たとえば、みなさんが何らかの病気になったとき、大病院へ行ったところ受付から2時間も待たされた挙句、診察は5分で終わったとします。ところが、同じ症状でかかりつけの医院へ行ったらすぐに診てくれただけでなく、30分かけてじっくり診察してくれたとします。

受付から診察終了まで、一方は2時間5分、もう一方は30分ということになりますが、このとき「2時間5分の大病院のほうが、時間が長かったぶんしっかりと診てくれた」と考える人はおそらく誰もいないでしょう。

なぜそのような話をするかといえば、2005年秋の耐震強度偽装事件をめぐる一連の報道や解説記事のなかで、当時は「建築確認事務を民間に開放し、建築確認が早くなったことが元凶だ」とするような論調がいくつか見受けられたのです。

もちろん、審査の手抜きによってスピードアップすることがあってはなりませんが、申請受付から確認が下ろされるまでの期間がまるまる審査に充てられているわけではありません。

仮に特定行政庁(役所側)による審査が60日かかったとしても、その期間の多くは順番待ちのために費やされていたり、他の複数の申請と同時並行で審査されていたりすることでしょう。

その無駄な時間の浪費を少なくして民間の確認検査機関が早く審査を終えたときに、審査期間の短さだけを捉えて「安易な審査をした」などということはできません。審査日数の長短と、審査内容の質の良否とを単純に結びつけて考えることは早計でしかなく、うわべの数字に惑わされてはいけないのです。

ところで、事件後の2007年に行なわれた建築基準法の改正で確認審査が厳しくなり、住宅着工戸数の激減、建築確認審査日数の長期化といった弊害も生じていましたが、その後に手続きの合理化なども図られ、現在はほぼ正常化しているようです。

ちなみに、国土交通省のまとめによれば2015年6月における平均所要期間(構造計算適合性判定を要する物件の集計)は、「確認申請受付~確認済証交付」が27.4日、「事前相談受付~確認済証交付」が50.9日でした。

いずれの場合も特定行政庁より指定確認検査機関のほうが2割ほど短い日数となっていますが、それによって審査の質を比べることができないのは前述したとおりです。

また、2015年4~6月期における全体の建築確認件数は、特定行政庁が19,294件なのに対して指定確認検査機関が118,986件に達しています。指定確認検査機関の存在感が、かなり大きくなってきたといえるでしょう。


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(この記事は2008年4月公開の「不動産百考 vol.22」をもとに再構成したものです)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。