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流血ブリザード『悪の手先』インタビュー

2015年9月24日、ニューアルバム『悪の手先 -REVENGE OF THE MAD CORPS- 』をリリースした流血ブリザード。ゲテモノバンドとして、深夜テレビの人気者としてパンクシーンに異彩を放つ彼らの現在にせまった。ボーカルにして中心人物のユダと、ガイド・中将タカノリによる対談型インタビュー。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

殺伐としたエネルギー
『悪の手先 -REVENGE OF THE MAD CORPS-』リリース!

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ガイド:ニューアルバム『悪の手先 -REVENGE OF THE MAD CORPS-』のリリースおめでとうございます。前作の『イカの天プラ』からもう2年になるんですね。ベースとドラムは変わったもののテレビへの露出も増えて、調子よく活動しているように見えます。

『イカの天プラ』は歌モノのメロディアスな曲が多かったので「このままポップ路線に行くのかな~」と思っていたのですが、予想に反して今作はなかなかストレートなハードコア色が強い気がします。サウンド面でなにかコンセプトとか意識する部分はありましたか?


ユダ:メンバー編成も再びギター1本になったし、原点に戻ってシンプルなパンク・ハードコアをやろうと、前作はいろんな幅が広がって複雑な展開の曲も多かった。あれはあれで気に入ってるけど小綺麗だなと思ってたんだ。今回は荒々しいガレージ感のあるアルバムにしたかった。

そして曲もまだ出来てねぇのにもうやってしまおうぜ! ってノリでやったからとにかく時間がなかった。物事をよく考えてから行動するっていうよりも衝動で先に動いてしまうって方がパンクだろって思ったんだ。なんせ2か月以内でアルバムを完成させなくちゃいけなかったんだから、荒技にも程がある。ご想像の通り現場は凄惨だったよ 。

確かスリップノットだったか、作品にリアルな怒りや憎悪を注入するためにマネージャーがメンバーに物を投げ付けて怒りを煽ったとかって話があった気がするんだが、俺たちも計らずともそうなったよ(笑)。このアルバムは前作にはない殺伐としたエネルギーに満ちている。

ガイド:そうなんですね。たしかにアルバムジャケットも、よくわからないけどなんだか殺伐としてます。では曲ごとにいろいろ聞いていきましょうか。今回も妙ちくりんなタイトルが山盛りですね……。


1.『オールナイトロング』

ガイド:まずは1曲目『オールナイトロング』。ライブで盛り上がりそうなストレートでアップテンポな楽曲ですね。ガレージパンクっぽさもあるし。歌詞は素のユダらしい内省的な感じが出ていて好感持てます。

ユダ:たまたまミリーがスタジオでギターの音を調整してる時に、何の気なしに弾いてたものを「ちょっと待て! それそのまま曲にしちまおう!」って作ったんだ。

あいつは考えてきたリフとかよりリハで適当に無意識に弾いてるものの方がいいからな(苦笑)。SEXと暴力と愛がロックには必要だ。歌詞のために自分と関係をもった女性にわざわざ話を聞いたりして参考にしたんだよ。

ガイド:ツインボーカルでAメロからBメロまでデス声のユダ、サビがミリーのハイトーン……「まるでクリスタルキングやないか!」と思いましたが実は狙ったりしてました?

ユダ:何言ってんだ……てめぇ……死にてぇのか?

ガイド:クリスタルキング好きなくせに……。


2.『未来の☆(スター)』

ガイド:2曲目の『未来の☆(スター)』はバンドマンや夢を追う人種ならではの言い訳みたいな歌ですね。「いつか売れるから俺は大丈夫!なめんなよ?」みたいな。
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ユダ:何の根拠もないのに自分は他人とは違う特別な人間だとかって思ってる奴は多いと思うぜ。逆に度合いの差はあれど誰しもが一回は思うことなんじゃないか? そんで一切の苦労や現実の厳しさを省いた、やたら都合のいいサクセスを頭に描くんだよな。この歌詞を見た、とある先輩が「これ……まさに俺のこと!」って言ったからな(笑)。

自分への自虐、そしてあんたもこんなこと思ってんじゃないの? って意地悪なメッセージでもあるんだが、逆にこういう気持ちがなきゃステージなんて立てないぜっていう肯定の気持ちもあるんだ。パンクなんて中二病じゃなきゃやれないからな。でも側から見てるとやっぱりこういう奴の痛さはバカにしてやりたくなるよな。


4.『アイ ヘイト スポーツ』

ガイド:4曲目の『アイ ヘイト スポーツ』! これはいいですね。昔、酒飲みながらまるっきり同じような話したような気もしますが……。とにかくスポーツマンって不当に「健全だ!」、「爽やかだ!」ともてはやされすぎですよね。

僕の通っていた大阪桐蔭高校の野球部なんて、何股もかけまくって”玉遊び”に興じる不心得者がどれだけ多かったか。


ユダ:
50m走が速いってだけでやたらモテるなんて馬鹿げているぜ。体育会系の奴等のデリカシーの無さったらありゃしねぇ。バラエティ番組の受け売りでイジリとかしてくるんだけど、大抵がとんでもないイジリ下手で見ちゃいられないんだよ、奴ら脳ミソまで筋肉なのか!? なのに、そんなんでもアホな女子が笑ってるんだよな。

昔、親父にオリックスの試合を観に連れて行かれたんだけど、あまりにつまらなくて嫌過ぎて泣いたことがあった。野球チップスに付いてる野球選手のカードを集めてる同級生とかいたけど、単なるおっさんの写真なんか集めて何が面白いのかって思ってたね。野球なんて下等生物のやることだ。

ガイド:ちなみにユダは学生時代、どんな部活をしていたんですか?

ユダ:最初で最後の部活をしていたのは中学校の時のパソコン部だね。パソコン部なんて言うと根暗で気色悪いイメージがあるだろ? 実際そうなんだよ。だから部に顔出したのは初めの内だけで事実上帰宅部だよ。

友達と「これ以上根暗にならないために俺たちは部活をさぼってる、これは仕方ないことで、正当性のあるさぼりだ」なんて言ってたよ。流血ブリザードが俺にとって初めての部活動みたいなもんさ。


5.『MY SWEET DOG』

ガイド:5曲目の『MY SWEET DOG』はSM調教の野外プレイを唄った相当にゲスい曲ですが、語りや能天気なコーラスが挿入されていて流血ブリザードらしいエンタメ感にあふれていますね。

ユダ:これは前のベーシスト羅将神八幡太朗陽が持ってきたメロディに俺が詞をつけた。あまりにも爽やかなメロディだったから、ド最低な詞を付けてあいつの顔を歪ませてやろうと思ってな(笑)。

ガイド:そうゆうの好きだよね(笑)ファンにはこうゆうゲスい下ネタの歌詞って反応がいいんでしょうか?

ユダ:全くなんの評価も耳に入ってこねーぜ。中学生の時、同級生にいた気の強い女子を頭の中で奴隷にしてたんだ。当時よく読んでた鬼畜系SM漫画誌『コミックMate』の影響だな。中学生の時はエロ漫画読み漁ってたなー。しみじみ……


6.『撲殺ビッチ』

ガイド:6曲目の『撲殺ビッチ』。いつの間にかライブの打ち上げに紛れ込んでる見知らぬ女子……ミュージシャンあるあるですが、自分も10代の頃、顔見知りなだけの前座バンドの縁でギターウルフさんの打ち上げに紛れ込んでしまった経験があるので何とも言えないですね……。

最近の流血ブリザード周りにもそういう子って多いんでしょうか?


ユダ:流血ブリザードの客は常識人が多いんだよ。こっちから打ち上げに誘っても遠慮するくらい奥ゆかしい人ばかりだ。俺たちのファンでもねー良く分からん女がなぜか打ち上げにいて、有名な誰それと仲が良いみたいなことをアピってきてうぜーって経験がよくあったな。

結局対バンの誰かがヤって、女も満足してるんだろうがな。汚らわしいんだよ糞ビッチが! いい歳して何やってんだよ! てめぇみてえな〇ーメン臭ぇ〇〇ババアが俺様に気安く喋りかけんじゃねえよ!

ガイド:よくわかるけど伏字を増やさせるな!


8.『酒井くにおとおる』

ガイド:8曲目の『酒井くにおとおる』……いいのかなコレ?(参考リンク

ただハードコアなサウンドにくにおとおるさんの概要を説明してるだけの歌詞をシャウトしてるだけ……。「ここで笑わないともう笑うとこないよ」の語りは微妙に似てて笑えましたが、いったいユダはどんな思いでこの曲を作ったんでしょう?


ユダ:酒井くにおとおるは日本の笑いの歴史を変えたんだ! 俺は彼らから芸とはいかなるものかということを学んだ。酒井くにおとおるは日本が世界に誇るべき超一流のコメディアンだ!
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なんせ世界でただひとつの“酒井くにおとおる鋲ジャン” を着てステージに立っている俺さ。そのリスペクトぶりが分かるだろう。

ガイド:えらいもん作りましたね……しかし吉本芸人じゃなくて松竹のくにおとおるさんをリスペクトしてるところとか、お笑い通のユダらしいと思います。


9.『THE END』、10.『BLEED REVOLUTION』

ガイド:9曲目の『THE END』、10曲目の『BLEED REVOLUTION』は曲調こそハードコアっぽかったりパンク風ポップっぽかったりするんだけど、歌詞は

「なぜだ なぜなんだ こんなはずでは」
「ここから這い上がるんだ」
「惨めな思いをしたくはない」

とかえらくシリアスですよね。


ユダ:この腐りきった世界や自分の無力さに絶望する時があるんだ。だがいくら絶望したって俺たちは生き抜かなくてはいけない。絵本のような綺麗事だけでは生き抜けないぜ。時にはうす汚れた事にも手を染めなくてはならない。この世は勝つか負けるか、搾取する側か搾取される側のどちらかだ。

THE ENDは最悪な結末を。BLEED REVOLUTIONではどんな手を使ったとしても必ず目的を達成するという強固な決意を歌っているんだ。俺はJ-POPのような現実の残酷さを無視した、綺麗な言葉を羅列しただけの嘘を歌ったりはしない。あんなのは本当の意味では誰も救われやしないのさ。


11.『拝啓のなっさん』

ガイド:11曲目の『拝啓のなっさん』……なにがなんやらまったくわからないんだけどなにコレ?

ユダ:これはのなっさんていう、キレると何しでかすか分からん、あぶねー同級生のことをふと思い出して曲名にした。歌詞の内容は何も関係ない。とゆうか言語ですらない。意味? んなもんねーよ。別に何の意味もない奇声を発してるだけだ。いーだろうがよ、別に。


流血ブリザードの今後

ガイド:長々とありがとうございました。小難しいインタビューでしたが、流血ブリザードの魅力が読者の方にうまく伝わってくれることを祈ってます。歌詞カードにも書いてるけど
「ロックとはどうしようもないほど過激で狂っていて危険なもので、それでいて笑える」
って文句はユダっぽくてとてもいい言葉だね。

ユダ:ロックバンドを自称しながらほとんどのバンドがてめえ自身のロクデナシっぷりを棚に上げて、まるで小学校の道徳の教科書に書いてある説教みてーな綺麗事を歌ってやがる。

不良キャラを売ってるような野郎でもそんな戯言を歌ってやがるんだからびっくりするよ。てめえ、その悪人丸出しの面でよくそんなこと平気でできんな! 恥を知れ。

いつからロックってそんな良い子ちゃんの音楽になったんだ? ロックってのは馬鹿馬鹿しいほど過激でクレイジーなもんだろ。テレビなんかで目にする予備校生みてーな容姿の綺麗目坊っちゃんが、しょうもないどポップを垂れ流して、それでロックだとかぬかしてやがるのを見ると殺意が抑えられねえ。俺たちがロックを本来あるべき姿に戻してやってるんだよ。この俺こそが新時代のロックの神だ。

ガイド::たしかにロックが形骸化して久しいですね。売れてるロックはなよなよした貧弱なのばっかり。かと言って、そこらへんのライブハウスのロックも伝統芸能かヤンキー縦社会みたいなのばかりでうんざりします。逆風の中だと思いますが流血ブリザードの健闘を願っています。

で……これから先流血ブリザードはどんな方向に向かっていこうとしているんでしょうか?

ユダ:本来こんなバンド短命で終わるべきなんだが、もう8年くらい続いてしまってる、死に損ないだよ。でもダラダラ続くだけじゃ意味がないんだ。どこかで死に場所を探してる。だがこのまま何も成せずこじんまりと死んでいくのはごめんだ! 歴史に名を残して派手に散ってやる。

来年あのGGアリンの実兄マール・アリンが率いるバンドであり、GGアリンの演奏隊の中で最も悪名高いバンド、MURDER JUNKIESと流血ブリザードで日本ツアーをするんだ。俺はGGアリンやMURDER JUNKIESが大好きで、作品をずっと集めてきたからこんな日が来るなんて夢みたいだ。あいつらが無事入国できるか心配だがね(笑)。

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2015年9月~12月『悪の手先ツアー』!

流血ブリザードは現在『悪の手先 -REVENGE OF THE MAD CORPS-』リリースツアーで全国を公演中。
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ぜひ多くの読者に彼らの熱いパンク精神を感じ取っていただきたい。
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