「老人の日」は老人福祉法によって9月15日、同月21日までの1週間が「老人週間」です。しかるに、別の法律で「敬老の日」が9月の第3月曜日になりました。お役所は何を祝いたいのでしょう?
糖尿病を抱えながら独りで生活することはおびえやすいものですが、怖がらないようにしましょう。医療や公的な支え、ボーラス(追加)インスリンの量をアドバイスする血糖測定器や糖尿病をサポートするアプリなどがどんどん進歩していますから期待しましょう。
今年、2015年にはベビーブーマー世代が前期高齢者(65~74歳)に到達し、10年後の2025年には高齢人口は約3,500万人に達すると推計されています。
それだけでなく、20年後の東京都の高齢者世帯は44%が一人暮らしになると国立社会保障・人口問題研究所が発表しています。日本全体でも2010年の一人暮らしの高齢者は498万人ですが、2035年には762万人に増えます。53%の伸び率です。特に男性の割合が高まる見込みで、これは家族介護の時代が終ることも意味します。
一方で2型糖尿病は老人病でもあります。程度の差こそあれ、今日でも高齢者の4人に1人は糖尿病が強く疑われる状態ですからとても心配です。老いからの糖尿病の診断は折り合い方を学ぶ時間がありません。
高齢の糖尿病患者は健康状態や平均余命などから目標とする血糖管理のヘモグロビンA1cが設定されますが、それを実現するための投薬や食事、運動は決して容易なものではありません。特に予知できない(自覚できない)低血糖の恐れのあるインスリンやスルホニル尿素(SU)薬を使っている糖尿病患者は年を問わずに心構えと準備が必要です。
ヘモグロビンA1cの目標達成よりも「安全」が第一です。
糖尿病患者も担当医も内心恐れている低血糖については今までも度々取り上げてきました。ぜひ参考にしてください。イライラ・頭痛……様々な低血糖の症状
糖尿病治療の制約因子……低血糖の症状・兆候
世界中の、一人暮らしで糖尿病治療にインスリンやスルホニル尿素(SU)薬を使っている人の一番の関心事は低血糖です。特に夜間の就寝中に起りやすいのです。困ったことに、もともと個人によって症状は違いますし、病期の進行や他病・他薬との相互作用、加齢による知覚の変化によって自覚できる症状は移り変わります、介護してくれる人もなく、自分も意識混濁している状態は死と隣り合わせになることもあります。
かなり前のことですが、20代で1型糖尿病を発症した知人のバーテンダーが一人暮らしのアパートの玄関で倒れてそのまま死亡したことがありました。アルコールとインスリンのトラブルだと思いますが気の毒なことでした。医療従事者は低血糖時の対処のしかたについては教えてくれますが、やはり、まず第一にどうやって低血糖にならないようにするかの準備と心構えが大切です。以下のアドバイスを参考にしてください。
安全な、しっかりした計画を立てる
上記の別記事で低血糖の症状を説明しましたが、誰でも同じように症状が現れるわけではありません。あくまでも十人十色ですし、年月によって感知力、自覚する症状が変化します。米国の内科医は学生時代に医療チームにサポートされながらインスリンを注射して低血糖を体験するそうですが、このようなインスリンビギナーのショック症状と私達のような日常的にインスリンを使っている人の緩慢な低血糖のサイン、感知力は同じではありません。また、糖尿病のある高血圧症に関して降圧薬のベータブロッカーを処方することは日本ではないと思いますが、欧米では男性の前立腺肥大による排尿難にも効果があるということで処方する医師があります。このような薬によって低血糖症状を隠してしまうことがありますから要注意です。
心構えとしては、いつでもどこでもブドウ糖が手元にあるように準備することです。私はどんな服を着ようとも必ずポケットにはブドウ糖が入っていますし、車のコンパートメント、ベッド脇のサイドテーブルにも血糖測定器とブドウ糖は用意してあります。違和感を覚えたらためらわず10g~のブドウ糖を取ることです。
緊急連絡先と自分の健康状態、服薬のリストを手元に備えておく
家族や友人、担当医やかかりつけの薬局などのリストをスマートホンに入れておいたり、身に付けるUSBネックレスに記入しておきましょう。意識不明で倒れた時に、それらの所持、所在が介助者に分かるようにその指示、場所を日常的に使う冷蔵庫の扉に貼っておくことが勧められています。何よりも血糖自己測定
一人暮らしの糖尿病者が常に頼りになるのが血糖測定です。血糖値に影響するのは食事や薬だけではありません。活動量や体重の増減、ストレス、睡眠不足、その他もろもろが血糖を上下させます。米国では連続して血糖値を測定する装置や、離れたところに測定した血糖値を送信できる、あるいは血糖値に応じてインスリンを制限するインスリンポンプなどがありますが、日本ではまだ夢物語です。担当医に相談して血糖自己測定が保険適用になるように頼むことです。エクササイズはスマートに!
運動の大切さは承知してますが、畑仕事やペンキ塗り、ショッピングの長歩きなどで思わぬ低血糖になることがあります。それに備えてインスリンの減量や定期的な血糖自己測定を忘れずに。昼間の運動や労働が夜間の低血糖を引き起こすことがあります。就寝時のスナックなどを会得しましょう。私は夜中に異様に目が覚めたら必ず血糖測定をするようにしています。親族、友人、隣人の絆を大切に!
毎日連絡をくれる人や訪れてくれる人が大切です。あるいは米国では糖尿病アプリで糖尿病患者を支えるシステムが次々と実用化しています。例えばロッシュの血糖測定器は個人の血糖値の推移を多重的に析して、その人にその場での食事内容に見合ったボーラスインスリンをアドバイスしてくれるRoche Accu-chek Connect systemを開発してFDA(米・食品医薬品局)の認可を受けています。スマホのアプリが医療機器として認められたのです。グーグルも製薬大手のサノフィと糖尿病治療の名門(米)ジョスリン糖尿病センターと組んで糖尿病の新テクノロジーを開発すると発表しています。高齢独居老人の糖尿病をサポートする技術がこれからの患者の生活を支えてくれるのは間違いありません。
また、高齢の独居糖尿病患者は飲みきれない程の薬を処方される多薬処方のサンプルみたいな人が多いのです。これは欧米でも問題になっていて、薬の相互作用で低血糖の原因になることもありますし、食欲がないので食事を抜いて服薬だけをする人もいます。これも低血糖の原因になります。担当医や薬剤師に3~4ヵ月に一度は全ての薬をチェックしてもらうことです。
糖尿病のある人生を送ることは、別の見方からすれば治療の権利を委任されていることでもあります。独りではとても難かしい場面もありますが、多くの人の力を借りてなんとかしていくしかありません。勇気を出しましょう!