あるとき、地方の某市で物件を見るために歩いて現地へ向かっていたところ、手前のビルの屋根越しに巨大な看板が……。
看板の下の建物自体は手前のビルに隠れて見えなかったものの、建物の屋上いっぱいに、およそ50m~60mの幅はあろうかという大きな看板で、ちょうどあたりが薄暗くなってきた時間帯、複数の色付きスポット照明を当てられたカタカナ文字が妖しく浮かび上がっているのでした。
周囲にはマンションが多いものの「エリア的にはラブホがあっても仕方がないのかな」「これから見に行く物件のそばなら、評価を少し見直さないといけないのかな」などと考えつつ、先に目的物件の室内を確認したのです。
それから外に出て、ラブホ側に回ったところ……あれっ、ラブホがない!
そのときになって初めて、それがラブホテルではなく分譲マンションであり、屋上に据えつけられた巨大看板は店名などではなく、そのマンション名であることに気がついたのです。
先ほどは手前のビルの陰に隠れていた建物本体部分も、いたって普通のマンション仕様で、初めに看板だけを見て、てっきりラブホだと思い込んでしまったのでした。たしかに「HOTEL」の表記はありませんでしたが……。
以前はマンションの屋上や塔屋部分などに、デカデカとマンション名を表示しているケースも少なからずありましたが、最近の新しいマンションでは(とくに東京都心部などでは)あまり見かけることがありません。
それでも地方都市や郊外などでは、まだそのようなマンションがあるようです。その巨大看板のマンションもまだ完成したばかりのようで、「好評分譲中」の横断幕がかかっていました。
マンション名を目立つように表示しても、その所有者や居住者などには何らメリットがなく、マンションデベロッパーの広告(マンションブランドや会社名の告知)を意図して掲げられていることが大半でしょう。
しかし、高級マンションではあり得ないような看板を掲げれば、わざわざ「高級マンションではありません」と宣言しているようなものかもしれません。
それはともかくとして、青田売りが多いマンションで「看板を据えつけること」がどこまで重要事項として説明されているのか、少し心配になるところです。
購入者のなかには、それがまったく気にならないという人もいるでしょうが、逆に買ったことを後悔するほど気になってしまう人も少なくないでしょう。
屋上といえども購入者全員の共有物ですから、それを建てた側のマンションデベロッパーが好き勝手に使えるというわけではないはずですが……。
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(この記事は2008年8月公開の「不動産百考 vol.23」をもとに再構成したものです)
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