株・株式投資/日経平均株価の動向を専門家がチェック

日経平均株価、大暴落の可能性は?

世界的に株式市場が混乱しています。今回の世界株安について、多くの解説では震源地は中国とされています。そこで今回は中国経済の今後の予想とそれに伴う日本株の影響を考察してみたいと思います。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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日経平均、大暴落の可能性は?

世界的に株式市場が混乱しています。今回の世界株安について、多くの解説では震源地は中国とされています。たしかに財新メディアが8月21日に発表した8月の中国製造業景況感指数(PMI)速報値は47.1と驚くほど弱く、まさにネガティブサプライズとなったことが、世界的な株価下落の1つのキッカケとなったことは間違いないと思います。さらに内容も良くなく、生産、新規受注、雇用など主要項目が全て悪化し、輸出受注は大幅な落ち込みとなり、最終在庫が積み上がるという内容でした。

世界的な株価調整のキッカケとなった中国製造業景況感指数(PMI)

世界的な株価調整のキッカケとなった中国製造業景況感指数(PMI)

では、どうして中国経済がここまでダメになったのでしょうか? もちろん、中国の経済構造が変化していることが大きな背景の1つではあるのですが、直近の中国経済がここまで悪化した理由の1つは、人民元高だと思います。依然として中国は輸出が経済の中で大きな割合を占めています。そして、日本を見ても分かるように、輸出には為替水準が大きな影響を及ぼします。中国の通貨である人民元はここしばらく実質的なドルペッグで推移してきました。しかし、2014年後半から米ドル高が大きく進み、結果としてドルと連動して推移してきた人民元も人民元高に大きく振れたのです。

2013年1月を1とした人民元と他通貨の為替レート推移(下に行くほど人民元高)。特に昨年後半からドル以外の通貨に対して大きく人民元に振れていることが分かります

2013年1月を1とした人民元と他通貨の為替レート推移(下に行くほど人民元高)。特に昨年後半からドル以外の通貨に対して大きく人民元に振れていることが分かります

中国の輸出の地域別の構成比を見ると、アジアが51.3%、北米が18.0%、欧州が18.4%、中南米が6.1%、アフリカが4.2%となっています。もちろん米国に対してはドルペッグしているので人民元高の影響はありませんが、米国への輸出は2割程度しか占めていません。そして、日本を含むアジア、欧州など、ドルペッグしていない国に対しては15%ぐらいの人民元高が進み、これが経済を大きくスローダウンさせてきたと言えると思います。15%の通貨高と言えば、日本円で言えば、120円→102円ぐらいのインパクトがあります。中国政府は2014年秋から相継ぐ利下げ、景気刺激策などの経済対策を打ち出しているのに、中国経済が復調しないのにはこのような理由があると思います。

日経平均株価、大暴落の可能性は?

どうルなる世界の株式市場!?今後の重要なポイントは米国の利上げの行方

どうルなる世界の株式市場!?今後の重要なポイントは米国の利上げの行方

それでは、今後どうなるかということですが、1つの大きなポイントは中国経済が復調するかどうかです。前述のように、中国経済の構造的な問題は別として、人民元高が中国経済に悪影響を与えているのだとすれば、人民元安が実現できるかどうかがポイントになるでしょう。

人民元安が実現するには2つの方法があります。1つは更なる人民元の切り下げが行われることです。8月11日からの人民元の切り下げは結局、米ドルに対して3%程度の切り下げとなりました。したがって、2014年半ばの水準まで戻すと考えると、あと10%ほどの切り下げが必要です。ただ、これを行うと他国はもっと苦しくなりますので、通貨の切り下げ競争が予想され、一時的にリスクオフ志向が進み、世界的に株価は大きく下がることになると予想できます。当然こうなれば日本株も影響を受けるでしょう。

もう1つの方法は米ドルが下がることです。8月上旬の人民元切り下げのあとも、引き続き人民元はドルペッグと言える推移となっています。つまり、米ドルが下がれば、実質的なドルペッグが続いているとみられる人民元も一緒になって切り下がりますので、人民元の切り下げなしでの人民元安ができることになります。

ただ、世界的に見て、利上げが検討できるほど景気が良いのは米国だけですので、金利の先高感から米ドル高の傾向が反転することは、考えにくいかもしれません。利上げのタイミングを遅らせて、その間に日本や欧州、中国の景気回復を待つとしても、それほど短期間に回復できるかは分かりませんし、将来の利上げへの不安はくすぶり続けてしまいます。一方、早期に利上げを行ってしまって、不安を一掃するという考え方もできるかもしれませんが、少なくとも9月に利上げが行われたとすると、大きなネガティブサプライズとなり、短期的にはリスクオフが一気に進むことになると思います。そうなった場合、当然のことながら、日本株も影響を受けるでしょう。

FRBは難しい舵取りを迫られることになると思いますが、いずれにしても、今後の大きなポイントの1つは米国の利上げの行方です。日本株も目先は反発していますが、いつショックが来てもおかしくない状況ですので、ショックに耐えうる体制を構築しておくことが肝要と思います。

参考:日本株通信

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