インテリアや部屋の色が与える「色彩心理」
「色彩心理」は、カラーコーディネートを考える上で、重要な要素のひとつ。「色彩心理学」とは、色彩の見え方、感じ方など色彩に対しての人間の行動(反応)を研究する分野、領域のことで、色覚の問題から色彩に対してもつ印象、調和感などまでが取り上げられており、場合によっては生理学、芸術、デザイン、建築などと関係してきます。
例えば、壁紙の色を変えるだけで、仕事力や恋愛力がアップすることもあります。そこで今回は、インテリアの色が私たちに与える影響を、色彩心理の観点から解説いたします。
色の正体「可視光線」とは?
人間の目に光として感じる波長範囲の電磁波のことを可視光線と呼びます。可視光線の波長範囲の下限は360~400nm(ナノメートル)、上限は760-830nmとされ、波長によって異なる色感覚を与えます。
人間の視覚が色を認識するのは、網膜の視細胞である錐体にある、タンパク質の働きによります。人間の錐体は3種類あり、短波長(青周辺)に反応するS錐体、中波長(黄緑周辺)に反応するM錐体、長波長(黄色周辺)に反応するL錐体の働きによって、私たちはあらゆる色を認識します。しかし、可視光線は電磁波の一種なので、紫外線や赤外線と同じように、肌など体にも影響を与えます。色彩心理は、視覚だけでなく、体でも色を感じることにあります。
色は、体感温度や体感時間を左右する
例青い壁と赤い壁の部屋それぞれに人を入れ、体感温度を比べたところ、赤い壁の部屋では室温が11~12度でも温かく感じるのに、青の場合は15度でも寒く感じました。赤と青では体感温度で3~4度の差が出たことになります。色は、体感温度だけでなく、体感時間にも影響を与えます。赤い部屋では40分が1時間に、青い部屋では1時間が40分に感じられたという実験結果もあります。
このような実験から、赤やオレンジなど暖色系の色は気分を高揚させ、時間を長く、体感温度を高くするのに対して、青などの寒色系は気分を沈静し、集中力を高め、時間を短く感じさせ、体感温度を低くすることがあきらかになりました。
ファーストフード店が、内装に赤や黄色など暖色系を使うのは、食欲を増進させるだけでなく、客席回転率を高めるためでもあります。時間が長く感じられるので、待ち合わせ場所には不向きです。
壁の色で、コミュニケーションが変わる⁉︎
情報機器の導入によって、オフィスにも色彩調整が積極的に検討されるようになりました。ある企業は、顧客対応を行うコールセンターの社員たちが、冷静さを失わず、じっくりと問題の解決に取り組めるようにと考え、インテリアをブルー系で統一し、効果を上げたとされています。会議の生産性を高めるという観点から、色彩や照明の効果が異なる会議室を用意し、会議の目的に応じて使い分ける企業もあります。伝達するだけの会議、形式的な会議は、寒色系の会議室で行うと、長い会議も短く感じられます。反対に、じっくり話し合いたい会議は、明るく暖かみのある色づかいにすると、参加者の発言意欲を高めることが期待されます。
社内外の打ち合わせの場所を決めるときはもちろん、待ち合わせ、合コンや女子会などの場所選びも、インテリアの色にも着目してはいかがでしょうか?
壁の色を変えた、皇后ジョセフィーヌのカラー戦略とは?
フランス皇帝ナポレオン一世は、密かに恋心を抱く女性をパーティに招くことにしました。その話を耳にした皇后ジョセフィーヌは、その女性がパーティで着るドレスの色を調べ、緑のドレスだと知ると、パーティーに使用する部屋の壁を緑に塗り替えました。どんなに美しいドレスも、背景の色と同化してしまうと、その魅力は薄れてしまいます。その女性に対するナポレオンの恋心も冷めてしまったそうです。この逸話が示すように、パーティや会合に出かけるときは、背景となる壁の色と同化する色の服は避けた方が賢明です。
ジョセフィーヌのカラー戦略が成功したのは、視線を意識し、壁の色を変えるという選択をしたからに他なりません。
視線の高さによって変わる、空間の印象
皆さんは、住まいやインテリアを考える時、平面図を見て検討することが多いのではないでしょうか。しかし、目の高さによって、空間は全く違った印象になります。床よりも、壁の色を変えた方が効果的。壁紙やウォールステッカーを使ったリフォームが流行しているのは、理にかなっていると言えるでしょう。例えば、身長160センチの場合、立った時の目の高さの平均は約140センチです。そして、視線は常に水平ではなく、まっすぐ見ているようでも、視線は10~15度、下を見ています。
例えば、美術館などでは、視線の高さを考慮し、床から絵画の中心まで145センチ程度に設定することが多いです。カフェなどでは、椅子やソファに座る人の視線の高さを考慮し120センチ程度に、和室では、床に座る人の視線の高さを考慮し80センチ程度にすることが多いようです。壁をリフォームするときは、視線の高さをひとつの目安にするとよいでしょう。
あなたが求めるのは、深い眠り? 鮮やかな夢?
明日への英気を養うために、寝室はとても重要です。イギリスの「トラベロッジ社」が行った色と睡眠時間の関係を調べる調査によると、寝室の色によって睡眠時間はずいぶん異なることが明らかになりました。平均睡眠時間が最も長いのは青で、1日あたり7時間52分。青は心拍数や脈拍をおさえることから、ぐっすり眠れるようです。反対に、最も睡眠時間が少ないのは紫色で、1日平均5時間56分。鮮やかな夢や悪夢を見る傾向が強まるようです。
職業によって異なる、寝室の色
職業によって、寝室の装飾の色の好みも異なります。銀行や不動産業者、エンジニアは金の装飾を、教師や公務員はブルーの装飾を、弁護士はオレンジの装飾を、医師はシルバーの装飾を取り入れた寝室にする傾向があります。さらに、ベッドの中でも仕事をするようなワーカホリックは、茶色、クリーム、白の寝室が多く、ベッドの中でオンラインショッピングに最も時間を費やすのは、グレーの寝室であることも明らかになりました。
セックスレスを解消するキャラメル色
寝室の装飾の色とセックスの回数の調査によると、気分を高揚させる赤の装飾を取り入れた寝室寝ているカップルは、平均週1回のセックスにとどまり、贅沢なキャラメル色の装飾を取り入れた寝室で寝ているカップルは、平均週3回セックスするという結果も報告されています。このように、部屋の色はあなたの気分に影響を与え、睡眠時間や睡眠の質を左右する可能性があります。心身をリラックスさせ心地よい眠りへと誘導する色、健やかな目覚めをうながす色、新鮮な気持ちを呼び覚ます色など、色の特性を生かした寝室づくりは、あなたの仕事力や恋愛力を高めるきっかけになるはずです。
【参考】
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