「VW=ゴルフ=よくできた大衆車」で苦戦

VWパサート

セダン(TSIハイライン)のボディサイズは全長4785mm(4775mm)×全幅1830mm×全高1470mm(1510mm) カッコ内はヴァリアントの数値

VWパサートヴァリアント

全長はほぼ旧型と同じながら、ホイールベースは79mm延長され2791mmに


日本でワーゲンといえば、もう圧倒的に“ゴルフ”のイメージが先に強く立つ。下手をすると、VWというブランドネームよりもゴルフの方が知名度では優っている。次いで、ポロ、か。正直にいって、その他モデルの日本における認知度は、はなはだ心もとない。新参者のティグアンやトゥアレグ、up! はもちろんのこと、比較的馴染みがあるはずのパサートにしたって、弱い。それだけ、ゴルフ、そのミニ版としてのポロが、日本のVWをほとんど背負っていると言っていい。

良し悪しであろう。強いモデルを持つこと自体、悪い話ではない。ビジネスの確固たるベースとして、どんな時代になっても一定の販売母数が期待できるからだ。けれども、それをベースにして、ビジネスをさらに拡大しようと思ったとたん、そもそもの立ち位置が問われてくる。そのブランドの、絶対的なポジショニングだ。

あいにく、VWゴルフは、メルセデス・ベンツの以前の主力モデルあたりと違って、“よくできた大衆車”として人気を確立してきた。そこそこの予算で買える、素晴らしい実用車である。そこに高級なイメージはまるでない。結局、ゴルフのイメージが、VWのブランドイメージそのものと言ってよく、その昔のビートル=ワーゲンとほぼ同じ様相になっている、といえるだろう。

そこでいつも問題になるのは、VWがゴルフより高いクルマを売ろうと考えたときだ。消費者のイメージは、「VW=ゴルフ=よくできた大衆車」、でほぼほぼ固まっている。庶民のちょっとした贅沢であり、その性能の世界スタンダード的な高さゆえ、ユーザーの選択眼そのものが自尊心に繋がっている。巷に転がっている商品よりは少し高いけれども、良いモノを見る目が自分にはある、という満足、シアワセだ。それは決して、高いブランド品を買ったときには得られない、ある種の快感であったりもする。

そうなると、それより“高い”ということ自体、VWブランドの魅力を削ぐことになりかねない。良いのは分かっていても、その値段でその大きさのワーゲンって、ちょっと……と、ついつい考えてしまうわけだ。このあたり、サルーン主体でブランドを築いてきたメルセデス・ベンツが、下の“階級”に進出して成功するのとは、ワケが違う。

VWパサートヴァリアント

モジュラーコンセプトの次世代プラットフォーム、MQBを採用。現行ゴルフから導入され、開発期間短縮やコスト削減に貢献する


というわけで、パサートはこれまで苦戦を強いられてきた。とてもいいクルマだし、ヨーロッパの大ベストセラーであるにもかかわらず、日本でのセールスはパッとしなかった。今回のモデルチェンジにしても、モジューラープラットフォームのMQB戦略に則って設計されたオールニューである、なんてことはユーザーの興味をまるで惹くことはないだろう。残念なことに、ただただ、大きいワーゲンのセダンとワゴンという立場から抜け出すことは、容易なことではないと思う。

VWパサートヴァリアント

ラゲージ容量はヴァリアンが650~1780L、セダンが586Lに。上級グレードにはパワーテールゲートや、センサーの反応で自動的に開くイージーオープン機能も備わった