大作『虞美人』の大ヒット
人気スターの相次ぐ退団に、元よりのインフレも重なり、客足の減ってきた宝塚歌劇。そこに、人気を再燃させる超大作が1951年(昭和26年)年に誕生。星組が初演した『虞美人』でした。
長與善郎の戯曲「項羽と劉邦」が原作で、脚本・演出は『パリゼット』を大ヒットさせた白井鐵造。主役の項羽を春日野八千代、劉邦を神代 錦、虞美人を南 悠子が演じました。
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美しさと気品が一番のウリの春日野八千代が、猛々しい武将を演じたのも話題になり、それまでの観客動員数を塗り替える大ヒット。あまりの評判の良さに、翌月は月組、さらに翌月は花組と、異例の3カ月ロングラン公演となり、観客動員数30万人を記録しました。
「東京宝塚劇場が再開の折には、この『虞美人』を持っていきたい」……。小林一三翁の思い通り、1955年(昭和30年)、ついに連合軍から東京宝塚劇場が返還され、復帰後初の上演作品に『虞美人』が選ばれました。
その前年1954年(昭和29年)は、宝塚歌劇40周年の年。その記念すべき年に、一三翁が育てたとも言える宝塚町(旧小浜村)と良元村が合併し、宝塚市が制定されました。
同年、第一回ハワイ公演や、日伊合作映画「蝶々夫人」(主演・八千草薫)に参加するなど、世界にも意欲的に飛び出し、活躍の場を広げていきました。