アドバイス1 不動産投資は優先順位も必要性も低い
マネープランの観点から最初に指摘したい点としては、検討中の不動産投資はそれなりにリスクがあるということ。物件価格は6000万円で手付金として200万円。仮にそれが頭金(諸費用は別途、預貯金から捻出)とすれば、5800万円のローンを抱えます。ローンの内容は不明ですが、返済金が毎月24万円(ボーナス払いなし)ということですから、全期間固定なら25年返済で金利が1.6%程度(フラット35と同程度)、変動金利であれば22~23年返済といったところでしょうか。
どちらにしても、完済するのは70歳代後半です。しかも、お子さんが2人いらして、下のお子さんはまだ12歳。大学卒業まで10年あります。加えて、ご夫婦とも医師なのですから、お子さんたちが医学部に進学する可能性は、一般家庭より高いはず。私立大学の医学部なら、平均の学費は2300万円ほど。2人なら5000万円近くになります。
もちろん、現在の収入なら、住宅ローンも繰上返済をして10年程度で完済することは可能なはず。また、教育費に5000万円かかったとしても、捻出しようと思えばできない額ではないでしょう。
とは言え、今後教育費がかかることが想定され、ご自身も50代となり、そろそろ老後を考える時期に来て、現金が少し足りないということにも気付いている。なのに、あえて住宅ローンをダブルで抱える必要性が見当たりません。時間軸で考えても、その優先順位は教育資金や老後資金よりも低いと言えます。
アドバイス2 株式投資の継続か個人型の確定拠出年金を
不動産投資で気になる点がもうひとつ。「最低4年の家賃保障」と「家賃を相場より下げて22万円とする」という部分です。家賃保障はなぜ4年しかないのでしょうか。業者からすれば、5年ではリスクがあるからだと考えられます。家賃を相場より下げて22万円としたのは、相場以下でなければ借り手がいないことの裏返し、とも取れます。不動産投資として考えるのであれば、そのあたりをもっと精査しておくべきだと考えます。
また、一戸建ては土地付きのため資産価値も高いというイメージがありますが、マンションと比較して、維持管理が難しいのが難点。安定した賃料を確保するには、それなりに手を入れていく必要があります。もちろん、不動産価格が下落して、資産価値そのものが下がる懸念も当然あります。
相談者のシークレットさんは、そもそも1000万円もの資金を運用されています。しかも、投資スタンスは低位株をじっくり保有するという、株式投資としては堅実なタイプ。したがって、投資で老後資金を増やすなら、現在の株式投資を継続する方が、6000万円の不動産投資よりもはるかに賢明と言えます。
また、現在投資に回している資金の一部で個人型の確定拠出年金を始めてもいい。老後資金づくりという目的が明確になりますし、節税にもなります。検討してみてはどうでしょう。
アドバイス3 「どんぶり勘定」と「夫婦別々の財布」を改善
指摘したいもうひとつの点は、家計が不明確で計画性に欠けているということ。つまりは「どんぶり勘定」ということです。このデータどおり、毎月135万円の収入があり、支出が68万円なら、毎月67万円貯蓄ができます。ボーナスを加えれば年間900万円程度は貯められる計算になります。もしそのとおり貯められているなら、1年前より貯蓄が900万円増えているわけですが、おそらくそうはなっていないと思います。
それは、データ以上に支出していることを意味します。問題は、支出そのものではなく、それを把握できていない可能性があるという部分です。その把握ができないと、少なくとも現実に即したマネープランは立てられません。
先にも触れましたが、ご夫婦で高収入を得られ、来年はさらにアップするとのこと。その点で言えば、購入した物件で借り手が付かず、家賃が途絶えるようになったとしても、毎月の家計支出がいただいたデータより5万、10万円多くても、それで経済的に大きく困るということは、おそらくありません。その気になれば、年間1000万円超貯められるはずです。また、75歳まで働く予定とのことですから、少なくともそれまでは公的年金に頼らずとも、十分な生活ができるでしょう。
しかし、今後どんなリスクがあるかわかりません。その意味で、現金が少ないのは不安要素とも言えます。であれば、家計管理はキッチリし、より効率的に貯蓄を増やしていくことをススメます。
さらに言えば、ご夫婦が別々の財布で、相手の家計内容も(さらには保険の保障内容も)わからないというのは、やはり気になります。そこを改善していくことも老後資金づくりの一環と考えてください。
「シークレット」さんから寄せられた感想
あらためて家計をチェックしたところ教育費、交際費がはるかに多かったと感じています。夫婦で財布と経済状況を内緒にしているのは結婚したときからなのでこれは崩すのが難しい……。交際費は波があり一概には言えませんが、どんぶり勘定を見直す良い機会となりました。ありがとうございます。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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