アジアカップ準々決勝ヨルダン戦。日本はPK戦の末、ヨルダンを振り切りベスト8進出を決めた。満身創痍、傷だらけの日本…。中2日で1200kmを移動して済南(チーナン)で戦います。レポートは元川悦子さんです。

<今後の日程>
【準決勝】 8/03(火)
19:00 バーレーン-日本 済南
22:00 中国-イラン 北京
【3位決定戦】 8/06(金)21:00 北京
【決勝】 8/07(土)21:00 北京

<INDEX>
●後半戦そしてPK戦&ジーコ監督、宮本選手のコメント(2P目)
●試合後の川口・三都主・本山・玉田・遠藤・鈴木・中村選手のコメント(3P目)

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負け試合を覆し、準決勝進出を決めた日本

正直に言おう。10年間、サッカーの取材を続けてきて、今日ほど気分の悪い試合はなかった。31日の準々決勝・ヨルダン戦は、1次リーグ3試合とは比べ物にならないほど、激しい反日ムードがスタジアム中を取り巻いた。中村俊輔(レッジーナ)も「相手が後ろから足を蹴ってきても何も取らないのに、こっちがやると全てファウルになる。レフリーもスタジアムもみんなおかしい」と吐き捨てた。私自身はこれまで、日本人として過去の歴史を潔く受け止め、日中関係の難しさを理解してきたつもりだ。が、ここまで歴史と政治とスポーツを混同され、露骨に反日行動を展開されたら、複雑な感情を抱かざるを得ない。申し訳ないが、今日だけは、思い切って書かせていただくことにしたい。

31日の準々決勝に先駆け、重慶五輪競技場では、数時間前からヨルダンサポーターが国旗やヨルダン代表チームのポスターを配布するなど潜在的な反日ムードを煽った。もともと日本を応援したくない中国人たちは、面白がってこれに参加した。知人の中国人記者が何人かに話しを聞いたところ、「ヨルダン人が国旗を配っているから応援してあげようと思っただけ。日本人は何も配っていないから、親近感が湧かない」と答えたという。

おそらく彼ら個人個人は、ほんの軽い気持ちのつもりだろう。前にも書いたが、私が街で出会った人たちは、こちらが日本人だと聞いても、露骨に嫌な顔をしたり、冷たい態度を取ったりしなかった。けれども集団になれば、軽い気持ちも一転して、大きなムーブメントへとエスカレートしてしまう。

その結果、彼らは国歌斉唱時に起立せず、邪魔するような嬌声を上げた。大型映像装置に映った選手の画像が乱れると、「ざまあみろ~」といった調子で大声を張り上げた。試合が始まってからも、日本がボールを失うたびに罵声を浴びせ、PK戦を邪魔するような大ブーイングをしたりした。私の周囲も試合中ずっとただならぬ雰囲気で、何度も紙飛行機や水滴が飛んできたりした。日本の戦っている相手が中国なら、こういう仕打ちもやむを得ないだろう。が、ホスト国の彼らは中立的立場のはず。サッカーとは無関係な不満をぶつけるのが、果たして正しい姿なのだろうか……。

アジアカップ組織委員会は今回、重慶で日本戦を行うに当たって、1つ大きな間違いをした。ゴール裏に日本人サポーター用の席を確保しなかったことだ。セリエAでもプレミアリーグでも、アウェーのサポーターは必ず限られたエリアに座らせ、周囲を警備員が取り囲んでいる。ホームのサポーターとのトラブルを防ぐために入場時間を早め、試合が終わった後も最後に退出させる。そういう仕組みさえあれば、日本人サポーターたちも応援旗や横断幕を取り付けられたし、日の丸を振って声援を送ることもできた。

しかし今回はメインスタンドの一角に日本人を座らせたものだから、彼らは周囲の中国人に取り囲まれ、ゴミや紙コップを投げられる状況に追い込まれた。立ち上がって「ニッポンコール」を送るだけでも、周囲の中国人にプレッシャーをかけられた。中国が2008年に北京五輪でサッカー競技を実施するつもりなら、もう少し世界のサッカー環境を勉強してもらいたい。

この状況下で負けたら、本当に屈辱的な思いだけが残ってしまう。宮本恒靖(G大阪)は「不甲斐ない敗戦」を許せなかった。PK戦の最中にサイドの変更を申し出たのも「何とかしたい」という強い気持ちの表れだったという。「日本の負けそうな姿を見て大歓声を送る観客たちを、静まり返させることができて、本当にうれしい。この中で勝つことに意味があった」と、日ごろ冷静なキャプテンも興奮を抑えつつ話していた。

反日ムードをさておいても、ヨルダン戦はとにかく苦しい試合だった。1次リーグ3試合の時より気温は10度ほど下がったが、湿度はなんと75%。しかも日本は中2日でゲームを迎えている。それでも頑固なジーコ監督はスタメンを入れ替えなかった。日本の先発はGK川口能活(ノアシャラン)、DF宮本、田中誠(磐田)、中澤佑二(横浜)、右サイド・加地亮(FC東京)、三都主アレサンドロ(浦和)、ボランチ・福西崇史(磐田)、遠藤保仁(G大阪)、トップ下・中村、FW玉田圭司(柏)、鈴木隆行(鹿島)である。対するヨルダンは4-2-3-1。宮本が要注意人物として名を挙げていたDFヤシーン(6番)、左アウトサイドのサイド(3番)、キャピテンでトップ下に入るアブゼマ(18番)はもちろん先発だ。

日本代表はキックオフ時のファーストタッチでいきなりミス。リズムが崩れ出した。課題だった前線とDFラインの距離も開いたまま。中盤でセカンドボールを拾われ、速いカンターを次々と繰り出された。そして迎えた11分、堅守を誇ってきた日本守備陣が完全に崩された。サイドのドリブル突破に加地がついていけず、カバーに行った田中までが振り切られた。そして中央に折り返されたところに飛び込んだのが、1トップのシェルバイ(9番)。三都主のカバーも遅れ、彼は打点の高いヘッドでゴール。いきなりの先制ゴールにスタジアムは地鳴りのような大歓声が沸き起こった。

タイ戦と全く同じような展開。だが日本は瞬く間に同点に追いつく。3分後に右サイドで得たFKのチャンス。キッカーは中村。彼の蹴ったボールは中澤の頭に当たってGKに跳ね返った。そこに飛び出したのが鈴木。彼の左足はボールを捕らえ、次の瞬間、見事にゴールネットを揺らしていた。

今大会に入ってノーゴールだったFW陣に生まれた得点だけに、チームは勢いに乗るかと思われた。が、リズムは一向によくならない。最終ラインと前線が間延びし、ボランチのところでボールをキープできないのだ。三都主は「ボランチが下がりすぎていたから、セカンドボールが拾えなかった。だから自分が引いて、彼らに前へ行ってもらおうとした。でも自分も裏を取られたくなくて下がってしまった」と反省しきり。日本は大きくスペースの空いた中盤でボールを失い、何度かカウンターを食らう。中東の新興国にここまでボールポゼッションをさせるとは、今大会に入るまで全く考えられなかっただろう。

それでも川口の右手一本のセーブなど手堅い守備で追加点をしのぎ、迎えた前半ロスタイム。日本に絶好機が訪れる。右サイドでのFK。中村が蹴ったボールはファーサイドを走る三都主へ。三都主は完全にフリーになり、角度のないところから左足でシュートを放った。タイミング的にはドンピシャリだったが、ボールはゴール横をかすめる。またもやセットプレーとはいえ、日本は貴重な追加点のチャンスを失った。