その後、住宅が充足するようになると分譲事業からは撤退し、再編によって都市再生機構(以降、UR都市機構)が設立され、今は全国で約75万戸のUR賃貸住宅の活用や維持管理を中心に、民間企業や地方公共団体と連携した都市再生の推進や被災地の復興支援などを担っています。
公団時代に建設された古い住宅は老朽化が進み、団地といえば古くて住みづらいといったイメージを持たれているようです。ところが、最近では団地のリノベーションが進められ、古びたイメージを一新する「DANCHI」と呼んだほうがいいような住宅も登場するようになりました。
KANGETSUKYO DANCHI(風景に開いたオープンプラン)。リング状の白いプレート(2本)に配管や配線、照明などを集約し、LDKの中央にキッチンを据えた、開放的なプラン。
UR都市機構では75万戸の賃貸住宅を再生・再編する計画
当初は「団地族」という言葉がうまれるほど最先端だった住宅も老朽化が進み、今の生活に合わなくなってきます。そうなると、取り壊して建て替えをしたり、今の生活に合うように改修(リノベーション)をしたり、戸数を削減したりすることが考えられます。UR都市機構では、75万戸の賃貸住宅のうち、老朽化が進んだ昭和30年代の建物は基本的に建て替えによる再生を進めていますが、昭和40年~50年代の建物も含めリノベーションによる再生を進めているものもあります。また、一部の団地については、削減する計画を立てています。
一方で、団地には他の住宅にはない魅力もあります。広い敷地、建物と建物の間隔を十分に空けたゆったりとした配置、豊かな植栽、時を重ねたからこその落ち着いた雰囲気などの価値も見直されています。こうした魅力を活かした、民間事業者との連携によるリノベーションによって、新しい需要を生み出した2つの事例を紹介しましょう。
観月橋団地からKANGETSUKYO DANCHIへ
昭和30年代に建設された観月橋団地(京都市)は、集約型の再生として14棟中4棟を解体し、10棟の既存住宅の有効活用を図るために、民間事業者からリノベーションの提案を受けることにしました。公募の結果、(株)OpenA(オープン・エー)(企画設計デザイン:馬場正尊さん)と(株)DGコミュニケーションズ+星田逸郎空間都市研究所(企画設計デザイン:星田逸郎さん)の2事業者が選定され、企画設計やPRなどの提案が採用されました。(株)OpenAの馬場さんのデザインは、「引き戸で空間をスイッチ、キッチンを中心にしたコンパクトライフ」(アイランドキッチンプラン)と「生活の自由と想像力を広げる土間空間」(土間プラン)。
KANGETSUKYO DANCHI(アイランドプラン)。引き戸で部屋を分けたりつなげたりできる。アイランドキッチンを中心に据えている点も特徴。
KANGETSUKYO DANCHI(土間プラン)。様々な使い道がある土間のような空間を設けている点が特徴。
KANGETSUKYO DANCHI(風景に開いたオープンプラン)。団地特有の畳を樹脂畳にすることで、ベッドやソファも似合う空間にしている。
KANGETSUKYO DANCHIのロゴデザイン
また、ASYLの佐藤直樹さんが新たなロゴデザインを作成し、住棟の外壁塗装やPRなどに統一して利用することで、団地のイメージを刷新し、DANCHIへの変化を印象づけることに成功しています。
古い団地の場合、エレベーターがなかったり、住戸の面積が40平方メートル台までと狭かったりしますので、単身や共働きカップルなど若い層を呼び込むことが課題になります。観月橋団地のリノベーションは、豊かな自然と取り入れながら、スタイリッシュなデザインを実現して、期待通り若い層の注目を集めることになりました。
○KANGETSUKYO DANCHI
http://www.ur-net.go.jp/kangetsukyo/
>>次からは、「多摩平団地からたまむすびテラスへ」の事例を紹介します。