孤独な心を温める物語

寒くなると寂しさが身にしみますね。最後は温かな気持ちになる小説をどうぞ。


『あの家に暮らす四人の女』 三浦しをん著(中央公論新社)
色恋にまったく縁がないか、モテたとしてもダメ男に引っかかってしまう。残念な女たちの暮らす家が、楽園のように見える長編小説です。三浦しをん版『細雪』でもある。刺繍作家の佐知と母の鶴代が住む古びた洋館に、雪乃と多恵美が転がり込むところから物語は動きだします。お嬢様育ちで浮世離れしている鶴代、家にこもって仕事ばかりしている佐知、美しいのに他人に顔を憶えてもらえない雪乃、明るく愛らしいが元彼につきまとわれている多恵美。4人とも誰にも縛られず、自由に生きているぶん孤独です。でも血の繋がらない人間と同居するようになって、思いがけない喜びを感じるようになります。家事を手分けして、自然とリビングに集まり、おしゃべりに興じる。女たちの日常を綴るときの刺繍のように細やかな文章も素晴らしい!



『金魚姫』
 荻原浩著(KADOKAWA)
主人公の江沢潤はブラック企業に勤める営業マン。同棲していた恋人に去られ、過酷なノルマと上司のパワハラに苛まれる潤の部屋に、ある日金魚がやってきます。潤は金魚をリュウと名づけますが……。ときおり美女に姿を変える不思議な金魚との同居生活を描いた長編小説。読んでいて室生犀星の名作『蜜のあわれ』を思い出しました。テレビっ子でCM女優を真似たりするリュウがとても愛らしい。実は悲しい運命を背負っているリュウとの恋は、潤が囚われていた金魚鉢のような息苦しい世界を壊します。



『ワンダー』
 R・J・パラシオ著、中井はるの訳(ほるぷ出版)
児童書として出版されたにもかかわらず、大人のあいだで評判が広がり、NYタイムズのベストセラー第1位に輝いた作品です。主人公のオーガストは「スター・ウォーズ」が大好きな男の子。顔に先天性の障害があり、幼いころから人々に怖れられていましたが、10歳になって初めて学校に通うことになります。それから1年間の出来事が、当人だけではなく周囲の人々の視点もまじえつつ描かれるのです。オーガストをとりまくのは優しい世界とは言えません。けれど、持ち前のユーモアセンスで少しずつ味方を増やしていきます。すごくいいなと感じたのは、登場人物が同調圧力に従うよりも、自分が好きな人に正直でいられる行動を選ぶところ。最後のページにたどりついたとき、晴れ晴れとした気持ちになりました。




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