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シャープ、せっかく増資したのに、なぜまた減資?(4ページ目)

2015年。シャープはせっかく増資したのに、すぐに減資を行いました。なぜ減資したのでしょうか?減資の金額はどのようにして決められたのでしょうか? 実はひとつひとつの金額の背景に、きちんとした理由があります。ポイントは、来期から配当金を支払える体制の整備にあります。

日根野 健

日根野 健

公認会計士 ガイド

公認会計士

京都大学教育学部卒業。公認会計士。監査法人トーマツを経て株の学校アクションラーニングを創業し、初心者向けに株式投資の教育を行う。日根野公認会計士事務所、京都事務所所長

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なぜ資本金は5億円? 資本準備金は1億2500万円?

最大のポイントは利益剰余金をプラスマイナスゼロにすることだというのは分かりました。

なお、今回の一連の取引後、資本金は5億円、資本準備金は1億2500万円になりました。この金額にも当然意味があります。

資本金5億円を切ると、法人税法上、シャープの100%子会社等が税制上のメリットを受けられる可能性があるのですが、資本金が5億円以上であればそのようなメリットを受けることができません。
いくら経営危機とはいえ、売上が2兆円にもなるシャープがそのような税制上のメリットを受けるのは不適当である、という価値判断が働いたのでしょう。
結果として、資本金は5億円になりました。

次に資本準備金はなぜ1億2500万円にされたのでしょうか。
これは配当金の支払いに関連する規制に理由があります。株式会社は配当金を支払う際、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1になるまで、配当金の一部を資本準備金又は利益準備金として積み立てなければなりません。
要は、利益剰余金全額を配当することができないわけです。

なので、資本金5億円のちょうど4分の1にあたる1憶2500万円を資本準備金として残し、他の金額を「その他資本剰余金」に振替え、さらに「その他資本剰余金」のうち必要額を繰越利益剰余金に振り替えて、利益剰余金をプラスマイナスゼロにしたのです。


このように、資本金、資本準備金、利益剰余金、それぞれの金額に、その理由があるのです。
貸付金を株式に振替えてシャープを支援する銀行が、自らの株主に対して説明責任を果たせるように細心の注意を払いつつ、今回の増資、減資、剰余金の処分が行われています。

増資の意味、減資の意味、銀行による支援の在り方と銀行なりの責任の取り方など、いろいろなことが勉強になる取引でした。

多くの人が期待しているのですから、シャープにはぜひ復活してほしいですね!
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