患・脳血管疾患ですが、予防は可能でしょうか? 先に答えをいうと「可能」です。皆さんは「メタボリックドミノ」という図をご存知でしょうか? 慶應義塾大学の伊藤裕先生らがお作りになった図で、病気の進展の仕方をよく表しています。
この図を見ると最初に倒す牌は一番奥。「生活習慣」と書かれている牌です。最後に倒れる予定の最前列の牌には、心疾患の代表である「心不全」と脳血管疾患の代表である「脳卒中」が並んでいます。
メタボリックドミノは、すべての牌が倒れていくのを楽しんでいては死んでしまいます。死を免れるためには、最初の牌を倒さないか、どこかに仕切りを入れて倒れるのを止める必要があります。
身体のことを考えると、最初の牌を倒さない……という選択が最も聡明であることは間違いありませんが、生活をしている以上、最初の牌を倒さずに一生を終えることはなかなか難しいもの。そこで、目安として最も大切なのは「肥満」をしないことになります。2番目に「インスリン抵抗性」を是正すること、3番目に「食後高血糖」「高血圧」「高脂血症(現在の脂質異常症)」を改善することが大切であると説いています。
このうち、インスリン抵抗性は素人では発見が難しいのですが肥満は体重を管理すれば分かります。また食後高血糖・高血圧・脂質異常症は定期的な健康診断の結果で自分がどのような状態であるかを知ることができます。
メタボリックドミノでは食後高血糖・高血圧・脂質異常症の牌が横並びに書かれていますが、これらはいっぺんに発症するのではなく、高血圧から発症する人もいますし、脂質異常症から発症する人もいます。しかし、メタボリックドミノはすべての牌が倒れる必要はありません。最前列に並ぶ牌が1つでも倒れたら終了。死は目前です。
それではどのように対応するのがよいのかといえば、できるだけ残りの牌が多いタイミングで仕切りを入れて止めることが大切です。こう考えると肥満の牌が倒れる前に止めてしまうのがベストですし、それが無理でも身体に痛みやかゆみなどの不快感のない食後高血糖・高血圧・脂質異常症のうちに止めることができれば、死へのリスクが軽減できるというわけです。
また、メタボリックドミノに記載はありませんが、死因1位の悪性新生物も生活習慣病の仲間。メタボリックドミノを早期に止めることで、発症のリスクを抑えることができます。
突然死しないための食生活のコツ……メタボリックドミノ予防にも有効
突然死を防ぐには、メタボリックドミノをできるだけ早い段階で止めることです。そのためには、メタボリックシンドロームへの対策が必要不可欠になります。まずは、肥満をしない、高血圧・高血糖・脂質異常症を改善するということに限ると思います。これらのうちで、最も大切なことは「肥満をしない」ことです。肥満を解消すると血圧・血糖値・コレステロール値などが改善されることもよく知られた事実です。
具体的には現在の体から5%(70kgの人であれば3~4kg)減量することで改善するとされています。そのためにまずは「食べ過ぎないこと」が最も大切ですが、手始めには精神的に負担にならない範囲で下記の記事などを参考に、自身の食生活を何かひとつでも身体によい習慣に差し替えるとよいでしょう。
■参考リンク
日本人はもっと“食事を残す勇気”を持ってもいい
野菜にドレッシングをかけすぎていませんか?
「野菜が高くて買えない人」のための食生活マニュアル
防ぐのが難しい病気は様々ですが、できるものなら「大往生だったね」と言われて穏やかに死んでいきたいもの。メタボリックドミノの牌を1つでも多く倒さない状態で生きている人は、見た目も若々しく見えるものです。詳しくは「食べ過ぎがNGな理由を学術的に解説しましょう」で解説していますので、あわせてご覧ください。いつまでも健康で、カッコよく歳を重ねていきましょう!