サーミ人の世界
僕がここ数年、海外を訪れる際の目的は二つあります。一つは、共産圏だった旧ソ連や東欧諸国などの旧東ブロックを知ること。これは、今まで連載してきた「共産テクノ」にも繋がります。もう一つは、少数民族。訪れた国で少数民族がいる場所や少数民族に関する博物館などには、規模に関わらず行くようにしています。こちらは「辺境ポップ」です。少数民族は世界中にいます。いつか訪れたい場所、それはラップランド、あるいはサーミです。ラップランドは国ではありません。また、スウェーデン語で「辺境の地」を意味するラップランドやそこに住むラップ人という呼び名よりも、「サーミ人の土地」を意味するサーミ(Sápmi)やサーミ人と呼ばれることを彼らは好む傾向があります。サーミの旗も公用語となるサーミ語もあります。スカンディナヴィア半島北部を中心にしたスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ロシアの4カ国にまたがる地域を指します。アジアの少数民族にも見られますが、国家と民族は必ずしも一致しないわけです。そこに先住民族である約5万人のサーミ人が住んでいます。
サーミ人の写真を見てみると、金髪碧眼のいかにも北欧系風貌を持った人たちもいますが、中にはどことなくモンゴロイド系を感じさせる人もいます。彼らのカラフルな民族衣装は男女問わず可愛く、そういう人たちを見て、うちの娘が「サーミ人はあまり鼻が高くないから、私はサーミ人に違いない」と言っていました。サーミ人は大枠ではコーカソイドですが、モンゴロイド由来の遺伝子も含まれています。この北方の地で、大昔、遺伝子の交わりが起こったのだろうと思うと、人類のロマンを感じますね。
サーミ人はそれほど有名ではありませんが、彼らに関するエピソードはいくつかあります。
- トナカイ遊牧民のイメージが強いですが、漁業、農業など様々な職種に就いています。
- 多くの物語で、ラップランドにはサンタクロースがいることになっている。フィンランドのロヴァニエミにはサンタクロース村があります。
- 映画『アナと雪の女王』の舞台はラップランド、そしてクリストフの設定は、サーミ人とされています。
- 映画『ククーシュカ ラップランドの妖精』では、第二次世界大戦末期におけるソ連とフィンランドがラップランドを舞台した戦争が描かれています。
- 映画『ブリジット・ジョーンズの日記』で有名なレネー・ゼルウィガーの母親は、サーミ人の血を引くノルウェー人。確かにそう言われると、サーミ人っぽい。