シャーウッドはいわゆる木造軸組工法ですが、集成材や専用金物、耐力壁などを用いており、ツーバイフォー工法にも似た積水ハウスのオリジナル工法です。「グラヴィス・ヴィラ」にはそれに加え、新しい技術「マルチレイヤーシステム」が用いられているのが特徴とのことです。
次の【写真2】をご覧ください。ここは1階にある「ハイラウンジ」と呼ばれるスペース。2階の天井高を約1.2m高めたもので、天井高が約3.7mもある通風や採光に優れた開放感あふれる空間となっていました。つまり、この建物にもスキップフロア的な設計要素が採用されているというわけです。
ただ、一般的なスキップフロア、特に2階部分にまで貫く吹き抜け空間を作る場合とはことなり、約3.7mの空間でありながら2階の空間も使えるというのが、この建物の特徴といえるのです。表現を変えると、吹き抜けがなくても1階に天井高の高い空間を作れるというわけです。
ハイラウンジの上の空間を見てみましょう。ここは「ロフティスペース」(【写真3】)と呼ばれる空間で、この建物では主寝室となっていました。いわゆる小屋裏を利用した空間で狭苦しさは感じられませんでした。
この建物はモデルハウスであり居住面積が広めですから、ベッドの後ろ(寝た場合の頭の方)は作業スペースとなっていました。狭小敷地に建てる場合は、ベッドを壁際まで持ってくると、こもり感がより感じられる寝室となるでしょう。
2階の床から天井の最高の高さまで約4mあることで、この空間以外の2階は広々とした空間になっています。また、この建物は六寸勾配の切妻屋根による建物で壁際は狭苦しくなりがちですが、収納や化粧スペース(上記【写真4】)などを設けることで、しっかりと無駄なく生活空間として活用できるようになっています。
さて、一般的なスキップフロアによる設計の住宅では1階、2階というスタイルではなく層という考え方ですから、フラットな場所が少なく段差が至る所に存在します。それが将来、身体的な負担になる可能性があるということを前ページで指摘しました。
このモデルハウスは、1階と2階にハイラウンジとロフティスペースを設けている、比較的シンプルなスキップフロアによる建物であるため、バリアフリー的にも優れた設計だと感じられました。
ただ、2階にあるリビングには20cm(【写真5】)ほど床面が下げられています。これくらいの高さだと段差があることが認識しやすいですし、全体がすっきりとした印象です。こうすることで天井高がさらに高く感じられますし、家族の居場所も増え、使い勝手や快適性が高まっています。
2階は屋根裏を居室として活用し、さらに柱や梁が少ないのも目に付くところ。開放感を感じさせ、そうでありながら断熱性も高いため実現できることだといいます。これはシャーウッドの構法やマルチレイヤーシステムなど、積水ハウスの性能や技術の高さが表れています。
ところで、「グラヴィス・ヴィラ」のモデルハウスは、現在はまだ駒沢の展示場だけにしか建てられていないとのこと。「スローリビング」(外とのつながりが感じられる空間)や和の空間(【写真6】)などの、積水ハウスが最近力を入れている提案も盛りだくさんです。
都市型住宅、中でも狭小敷地における住空間有効活用の事例が至る所にみられますので、今回、特に紹介してみました。