プランニングは様々 二世帯住宅の現在形とは!?
【A邸 東京都豊島区 築後5年目】・2階建て、延べ床面積211.75平方メートル
・親世帯(70代、60代)+子世帯(40代、子供1人)
・1階子世帯、2階親世帯
・独立二世帯(玄関・水回り別、内部行き来あり)
【B・C邸 東京都杉並区 築後1年目】
・3階建て、延べ床面積527.64平方メートル
・親世帯(60代夫婦+子供)+子世帯(30代子供2人)
・3階に親世帯・子世帯
・独立二世帯(玄関・水回り別、内部行き来あり)
・1階・2階に賃貸住宅5戸
A邸は住宅街の中に建つ建物。元々、子世帯は現地の近くで近居されていたとのことですが、ご主人が婿入りされるかたちで二世帯居住されています。面白いのがこの建物は2階建てが二つ並んでいるような感じであり、この場合は本来、2棟で別々に暮らすのが一般的です。
また、通常は1階に親世帯、2階に子世帯を配置するのが普通。そうすると親世帯は階段で上り下りせずにすみ身体的に楽だからです。しかし、この建物はそうではありません。
というのも、ご両親の「2階でマンションのように暮らしたかった」という要望を反映させたからだといいます。ご両親がお元気で活動的でいらっしゃるためで、非常に割り切ったプランニングだと思われました。
B・C邸は、交通量の多い青梅街道に面した場所にあり、その立地の良さを生かした賃貸併用の二世帯住宅です。3階ワンフロアに二世帯全員が生活しており、開放感のある「そらの間」というベランダなどを通じて交流する間取りとなっていました。
プランニングの特徴は玄関の配置。親世帯は1階(ホームエレベータで移動)に、子世帯は2階に設けられています。プラスして2.5世帯でもあるわけですから、非常に高度な提案で、内部は迷路のような感じでした。
「緩やかなつながり」がイマドキの二世帯住宅のカギ
A邸とB・C邸に共通するのは、両世帯の生活時間が異なり、そのために玄関や水回りなどを別々にした独立二世帯であるということ。また、子世帯の奥さんのご両親と同居するため嫁姑問題が起こりえないこと。そして、それでいてお婿さんもストレスを受けない環境が実現されているということです。B・C邸の子世帯側のリビング。敷地条件を勘案し、3階に広めのベランダを設けている。そしてここは親世帯・子世帯の交流の場となる。奥にベランダがあり、親世帯側の窓とプールがあるのに注目(クリックすると拡大します)
一方、B・C邸では子世帯の奥さんが専業主婦であるため、普段の食事などを親世帯に依存することはないそうですが、ただ「何かあった時、すぐに子供を預けられるのは安心」(子世帯の奥さん)とのことでした。
親世帯のご主人が料理好きとのことで、時には親世帯・子世帯全員に料理を振る舞うという機会もあるとのこと。要するに二つの事例とも、親世帯・子世帯の間に適度な距離があるのが特徴で、これが二世帯住宅誕生当初との大きな違いなのです。
A邸の子世帯の奥さんは、「親世帯と顔を合わせない日もあります。多く作りすぎたおかずを時々届けたりする、いわば長屋の隣の家といった感覚ですね」とお話されていました。
ですので子世帯のご主人も、いわゆる世の中でいわれているマスオさん的なちょっとネガティブな感じではなく、ストレスを感じず暮らしていらっしゃるということでした。
このように親世帯と子世帯が緩やかなつながりの中で生活できるようにするのが、現在の二世帯住宅の一つの大きな潮流なのです。もっともこれは、二つの世帯が比較的仲が良いから実現することといえるかもしれません。
二世帯住宅というのは、そこに住む家族それぞれであるべき姿が異なります。ですので、もし新たに建てようと思われるのなら、それぞれのライフスタイルをしっかりと検討して、それを反映することが大切です。