株・株式投資/決算書からチェック!気になる銘柄の株価

ビール業界の業績と提携先・戦略の違いとは?(3ページ目)

ビール大手3社(アサヒ、サントリー、キリン)+1(サッポロ)。それぞれに自社ブランドと他社ブランドを駆使しながら、消費者の嗜好の多様化に対応しています。そんななかで勝ち組になっているアサヒやサントリーの業績伸長のポイントとは?

日根野 健

執筆者:日根野 健

公認会計士ガイド

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 株価ではアサヒの勝利!

アサヒやサントリーはキリンに追いつくために、魅力的な商品を発売したり、買収等の投資を行って、売上や利益を増加させてきました。しかし、キリンが営業利益で3位にまで落ちたのは、他社の売上や利益が増加したという理由だけでしょうか? 一般的には暑ければ銘柄は関係なくビールは売れます。ハイボールブームになれば、キリンのウイスキーも少なからず販売量は増えます。それにも関らず、アサヒやサントリーが売上を伸ばしている一方で、26年12月期にはキリンの売上が前年比で減少しています。

どうしてキリンの売上だけが減少したのでしょうか?

その理由の一つは、飲食店における販売提携と考えられます。

毎試合4万人前後の観客が集まる、阪神タイガースの本拠地甲子園球場ですが、内野席のビールの売り子はアサヒビールしかいないことをご存知ですか? 外野席や、一部の売店ではキリンビールの販売もありますが、売り子のほとんどがアサヒです。

また、餃子の王将はアサヒビールが出資をしているため、飲み物のメニューはすべてアサヒです。ビール、チューハイ、ウイスキー、ソフトドリンク、すべてアサヒの商品しか販売していません。

このように、飲食店と販売提携すると、ビールだけでなくすべての飲み物を販売できるため、ビール会社は非常に儲かります。それでは、もし提携先を他社に奪われてしまったらどうなるでしょう?

甘太郎、贔屓屋などを展開するコロワイド<7616>は、これまでサントリーを独占販売していましたが、2014年よりすべてアサヒに変わりました。はなの舞などを展開するチムニー<3178>は、キリンを販売していましたが、アサヒが約2倍の出資を行ったために、アサヒを販売するようになりました。庄やなどを展開する大庄<9979>も、サントリーを販売していましたが、アサヒの出資比率が増加したため、アサヒを販売しています。また、アサヒにシェアを奪われたサントリーですが、キリンの独占だった鳥貴族<3193>では、すべてサントリーに変更しました。

このように、飲食店の販売提携先の変更は他社のシェアを直接奪うために、各社の業績順位が大きく変動する要因といえます。販売提携先の状況を見ると最近は、アサヒ、サントリーに勢いがあって、キリンに元気がないため、キリンの売上が減少しているのかもしれません。

以下のチャートは過去5年間のアサヒ、キリン、サッポロの株価推移です。(サントリーは上場していないので、表示していません。)これを見ると一目瞭然ですね。アサヒに勢いがあって、キリンに勢いがありません。
【図4undefinedアサヒ、キリン、サッポロの株価推移】

       【図4 アサヒ、キリン、サッポロの株価推移】


しかし、キリンもこのまま黙ってはいないはず。必ず、反撃が開始されるでしょう。そして、その反撃は身近なところから始まるかもしれません。
「常連の居酒屋のビールがアサヒからキリンに変わった」
そんなことがあれば、キリンの反撃開始、そして、株価逆転劇の始まりかもしれません。
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