東京・神奈川・千葉・埼玉に住む/23区西[中野・杉並・練馬]

富士見台、富士が見えた台地の上の住宅地

西武池袋線富士見台(練馬区)はかつて東京にいくつかあった富士が見えたことを意味する地名のひとつ。ただし、成立は新しく、昭和10年代以降。台地上に位置し、フラットで静か、一戸建ての並ぶ住宅街を見て来た。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

昭和になって生まれた富士見の地名は
女学校がルーツだった?!

富士見台駅南口

南口側には駅と繋がる商業施設があり、2015年10月時点では改装中だが、飲食店や花屋、スーパーなど生活必需品を扱う店が入る予定(クリックで拡大)

始発駅池袋から7駅、各駅停車で10分ちょっと。富士見台駅(練馬区)は東京にいくつもある富士の見える土地を意味する富士見から名付けられた駅です。とはいえ、江戸時代から富士見とされてきた千代田区や港区のそれと比べると歴史は新しく、駅名が当初の貫井駅から富士見台駅に変わったのが昭和8年、住所としての富士見台が生まれたのは昭和39年です。そもそもの貫井駅の貫井は水が湧く土地という意味ですから、大きな変化。このきっかけになったのは大正13年にお隣、中村橋駅近くに作られた富士見高等女学校だったのだとか。その後、駅名が富士見台に代わり、さらに昭和16年には当時の武蔵野鉄道(現在の西武鉄道の前身のひとつ)が分譲地を富士見台と名付けて売り出し、それが現在に繋がっているというわけです。

 

農地

それほど多いわけでないが、農地もあり、台地であることが見た目からも分かる(クリックで拡大)

駅も含め、周辺は武蔵野台地上にあり、標高は50m近く。今は冬場の晴れた日にしか見えなくなってしまったようですが、富士山が見えても不思議はない場所です。土地自体は駅の北側、石神井川周辺及び石神井川に注いでいた川跡が低くなっている程度で平坦で強固な場所です。

 

コンパクトだけれど必要十分な商店街、
南はすぐに中野区との境界に

商店街

北口から続く商店街。スーパーやドラッグストアに交じって和菓子店、呉服店など古くからあっただろう店舗もあり、街の歴史を感じさせる(クリックで拡大)

駅に降り立ってみると北口は駅前にコンビニエンスストアと何軒かの飲食店などがある程度で、北に向かう商店街はあるものの、一歩入れば住宅街。駅周辺は小規模な一戸建て、低層の集合住宅などが中心で、遠ざかるにつれ、住宅の規模はいくぶん大きくなっていきます。しかし、それほどお屋敷があるというわけではなく、ごく平均的な住宅が中心です。商店街は個人商店が中心でコンパクトですが、毎日の生活に必要なものは揃います。

 

南口側の賑わい

南口側は東西、南北に商店街があり、人の行き来も北口よりもはるかに多い(クリックで拡大)

南口には西武池袋線に沿って東西に、また、駅から南に向かって商店街があり、高架下にはスーパーもあります。店を覗いてみると今風のしゃれた店は少ないものの、遠方からも食べに来る人がいる中華料理店や昔風の菓子パンが名物の店、庶民的な居酒屋、定食屋さんなど味わいのある店もあり、価格もお手頃。雰囲気より実質重視な街というわけです。

 
千川通り沿い

千川通り。富士見台駅周辺の他のエリアよりは規模の大きな建物があるが、それでもこの通り。全体にコンパクトだ(クリックで拡大)

商店街を南に向かうと途中からは中野区に入ります。このエリアは練馬区と中野区上鷺宮が接しているのです。中野区に入ってすぐに東西に走っているののが千川通り。豊島区南長崎六丁目から練馬区上石神井一丁目に至る通りで、元々は玉川上水を水源とする江戸の六上水のひとつ、千川上水を暗渠化したものです。この通りは桜並木でも有名です。

 

公営住宅

千川通り周辺には公営の住宅などが集まっている。区界であることがよく分かる(クリックで拡大)

千川通り沿いには都営住宅はじめ公営住宅が集まっており、また中野区内にはマンションその他、北口側に比べると規模の大きな集合住宅が目立ちます。といっても、大規模というほどではなく、通り沿いでも10階前後というところです。

 

ふじみ銀座

千川通りに向かう商店街。のんびりした、レトロな雰囲気がある(クリックで拡大)

駅前がコンパクトでスペースがないこともあり、富士見台駅のバス停は千川通り沿いにあり、知らない人はちょっと迷ってしまうかもしれません。関東バス、西武バスが通っており、阿佐ヶ谷駅、練馬駅行などの路線があります。

続いて住宅事情を見ていきましょう。

 

小規模なマンション中心、
新築建売一戸建ては5000~6000万円が目安


大規模マンション

線路近くにある、このエリアでは大規模な200戸超のマンション。中古市場で見ることができる(クリックで拡大)

全体に規模の大きくない一戸建て中心だった街でもあり、まとまった土地は少なく、これまで駅から10分以内で建てられたマンションでも200戸超が最大。今後もそれ以上に大きな物件が建つことはないでしょう。現在供給されているマンションも数十戸くらいまでが大半で、価格は70平米のファミリー向けで4000万円台後半から6000万円といったところです。

 

覚えておきたいのはこの辺りは駅間が狭く、例えば西武池袋線の池袋寄りの隣駅中村橋との間は鉄道の距離にして800mしか離れていません。ちなみにこの間は線路が直線でもあり、隣の駅が見えてしまうほど。また、南側には西武新宿線が走っており、15分も歩けば井荻駅。中村橋駅と富士見台駅間も直線で考えれば10分強です。駅から遠いと言う場所は駅北側にしかなく、その意味では住宅価格が下がりにくいエリアと言えるわけです。

街の風景

一戸建て、集合住宅が入り混じる駅周辺。中にはかなり古い建物もある(クリックで拡大)

続いて中古マンションを見てみると、新築よりはあるものの、それほど数は多くありません。中心は60平米以上、70平米台ですが、中には80平米、100平米という広い物件も。価格は築10数年で75平米前後で4000万円前半から5000万円前後。新築より広めの物件があるのがメリットでしょう。

 

一戸建て建設現場

実際に建設されている現場に加え、今後建設を予定していると思われる空地もあちこちで見かけた(クリックで拡大)

新築建売一戸建ては土地面積70~80平米に建つ3LDK~4LDKが5000万円~6000万円が中心。新築マンションより、気持ち高めです。

 

新築アパート

駅から10分圏では新築されたばかりと思しきアパートも目に付いた(クリックで拡大)

賃貸は西武池袋線の都内部分限定で考えると、かなり手頃なエリア。以遠の石神井公園、大泉学園よりも安く借りられるのは各駅停車しか止まらないためでしょう。賃料はワンルームマンションで6万円前後、2DKで9万円~、アパートになると単身向けで1万円ほど安くなります。

 

駅前の風景

駅周辺に土地がないこともあり、大きな変化は期待できないが、その分、穏やかな暮らしが続くことが期待できる(クリックで拡大)

交通の往来も少なく、静かでどこかレトロな雰囲気もある富士見台。その割には都心へのアクセスは良く、池袋へはもちろん、東京メトロ副都心線を介して渋谷、横浜など東急東横線方面へ、同有楽町線を介して永田町、有楽町方面へ、お隣練馬駅からは都営大江戸線が利用できます。大きな公園その他目立ったものはありませんが、毎日の生活を静かに営み、かつ利便性も確保したいという人にはしっくりくる街かもしれません。



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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