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夏に行きたい「変わり湯」の宿2選

夏のピークも過ぎ、これから秋に向かおうといってもまだまだ暑い日々。そんな日に、鋭気を養うために覚えておきたい温泉を2軒ご紹介。ふつうの温泉と違うため、あまり雑誌などでも紹介されない「汐湯」と「炭酸泉」の宿。ちょっと変わり湯かもしれませんが、夏のパワーチャージにはぴったり。あなたも隠れに行きませんか!?

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

夏におすすめの「変わり湯」

夏休みも盛りを過ぎ、朝晩には海辺も少し静けさを取り戻す晩夏。今回は、そんな夏の終わりに行くのにふさわしい、あまり雑誌に登場しない、大人のための「夏の湯宿」を2軒ご紹介しよう。
なぜ雑誌に登場しにくいかというと、温泉特集というと秋から冬にかけての定番であるためや、いわゆる温泉法上の温泉ではないためだ。そのため、夏にぴったりの湯宿や温泉法上の温泉ではない宿は見過ごされがち。そうはいうけれど、実は覚えておいて損はない穴場の宿・・・。

 

汐湯 凪の音

まず、1軒目。福岡に出張に行く時など、この宿を覚えておくといい。博多から直通電車で約1時間。ゆったりと凪の海を眺めながら過ごせる、まさに「隠れ宿」だ。

 

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玄界灘を眺める「汐湯」露天風呂

宿の名につく「汐湯」とは、その名の通り、海水を汲みあげ、加水せずにそのまま温めた湯で、法的には温泉ではない。しかし、ミネラルの豊富さは温泉に引けを取らない。海水は、宿の目の前に広がる玄界灘の大陸棚の海底から取水し、パイプを通して汲み上げられている。塩分であるナトリウムはもちろん、マグネシウムやカルシウムなど、人体に必要な成分はほぼ含まれている。プランクトンなどの不純物も一緒に採取されるがそれは浴場下の大きなろ過機でろ過される。湯には薄っすらと海水成分による膜が張り、湯の華が舞う。

 

汐湯は、実は歴史が古く、この湯も開業は明治初期までさかのぼる。当時は、木桶で汲みあげていたという。当時から、海水に浸かることが健康法のひとつであり、地域に根づいてきた。もともとこの宿は汐湯旅館といい、代々の経営者の立派な母屋が庭先に残っている(現在はホテル運営大手のKPGリゾートが運営)。

 

さて、この宿。まずはロケーションが最高にいい。唐津の名勝「虹ノ松原」に続く白砂青松の松崎浜が目の前。浜を散歩して湯上がりに涼むのにちょうどよい。唐津湾の沖に見えるのが「高島」。ここは別名「宝当の島」と言い、宝くじが当たるといわれる宝当神社が建つ。沖に向かって拝んでおこう。

 

お目当ての湯は、客室棟とは別棟。1階には貸切湯。2階に大浴場と露天がある。露天風呂はあまりにも開放感がありすぎ、最近少しだけ目隠しがされてしまったが、海風にふかれながらの湯は最高に気持ちいい。汐湯なので、誰もがぺたぺたとするのではと思うだろうが、湯を上がれば肌はすべすべ。実にさっぱり。「美肌の湯」と呼ばれてきた理由がわかる。

 

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透き通った呼子直送イカの活け造り

湯上がりに食事会場でいただく夕食には玄界灘の幸が並ぶ。なかでも呼子直送イカの活け造りは唐津ならではだ。
客室は、ほとんどの客室がオーシャンビュー。夏の終わりのさざ波が子守唄だ。秋の声を聞くようになると虫の音も加わってくる。

 

同様の「汐湯」は、全国ところどころにあり、高知県の「黒潮本陣」や広島県の「仙酔島」など、比較的西日本に多い。温泉法上の温泉ではないけれど、瀬戸内の絶滅危惧温泉「石風呂」や、古くからの「薬草湯」など、もっと注目を浴びてよい湯も日本には残っている。

 
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