アドバイス1 介護はいろんな人の手を借りて行うもの
ご主人が単身赴任で、相談者のみりんさんは現在、自分たちの持ち家でお母さんと同居されている。お母さんの年齢は70歳前後でしょうか。健康状態もいいということですが、確かに、この先、何が起こるかわかりません。その意味で、たとえ結果的に要介護にならなかったとしても、このくらいの年齢から心の準備をしていくことは必要でしょう。しかし、まだ元気なのに、不安ばかりが膨れ上がってしまうというのは考えもの。いつ雨が降るのかを毎日心配しても、それはあまり意味がないのと同じです。本当に雲行きが怪しくなってきたら、そのとき初めて傘を手にすればいいのですから。
みりんさんは何でも自分で抱え込んでしまうタイプなのかもしれませんね。介護に関していえば、自分で看ると決められている。しかし、何から何まで一人でやろうとして、かえって自分を追い込んでしまっては、ご自身が辛いし、できる介護もできなくなってしまいます。
本当に要介護になったら、相談をしましょう。みりんさんの地元にも「地域包括支援センター」があると思います。社会福祉士や介護の専門家等がチームを組んで、地域住民への総合支援を行っています。有償、無償のボランティアを含め、介護に関することが相談できます。いろんな人の手を借りながら介護は進めていけばいいと思います。
アドバイス2 聞くことで経済的苦痛を解決しよう
介護には3つの苦痛があるといいます。体力的苦痛と精神的苦痛、そして経済的苦痛です。精神的苦痛を緩和するには、先に触れたように、自分だけで抱え込まないことがとても重要です。では、経済的苦痛はどうでしょうか。
お母さんの貯蓄や収入(=年金)だけでやっていけるか、ということでいえば、それはわかりません。介護される側の状態や、どこまでの介護をしてあげたいかということでも、その費用は大きく異なります。
そこでまず、現在お母さんから生活費として受け取っている4万円を介護費用として貯めてみてはいかがでしょう。年間48万円、10年間で480万円になります。その分、お母さんの生活費は持ち出しになりますが、貯蓄もあるわけですし、そこは子どもの役目と考えてもいいと思います。また、実際に要介護になったら、お母さんの年金は全額充てることができるでしょう。
もうひとつ、お母さんの貯蓄について「500万円くらいの貯金があるようです」と書かれていますが、この際ですから、はっきり聞いてみてはどうでしょう。親子とは言え、デリケートな問題です。しかし、介護に必要だからといえば、お母さんに納得してもらう努力をしてみては。何より、経済的な部分が事前にクリアになるので、いまの不安解消につながりますし、イザというときに慌てなくてすむでしょう。
アドバイス3 繰上返済で完済するのも選択肢のひとつ
ご夫婦の老後についてですが、資金面ではさほど心配はなさそうです。年間貯蓄額が200万円ほど。ご主人が60歳までこのペースが続けば、ざっと3800万円。現在の貯蓄合わせて、4400万円貯まっていることになります。さらに、「月6万円」の保険料もそのうち4万3000円ほどが貯蓄性のある保険への掛け金です。その分も含めると、貯蓄率はさらにアップします。これだけ貯蓄できているのですから、今後多少ペースが落ちても(お母さんの介護費用など)、まとまった老後資金が用意できるはずです。老後で大きな支出としては、住宅のリフォームが考えられますが、それも含めて、資金的にはクリアできると思います。
また、住宅に関して言えば、住宅ローンを完済してしまってはどうでしょうか。金利1.4%ですから(平成33年以降2.4%)、低金利ではありますが、もしフラット35で借り入れているとすると、別途、団体信用生命保険料を支払っているはずです。それも含めると、実質の金利は0.3%ほどアップします。より効率的に老後資金を貯めるのであれば、完済することで支払い利息分を浮かすことも考えていいと思います。
教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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