マイナンバー運用開始で年金にはどんな影響が
10月から被用者年金が一元化され、それぞれの情報の一元化が行われ、更に基礎年金番号とマイナンバーの結びつけもされることになるが、これらの作業が円滑に進むのか不安がよぎる
実際の運用は2016年1月からということですが、マイナンバー制度が「公的年金」にどういった影響があるのかを確認してみたいと思います。
マイナンバーとは、「社会保障・税番号制度」ということで、
・社会保障
・税金
・災害対策
この3つの分野で利用されます。年金については、このうち「社会保障分野」の一つとしてマイナンバーが利用されることになります。
具体的には、年金の裁定請求をはじめ、被保険者としての資格の取得や喪失等さまざまな場面でマイナンバーが必要となる予定です。
年金請求時や免除申請の手続きが簡単になる?
政府はマイナンバーを導入しようとする目的として、まず「情報の一元管理により行政の事務処理を簡略化するとともに国民の利便性を高める」と言っています。では、マイナンバー導入によって、年金分野でどう事務処理が簡略化され、我々にとって利便性が高まるのか気になるところです。
マイナンバーは税(所得)情報が一元管理されますので、まずは年金の請求時に必要だった「所得証明の添付」が不要になるのではないかと思われます。
また、国民年金保険料の免除申請について、世帯の所得の確認をする必要があります。これもマイナンバー導入後は、世帯全員の所得の把握が可能となるため手続きや審査が簡略化されると思われます。
公的年金では、所得の把握が必要になる手続きがたくさんあります。それらの手続きの簡素化、審査の迅速化は図られるでしょう。
とはいえ年金番号とマイナンバーの連結は延期に
ただ、基礎年金番号にマイナンバーを結びつける作業について、間違いなく結び付けられるのか? 情報の流出はないのか? 過去に大問題となった「宙に浮いた年金記録問題」や、最近明らかになった「個人情報流出問題」からも不安になりますね。年金個人情報流出問題を受け、結びつける(連結)作業開始について、2016年1月から2017年5月まで延期される予定です。
公正な年金給付が実現する!?
国は、マイナンバー制度導入の目的を「効率化、利便性」に加え、「公正・公平な社会の実現」も掲げています。税と社会保障についてデータが一元管理されるため、不正に給付を受けたり、納付を逃れたりすることの減少が期待されています。生活保護の不正受給の防止が代表例として良くあげられますが、公的年金についても、「本人が亡くなったのに家族が不正に年金を受け取り続けていた」ということが時折ニュースになったりします。不正受給がまったくないとは言えないのが実情でしょう。マイナンバー制度導入によって、こういった不正受給が減少することを期待したいですね。
マイナンバー導入の「第4の目的」
国が掲げるマイナンバー導入の目的は「行政の効率化」、「国民の利便性向上」、「公正・公平な社会の実現」の3つですが、公的年金については、「保険料の徴収の強化」と「高額所得者への年金減額の対象拡大」という第4の目的があるのではないかと思われます。現在、国民年金保険料を滞納している人が少なくありませんが、督促すらほとんどできていない状況です。高額所得があるにも関わらず、保険料を納付していない人も少なくないと言われています。
こういった現状をマイナンバー制度でのデータを活用し、滞納者全員に督促をし、高額所得者に対して差し押さえ等の強制徴収を増やすことが検討されています。
高額所得者の年金額が減る可能性も
また現在、年金を受け取りながら給与収入がある場合、老齢厚生年金の全部または一部がカットされています(在職老齢年金制度)が、1. 高額な所得があっても、厚生年金に加入していなければカットされない
2. 老齢基礎年金はカットの対象とならない
という状況です。
要は、公的年金は所得補償(所得がなくなったり、大幅に減少したりした際に支給するもの)なのに、厚生年金加入者の所得(それも給与所得のみ)しか把握できていないため、支給停止や減額が一部のみでしかないという「不公平」な状況でした。
これらについても、マイナンバー制度導入により所得の把握ができるようになるメリットを活用し、高額所得者に対する年金減額の対象を拡大させる可能性があります。
こういった目的の実現には、確実な結び付けと、厳重な管理、そして信用の回復が大前提として求められます。期待を込めて今後の推移を見守りたいですね。
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