脳・神経の病気

神経膠腫の症状・診断・治療

神経膠腫は脳腫瘍の30%を占める一番頻度の高い腫瘍です。脳のあらゆる部位に発生します。治療は手術、放射線、化学療法があり、一部それらを組み合わせて治療を行います。治療成績は向上していますが、なかなか早期発見が難しい腫瘍の一つです。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

神経膠腫とは

神経膠腫(しんけいこうしゅ)とは、脳腫瘍の一種で、最も悪性度が高く、最も頻度の多い腫瘍です。神経細胞を支持する神経膠細胞(グリア)から発生すると考えられています。神経膠細胞は脳のあらゆる部位に存在するため、神経膠腫の発生部位は脳すべてとなります。

脳腫瘍を考える場合、まず神経膠腫を疑います。

神経膠腫の年齢、性差

小児から老人まで発生しますが、中高年に多い腫瘍です。男性に多い傾向があります。

神経膠腫の症状

初発症状として頭痛、麻痺、ケイレン、顔の筋肉麻痺などの症状が発生します。それ以外では、歩行障害、意識障害、嘔気、嘔吐など様々な症状があります。神経膠腫だけに特徴的な症状はありません。

神経膠腫の診断

■MRI
脳腫瘍の診断にはMRIが必要です。

MRI

脳MRI画像。脳表面に発生した神経膠腫。


■病理
最終的な診断は、切除した腫瘍組織の病理診断(顕微鏡診断)で決定します。

病理

病理標本では様々な程度に悪性化した神経膠細胞があります。


手術を受けないと最終診断は決定しません。

神経膠腫の分類

神経膠腫の分類は採取された細胞の悪性度により分類されます。

■グレード1
最も進行性のないほぼ良性の神経膠腫

■グレード2
一見したところ良性と思われる状態であるが長い経過で再発する経過から悪性と診断できる神経膠腫

■グレード3
病理的に未分化な細胞が存在し、明らかな悪性と診断可能な神経膠腫

■グレード4
腫瘍のほとんどが未分化な細胞で占められていて、悪性で予後不良な神経膠腫

神経膠腫の治療法

■経過観察
一度神経膠腫と診断されれば経過観察することは考えられません。

■開頭手術
ある程度の大きさの神経膠腫では、増大すると生命予後に関わるため手術を検討します。開頭手術で神経膠腫を切除し、完全に腫瘍細胞を取り除くことができれば治癒となります。

手術の合併症として、さまざまな後遺症があります。

手術

開頭手術。全身麻酔、時に局所麻酔で手術を行います。


■放射線治療
神経膠腫に対して、いろいろな種類の放射線治療があります。ガンマナイフ、サイバーナイフなどの治療は神経膠腫には適当ではありません。標準的なX線の放射線治療が行われます。利点としては、手術が必要ないこと。通院で治療が可能な場合もあることです。

不利な点は、時として腫瘍の増大を抑えきれないこと。2次発がんの可能性があることです。

放射線治療

放射線治療は専門の特殊な機械を使用します。


■化学療法
現在テモダールカプセル(20mg)の内服薬、テモダール点滴静注用(100mg)が神経膠腫に使用可能な抗がん剤となります。高額な薬剤でいろいろな副作用もある薬剤ですので、主治医と相談しながら使用してください。通常放射線治療と組み合わせて使用します。

神経膠腫の予後

神経膠腫瘍の予後は、そのグレードで大きく異なります。グレード1、2では予後良好です。グレード3、4では予後不良です。いずれにしても早期発見、早期治療が大切な疾患の一つです。

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