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W杯予選に挑むハリルジャパンに足りないものとは?

9月上旬は全世界的に国際試合が行われる。日本代表もカンボジア、アフガニスタンンとのW杯予選に臨むが、世界の主要国にあって日本代表にはないものがある。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

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気になるFWの顔ぶれ

9月3日のカンボジア戦、同8日のアフガニスタン戦に向けて、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督(63歳)はすでに23人のメンバーを発表している。ポジションごとの内訳はゴールキーパー(GK)が3人、ディフェンダー(DF)が8人、ミッドフィルダー(MF)が6人、フォワード(FW)が6人となっている。

メンバー発表直後の報道では、GK川島永嗣(32歳)の落選が大きく取り上げられた。今年5月にスタンダール・リエージュ(ベルギー)を退団した彼は、新たな所属先が決まっていない。このため、ハリルホジッチ監督は招集を見送った。

もっとも、今回の2試合でGKが「穴」になることはない。

スタメン出場が濃厚な西川周作(29歳・浦和レッズ)は、川島に比肩する実力の持ち主だ。安心してゴールマウスを任せられる。

むしろ気になるのは、FWの顔ぶれだ。

ハリルホジッチ監督が選んだ6人のFWは、岡崎慎司(29歳・レスター/イングランド)、本田圭佑(29歳・ミラン/イタリア)、興梠慎三(29歳・浦和レッズ)、永井謙佑(26歳・名古屋グランパス)、宇佐美貴史(23歳・ガンバ大阪)、武藤嘉紀(23歳・マインツ/ドイツ)となっている。このなかで、『点取り屋』と呼ばれるFWの最前線中央を任せられるのは、岡崎と興梠だ。その他の4人も対応は可能だが、ハリルホジッチ監督の構想ではサイドや中盤のプレーヤーである。

ロシアW杯アジア1次予選グループEに属する日本は、シンガポール、シリア、アフガニスタン、カンボジアの4か国と対戦する。日本は6月にシンガポールとホームで対戦し、0対0で引き分けた。まさかのドロー発進だった。

シンガポールと同じく埼玉スタジアムへやってくるカンボジアは、これまたシンガポールと同じように、徹底的に守備を固めてくるだろう。日本が得意とするショートパスをつなごうとしても、ゴール前のスペースはあらかじめ埋められてしまっている。ドリブルで局面を打開しようとしても、あっという間に相手選手に囲まれてしまうだろう。

守備的な相手を崩す手立ては、もちろんある。何よりも、日本とカンボジアの間にははっきりとした実力差があり、序盤に先制すればゴールラッシュも現実的だ。MF香川真司(26歳・ドルトムント)や岡崎らが所属クラブで好調なのは、カンボジア戦へ向けた好材料にあげられる。

ただ、0対0のままゲームが進んでいくと、慌てるのは日本だ。シンガポール戦の記憶が、選手たちの頭のなかでよみがえってくる。気持ちの揺れがプレーのリズムを乱す。一方のカンボジアは、同点の時間が長いほど希望を膨らませていく。6月のシンガポール戦は、まさにそういった展開だった。


日本の攻撃に足りない「高さ」

そうした状況でチームを助けるのが「高さ」だ。

ゴール前へロングボールを放り込み、ヘディングの競り合いを挑む。日本の選手が競り勝てなくても、相手側が遠くへクリアできなければチャンスは続く。ゴール前に残ったボールが日本選手の足元へこぼれれば、シュートへつなげられる。相手の守備陣をパスワークで崩し切れない場合や、パスをつなぐ時間さえもったいない試合終盤で、ロングボールはゴールへのアクセス方法として担保しておきたい手段だ。

ロングボールの放り込みとはほど遠いサッカーをするスペインにも、188センチのFWジエゴ・コスタがいる。パスサッカーの元祖ブラジルでは、187センチのFWレアンドロ・ダミアンが代表の常連だ。空中戦を仕掛けるか否かはともかくとして、世界の強豪も「高さ」は用意している。

先の東アジアカップを思い出してほしい。

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とのゲームで、日本は長身FWに苦しめられた。後半に2点を喫しての逆転負けは、北朝鮮の「高さ」を封じられなかったことが主因だった。

韓国戦でも同じパターンに悩まされた。この試合は1対1の引き分けに持ち込んだが、勝ちきれなかったのは北朝鮮戦と同じだった。190センチをこえる長身FWを抑えるために、かなりの労力を注がなければならなかった。

ハリルホジッチ監督が選んだ6人のFWのなかに、「高さ」を武器とする選手は?

いないのだ。

空中戦の競り合いに強い豊田陽平(30歳・サガン鳥栖)は、ケガの影響でほぼ1か月にわたってリーグ戦にフルしていない。8月16日のゲームから、ようやく戦列に戻ってきたところだ。名古屋グランパスの川又堅碁(25歳)もヘディングを強みのひとつとするが、今回はメンバーに選ばれていない。

力ずくでも得点が欲しい局面で、空中戦に活路を求めるとしたら──189センチの吉田麻也(27歳・サウサンプトン/イングランド)、182センチの槙野智章(28歳・浦和レッズ)らのセンターバックを最前線へ上げることが、今回のメンバーでは唯一と言っていい手段だろう。

ヘディングを武器とする選手が、いないわけではない。

J1リーグのアルビレックス新潟でプレーする指宿洋史(24歳)は、195センチの高さを誇る。オランダ・エールディビジのデンハーグに在籍するハーフナー・マイク(28歳)も、194センチの長身ストライカーだ。だが、指宿は日本代表に一度も呼ばれたことない。ハーフナーはザッケローニ前監督指揮下で招集されたことがあるが、ここ最近は遠ざかっている。

カンボジア、アフガニスタンとのゲームで、日本が追いつめられるとは考えにくい。パワープレーに頼ることなく、連勝を飾るだろう。そうでなければならない。

ただ、「高さ」という強みは持っておくべきである。ザッケローニ前監督のチームに長身ストライカーがいれば、昨夏のブラジルW杯の結果は変わっていたかもしれないからだ。
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