秋の夜長はミステリーにどっぷり浸ってみては

夜が長い秋は、ミステリーにどっぷりと浸ってみるのもいいですね。いろんな謎を愉しんでください。



『王とサーカス』
 米澤穂信著(東京創元社)
各社ミステリーランキングで史上初の三冠を達成した『満願』の米澤穂信の最新作。主人公の大刀洗万智は同僚の死をきっかけに新聞社を辞めたばかり。フリーランスとして初めて引き受けた仕事のためにネパールを訪れます。まもなく王族の殺害事件が発生。万智が事件の情報を集めるために接触した人物も殺されます。遺体の背中には謎めいた言葉が刻まれていました。タイトルの「サーカス」とは、他人の苦しみや悲しみを娯楽として消費することを指しています。万智のような記者はサーカスの団長なのか。残酷な真相から目をそらさない彼女の凛々しさが、物語に救いを与えています。



『昨日の海は』
 近藤史恵著(PHP研究所)
四国の小さな町で暮らす高校生の光介が、家族の秘密を探る青春ミステリー。東京に住んでいた母の姉・芹と、その娘の双葉が光介の家に同居することになるところから始まります。光介の祖父母は25年前に心中したことになっていますが、実はどちらかがどちらかを殺した可能性がありました。マニアックな人気を誇る写真家だった祖父と、モデルをつとめていた美しい祖母に何があったのか。光介は関係者に話を聞きます。真実を追求するためなら誰かを傷つけてもいいという傲慢さがない。苦みはあるが優しい後味の残る作品です。



『BABEL』
 日野草著(KADOKAWA)
『GIVER』に続く復讐代行業者・義波シリーズの第2弾。全5話で構成されています。第1話の「バベル」は、観光客を人質にして展望台に立てこもる28歳の青年・廉也が語り手。廉也は閉じ込めた人々を嬲りながら自分の犯行動機を語ります。高校時代に体験した挫折、何もかもうまくいかない人生、土曜日の午後に展望台から街を眺める余裕がある人々に対する妬み。現実にもありそうな事件の様相が、義波の登場によって色合いをガラッと変えるのです。ホームズにとってのモリアーティのような宿敵が現れ、義波という主人公をめぐる物語にも新たな展開があります。続きが早くも待ち遠しくなりました。



『街への鍵』
 ルース・レンデル著、 山本やよい訳(早川書房)
今年5月に亡くなった「サスペンスの女王」ルース・レンデルの、久しぶりに翻訳された長編小説です。白血病患者に骨髄を提供したことが原因で、同棲中の恋人に理不尽な暴力をふるわれたメアリが、家を出るところから物語は始まります。メアリはロンドンのリージェンツ・パークの近くにある邸宅の留守番をつとめ、骨髄の提供相手のレオに会いに行くのです。繊細で優しい彼にメアリは惹かれますが……。メアリの新しい恋と同時期に起こった路上生活者殺害事件の行方を描いています。予想外の結末にたどり着いたとき、人間はいかに主観という歪んだフィルターを通して世界を見ているか思い知らされるでしょう。


最後は温かな気持ちになれる小説をセレクトしました