新聞やネットなどの報道でご存知のように俳優の阿藤快さんが急死されました。まだまだご活躍が期待されていただけに残念でなりません。

下記は朝日新聞デジタルからの引用です。
阿藤さんのいのちを奪った大動脈瘤の破裂、それを未然に防ぐ方法はなかったのか、病院へ行くための手掛かりはなかったのか、せめて命を落とさずに済む道はなかったのか、病気そのものの予防法は、などのご質問を頂きました。そこで少し考えてみましょう。

********朝日新聞デジタルから********

阿部寛さん「下町ロケットの皆ショック」 阿藤さん急死
朝日新聞デジタル 11月16日(月)20時36分配信

テレビドラマでの個性的な脇役のほか、旅番組のリポーターとしても親しまれた俳優の阿藤快(あとう・かい、本名阿藤公一〈あとう・こういち〉)さんが、 自宅のベッドで亡くなっているのを、親族が15日に見つけた。死因は大動脈破裂で、14日ごろに死亡したとみられる。その日は69歳の誕生日だった。葬儀 は近親者で営む予定。

46年、神奈川県生まれ。当時の東京都立大卒業後、俳優座に入る。72年、「木枯し紋次郎」でテレビデビュー。「裸の街」「教師びんびん物語」などのド ラマや映画「影武者」などに出演。悪役からコミカルな役まで幅の広い演技をみせた。「ぶらり途中下車の旅」などの旅番組、情報番組のリポーターとして全国 を巡り、人気を集めた。01年11月に阿藤海から阿藤快に改名した。

TBSで放送中のドラマ「下町ロケット」で共演した俳優の阿部寛さんは「突然の訃報(ふほう)を今ロケ現場で聞いて、皆がショックを隠しきれません。大 先輩なのにおちゃめで謙虚で誰にも親しまれた方でした。難しい科学用語のせりふに苦労された時『すみません』と照れ臭そうにおっしゃっていた笑顔が忘れら れません」とのコメントを出した。

朝日新聞社

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胸部大動脈瘤を見つける決め手はCT

阿藤さんは胸部大動脈瘤(真性瘤)の破裂でお亡くなりになったであろうと報道されています。真性瘤とは大動脈の壁が薄く大きくこぶのようになる病気です。

下図は大動脈瘤のさまざまなタイプを示します(心臓外科手術情報WEBから引用)。

大動脈瘤のいろいろ

大動脈瘤のいろいろ


胸部大動脈瘤の真性瘤であれば破れる瞬間までは症状がほとんど出ません。瘤の場所によっては神経を引っ張り傷つけるため声がかすれて発見できることはありますが、通常は無症状です。未然にみつけることはかなり困難な病気です。

CTスキャンなら短時間で苦痛なくわずかな放射線被ばくで正確に診断することはできますが、ふつう、元気なひとがCTスキャンの検査を受けることはめずらしいです。だから見つけることが難しいのです。

しかし不可能ではありません。たとえば定期検診で皆さんがよく受けられる胸部レントゲンでもある程度はわかります。残念ながら心臓と重なる部位など、瘤の診断のヒントさえ得られないこともありますが、わかるケースも少なくありません。

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CTで見る胸部大動脈瘤の一例

診断の精度を上げるためにはCTが必要となります。60歳を過ぎれば数年間に一度、CTを撮ってもらうのも一法です。

また肺がんの早期検診にCTは絶大な威力を発揮しますが、その時に大動脈を一緒に見ることができます。また狭心症などがあるときにCTで冠動脈(心臓に血液を送る大切な動脈)を調べることができますが、その際にも大動脈はきれいに見ることができます。こうして他の臓器の検診の際に胸部大動脈を調べることができます。

阿藤さんの場合は……

阿藤さんの場合、9月ごろから背中の痛みを訴えておられたと報道されています。
もしその痛みが大動脈から来たものであれば9月ごろから阿藤さんは、

  1. 胸部大動脈とくに下行大動脈が破裂しそうになる、あるいは破裂しつつある状態にあったか、あるいは
  2. 下行大動脈が9月ごろに解離(大動脈の壁が内外に裂ける病気)を小規模に起こして痛みを発生し、その後徐々に解離した大動脈の壁の弱いところが膨らんで11月に破裂した

という可能性も考えられます。

もし大動脈解離であっても上記の真性瘤の場合と同様に、胸部レントゲンである程度はわかり、CTなら確実に診断がついたでしょう。

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背部痛に油断なきように

助かる可能性があったのでは

報道された情報は質量ともに不十分で、正確なことはわかりません。しかしそれらの情報だけでも9月の背中の痛みを訴えておられた段階で胸部レントゲンを、できれば胸部CTを撮っておけばずいぶん違った結果になったのかも知れません。

皆さん方には胸の痛みや背中の痛みが5分以上続くようなことがあれば、たとえその後少し落ち着いた場合でも、すみやかに病院へ行って検査を受けらえることを勧めます。それと、上記のように肺がんや狭心症の早期発見のためにCT検査を受けるときに一緒に大動脈も見てもらうことも有用です。

CT

CTスキャンで大動脈瘤の診断は簡単確実に

なお原発事故以来、CTスキャンの被ばく量が多いことが一部で指摘されています。たしかに普通の胸部レントゲンにくらべてCTの被ばく量は多めです。しかし大人の場合はCTでも通常の使い方であれば問題ありません。原発事故で懸念される内部被ばくと違って、検査の時の一瞬のみの被ばくであり、しかもそれから体が速やかに回復するからです。

予防のために

大動脈の真性瘤や解離のいずれの場合でも高血圧を予防あるいは治療することが大変重要です。中高年の方は減塩食、適度なリラックスや運動タイム、肥満やメタボの予防に加えて、できれば血圧手帳に起き抜けの血圧を記録すると良いでしょう。それをかかりつけ医に見せて指導を受けておくと未然に防ぎやすくなります。

阿藤さんのご冥福を祈るとともに、こうした残念なことが今後できるだけ起こらないよう、この記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。


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