ディドナート(メゾ・ソプラノ) ロッシーニ:オペラ・アリア集
9月に英国ロイヤル・オペラと来日する世界的メゾ・ソプラノ、ジョイス・ディドナートのロッシーニ・アルバム。ロッシーニの妻でもあり、彼の作曲の源にもなったスペインのイザベッラ・コルブラン(1785-1845、コントラルトからコロラトゥーラ・ソプラノまで、驚異的な声域の広さをもっていた)を想定して作曲した作品。
■ガイド大塚の感想
2012年の第54回グラミー賞でベスト・クラシカル・ヴォーカル・ソロ賞を受賞した『ディーヴァ・ディーヴォ』よりも前の2010年に発表されたアルバムが来日に合わせて国内盤初発売。METライブビューイングでもお馴染みの得意のロッシーニで、音符の細かい楽譜を超絶技巧で滑らかに歌い切る。単なる装飾過多の名人芸とならず、恋を喜びいっぱいに歌い上げ、またシリアスな心情を悲痛に聴かせ、ドラマと一致した歌唱になっているのが見事。
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ベーム(指揮) ベートーヴェン:交響曲第2番、第7番
ベーム翁の晩年を代表する名演の出現。ベーム翁の白鳥の歌というにふさわしい格調高い美演! 2番の第2楽章などこれほど美しい曲だったか、と目を開かせられるほどのとろける美しさ。スケルツォのリズムもイキで晩年離れしています。第7番も、冒頭からきまっており、これもまた第2楽章が絶品!この味わいの深さは神品といえる域ではないでしょうか。CD化のリクエストが多いのもうなずける大演奏です。
■ガイド大塚の感想
亡くなる前年86歳、最後の来日の直前の1980年ザルツブルク音楽祭での同じくウィーン・フィルとのライブ。正真正銘の巨匠の音楽。巨大な、虚飾のない音楽がベームからじわじわと同心円状に温かく広がる様が感動的。ウィーン・フィルも丁寧に意を汲み美しく演奏。レコード会社からのオススメにもあるが、7番2楽章の大きな歌など、比類ないもの。
チッコリーニ(ピアノ) モーツァルト、サン=サーンス、ピツェッティ:ピアノ協奏曲集
今年2月に亡くなった名ピアニスト、アルド・チッコリーニが晩年にACCORDレーベルに残した名演を集めた3枚組。みずみずしさと深遠さが絶妙にマッチしたモーツァルト。巨匠の風格に満ちたサン=サーンス。憂愁に溢れたメロディーと馥郁たるロマンの香りが忘れ難いピツェッティ。確かな技巧は往年そのままに全く衰えることなく、解釈は深みを増した至高の名演が刻印されています。
■ガイド大塚の感想
サティの演奏で高名だったチッコリーニだが、演奏レパートリーは広く、晩年まで活躍した、極めてテクニカルでありヒューマンであった名ピアニストだ。無理のない、美しく粒の揃った音は絶品。高貴に制御されたモーツァルトなども素晴らしいが、特筆すべきはロマン派の香りが濃厚に残る、正にイタリアの後期ロマン派といった感じのピツェッティ。同じイタリア出身だからということもあるのだろうか? いつになく熱い必聴の演奏となっている。
ということで、気鋭のアーティストからびっくりの過去の録音まで、注目の新譜を紹介しました。気になったものを聴いていただけたら幸いです。