海外のお風呂事情、日本との違いは
日本人は本当によくお風呂に入ります。私たちが以前行った調査では、毎日浴槽に浸かる人が68%でした。しかし、これだけお風呂が好きな国は、海外の諸国と比べると珍しいことのようです。では、お風呂は海外ではどのように利用されているのでしょうか。今回はファッションやライフスタイルなど、世界でも随一の洗練された文化を持つフランスのお風呂事情を伺うため、元フランス大使館勤務で現在一般社団法人SPALOHAS倶楽部代表理事のジュアンドヤスコさんにお話しを伺いました。
そもそもフランス人ってバスタブに浸かるの?
医療目的で使われるフランスの温泉(写真提供:フランス エックスレバン国立スパ)
そもそも、フランス人はお風呂に入る、つまりバスタブに浸かるのでしょうか?
ジュアンド:
基本的にあまりバスタブには浸からないと思います。もちろん人によりますが、毎日バスタブに入る人は少なく、せいぜい週に1~2回といったところでしょうか。それ以外はほとんどシャワーで済ませる人が多いですね。シャワーは朝、浴びてくる人が多いようです。
早坂:
どうしてバスタブに浸からないのでしょうか?
ジュアンド:
バスタブはシャワーをする場所であって、ゆっくり浸かるという感覚は少ないのかもしれません。
早坂:
日本人のようにお風呂で疲れを取るとか、リラックスする、といったことはしないのでしょうか。
ジュアンド:
そのような感覚は少ないのかもしれません。シャワーは単に体をきれいにするためのもの、と考えている人が多いのではないでしょうか?
しかし、最近はリラックス目的でバスタブを利用する人も増えているようでバスソルトなどの入浴剤もフランス国内ではいろいろ販売されています。
日本に駐在するフランス人には、なかにはとても日本のお風呂が好きになる人がいて、銭湯を真似て自宅の浴室の壁に富士山を描いた人もいました!
フランスの浴室事情とは?
早坂:日本では、一部の賃貸住宅を除けば、多くの家でトイレと分かれている独立した浴室があり、そのなかにはバスタブと洗い場があります。フランスの一般家庭の事情はどうなのでしょうか。
ジュアンド:
郊外の一戸建ての家庭ではバスタブがある家もありますが、集合住宅などはシャワーだけのところが多いかもしれません。バスタブがあっても、毎日湯を張って使うという人は少ないです。
早坂:
設備はいかがですか?バスタブはトイレと別になっているのでしょうか。
ジュアンド:
欧米式のホテルのようにバスタブの隣にトイレがあるものもありますが、トイレと別にする傾向が強いようです。日本のように洗い場があるわけではなく、バスタブはシャワーを浴びるところ、といった感じが強いです
そのため、日本式のようにゆっくり落ち着いて入るという感じにはならないですね。もちろん追い炊き機能もありません。
早坂:
なるほど、確かに、海外の学術雑誌に日本のお風呂の研究を投稿すると、欧米の編集者からは、日本ではどのようにお風呂に入るのか?と必ず尋ねられますね。バスタブの脇に洗い場がある日本式のお風呂が理解できないようです。
その都度、日本のお風呂はトイレとセパレートされていて、バスタブの隣には洗い場があって石鹸で体をあらう、シャワーを浴びるのはバスタブの外で、と説明を付けます。
フランスに温泉はあるの?
早坂:ところで、日本は温泉がたくさんありますが、フランスには温泉はあるのでしょうか?また温泉では日本のように湯に浸かるのですか?
ジュアンド:
フランスにも温泉はあります。ただ、日本と違って、基本は病気を治療するところです。日本のようにただ静かに温泉に浸かる、というより、水流やシャワー、マッサージなどを組み合わせています。
早坂:
フランス人も温泉は好きなのですか?
ジュアンド:
温泉自体はずっと治療のイメージがありましたが、最近は、ストレス社会を反映してか、休暇で来る人達が温泉スパを利用するケースが増えたようです。滞在用に観光整備も進み、フランスらしい美容や食事のケアと組み合わせています。
フランスでは普段は自宅ではあまり湯に浸かることはないようですが、逆に医療をして温泉をしっかり利用していることが分かりました。所変われば入浴習慣も変わるものです。
次の記事でフランスの温泉療法の状況について、さらにお伝えします。