流線型のシャープな姿がかっこいいグレイリーフシャーク(オグロメジロザメ)。潮通しのいい場所で見られます。目の前を悠然と泳ぐ姿は迫力満点!
ダイバーにとってサメは「アイドル」
1975年に公開された映画『ジョーズ』のインパクトがあまりにも大きく、すっかり「危険な生き物」というイメージが定着してしまったサメですが、世界に約500種いるといわれるサメのうち、人への危害に関与しているのはわずか10種ほど。ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメなどがその代表ですが、外洋性のため通常のダイビングを楽しむ海域で出遭うことはほとんどありません。ダイビング中に出会うサメの多くは非常に臆病な性質で、ダイバーの気配を感じると泳ぎ去ってしまいます。「危険な生き物」というより、いくつかの種類のサメはその希少性からダイバーの間では「アイドル」ともいえる憧れの存在となっており、世界最大のサメとして知られるジンベエザメのほか、ハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)、トラフザメ、グレイリーフシャークなどが人気。それらのサメが高確率で見られるエリアはいつも多くのダイバーでにぎわっています。水底にちょこんと横たわる「ネコザメ」。愛嬌のある顔つきでダイバーからも人気。サザエやウニ、エビ・カニなどが好物。伊豆などの近場でも見られます。
なぜサメに襲われるのか?
フロリダ自然史博物館が運営している、世界中のサメの被害情報をまとめたデータベース「インターナショナル・シャーク・アタック・ファイル(ISAF)」によると、2014年に調査されたサメの被害は130件。うち58件が人によって誘発されたもので、スピアフィッシングをしていて襲われたり、釣り上げたサメに噛まれるといった事例。残りの72件が人によって誘発されたのではない事例で、その多くが「サメが人をエサと勘違いして咬みつく」というものです。水面をバチャバチャと泳いでいる人は、弱ったウミガメやアシカなどのサメの捕食対象に見え、サメが間違って襲っている可能性が高いとか。確かに水中から水面を見上げたとき、サーファーがボードから手足を出して泳ぐシルエットはウミガメやアシカのよう。また、サメは興味を持ったものを咬んで確かめるという習性もあるようで、捕食対象のように見えた人を咬んで確かめているということも考えられます。
こうしてみると、ダイビング中にサメに襲われる危険性はかなり低いということがわかります。事実、前述のISAFの2014年のレポートでは、スキューバダイビング中にサメに襲われたという報告はゼロ。サーフィンなどのボードスポーツに参加している人が65%、遊泳者が32%、スノーケリングをする人が3%となっています。ブクブクと泡を吐きながら泳いでいるダイバーの姿は、サメにとっては不気味な存在のはず。こちらからサメに危害を加えよう(むやみに追いかけたり、触ろうとしたり)としない限り、サメの被害に遭うことはまずないでしょう。
サメに襲われたときの対処法
とはいえ、ダイビング中に万が一、サメに襲われたらどうしたらいいのでしょうか。最も一般的な説は、サメの鼻先をパンチまたはキックするというもの。サメの鼻先には他の生物などが発する微弱な電流を感知する「ロレンチーニ器官」と呼ばれる敏感な感覚器があり、そこに強い衝撃を与えるとサメが混乱するので、その隙に逃げるのが有効といわれています。そのほか、やはりサメの敏感な部分である目やエラを引っ掻いたり、水中カメラのフラッシュや水中ライトの強い光をサメに当てることでサメを撃退できるという説もあります。慌てて泳いだり、もがいたりすると、サメを刺激して逆効果となるので注意しましょう。サメに対する正しい知識を
海で遊ぶ際に意識したいのは「自分たちは訪問者である」ということ。海の世界には、そこに棲む生き物たちの摂理(ルール)があり、訪問者である私たちはそれを理解したうえで楽しむ必要があります。弱ったウミガメやアシカのように水面をバチャバチャと泳ぐ対象を襲うのは、彼らは自分たちの住処で自然(本能)のままに行動しているだけ。サメがどんな生き物なのか、どんな危険性があるのか、サメについての正しい知識をきちんと身につけて、適切な行動をとることが大切です。世界最大のサメとして知られる「ジンベエザメ」。エサはプランクトンでおとなしい性格。モルディブやメキシコ、タイ、フィリピンなどが出逢えるエリアとして人気です。
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