宝塚ファン/宝塚歌劇入門編

『虞美人』~小林一三翁逝く(2ページ目)

わずか16名の少女たちから始まった劇団が、100周年を迎えた奇跡……。様々な困難に遭いながらも新しいものを求め、今に繋いだ軌跡……。そこにいつも あったたくさんの輝石……。宝塚歌劇団100年へのキセキのひとコマをご紹介いたします。Part12「『虞美人』~小林一三翁逝く」

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

宝塚ファンガイド


大作『虞美人』の大ヒット

人気スターの相次ぐ退団に、元よりのインフレも重なり、客足の減ってきた宝塚歌劇。
そこに、人気を再燃させる超大作が1951年(昭和26年)年に誕生。星組が初演した『虞美人』でした。
長與善郎の戯曲「項羽と劉邦」が原作で、脚本・演出は『パリゼット』を大ヒットさせた白井鐵造。主役の項羽を春日野八千代、劉邦を神代 錦、虞美人を南 悠子が演じました。

2010年花組公演『虞美人』~真飛 聖

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

「子どもも大人も外国人も、誰が見ても面白いもの。宝塚でなくては出来ないもの」という思いから作られた『虞美人』は、宝塚歌劇にとって初めての一本立て。豪華絢爛なレビュー形式の舞台、迫力ある殺陣、本物の馬や小象が登場するなど観客の度肝を抜く演出がなされました。

美しさと気品が一番のウリの春日野八千代が、猛々しい武将を演じたのも話題になり、それまでの観客動員数を塗り替える大ヒット。あまりの評判の良さに、翌月は月組、さらに翌月は花組と、異例の3カ月ロングラン公演となり、観客動員数30万人を記録しました。

「東京宝塚劇場が再開の折には、この『虞美人』を持っていきたい」……。小林一三翁の思い通り、1955年(昭和30年)、ついに連合軍から東京宝塚劇場が返還され、復帰後初の上演作品に『虞美人』が選ばれました。

その前年1954年(昭和29年)は、宝塚歌劇40周年の年。その記念すべき年に、一三翁が育てたとも言える宝塚町(旧小浜村)と良元村が合併し、宝塚市が制定されました。
同年、第一回ハワイ公演や、日伊合作映画「蝶々夫人」(主演・八千草薫)に参加するなど、世界にも意欲的に飛び出し、活躍の場を広げていきました。

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