味覚障害とは……食べ物の味がしない、違う、何かおかしい
味覚障害という病気を聞いたことがありますか? 味を感じなくなる、いつもの料理の味が違って感じられる、何も食べていないのに口の中で変な味がするなど、味の感覚がおかしくなってしまう病気です。味覚障害は大きく5つに分類されます。
- 味覚減退:食物の味が薄く感じる
- 味覚消失:味が全くわからない
- 自発性異常味覚:何も食べていないま時でも常に苦い味など、変な味を感じる
- 悪味症:すべての食べ物がまずく感じられる
- 解離性味覚障害:甘味のみが傷害されているなど、特定の味だけが分からない
この病気は、「味覚音痴」と混同されやすいのですが、味覚音痴は濃い味を好むために感覚が鈍くなり、薄い味を感知しなくなってしまっているだけの状態。味覚音痴は病気ではなく、訓練次第でなおすことができます。
味を感じるメカニズム……5つの基本味を感じる「味雷」
味には5つの基本味があります。甘味・酸味・塩味・苦味・旨味です。舌の上にはこれらを感じる「味雷(みらい)」というセンサーがあります。舌先では甘味を、舌の奥では苦味を、舌の横の前半分では塩味を、舌の横の奥半分で酸味をそれぞれ感じやすい味雷があると言われています。味雷が味の情報をキャッチすると味雷から脳(中枢)にその情報が伝わるというのが大まかなメカニズムです。このうち、味蕾で味を感じるには亜鉛が不可欠と言われており、味覚障害の場合には、亜鉛不足を疑ったりします。
味覚障害の主な原因として考えられること
味覚障害の主な原因としては、下記が挙げられます。- バランスの悪い食事による亜鉛不足
- 加齢による味覚を感じる感覚器の衰え
- 鼻づまりなどによる嗅覚の低下
- 舌の表面の異常(舌苔(ぜったい)がついている)
- 薬や治療の副作用
- 他の疾患による味覚障害
食事のバランスが悪いために起こる亜鉛不足は、それを見直すことで改善することができます。ただ、加齢による味のセンサーが衰えてしまうことは、ある程度仕方のないことではあります。生活改善だけでなんとかしようとしても難しいところがあるかもしれません。
鼻づまりなどの嗅覚の低下による味覚障害は割と経験したことのある人も多いと思いますが、原因となっている症状がおさまれば味覚も戻ります。また、薬や治療の副作用によって味覚障害が起こることもあります。
舌の表面の異常に関しては舌苔をブラシ等できれいに落とすことで改善されたり、他の疾患による味覚障害の場合、その疾患の治療を行うことで味覚障害を改善することができることも少なくありません。
味覚障害の治し方・食事でケアする方法
食事で予防・ケアができる味覚障害は「亜鉛欠乏」が原因である場合です。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると亜鉛は男性では1日9~11mg、女性では7~8mgを摂取することが望ましいとされています。亜鉛はカキ・レバー・ウナギ・カシューナッツ・たらこ・ホタテ・アーモンド・高野豆腐・さんま・ささみ肉などに多く含まれています。これらの食品を積極的に食べるようにすることです。一食あたりに食べる量を考えると、肉や魚をきちんと食べるようにすれば不足しにくいと思います。例えば、カキ1つ(食べられるところだけで15gくらい)で、亜鉛は2mg入っています。女性であれば3つ、男性でも4つ食べれば1日に必要な量を摂取することができます。
このような理由から、基本的にはサプリメントを使ってまで補充する必要のある栄養素ではありません。むしろ、摂りすぎで亜鉛が過剰になってしまう可能性があります。サプリメントを使う際には、男性は1日50mg、女性は1日40mgを超えないよう気をつけてください。過剰の亜鉛を継続的に摂った場合、貧血や胃の不快感などを起こします。ただし、一般的な食品による亜鉛過剰は報告がありませんのでご安心ください。
味覚障害は外見だけでは異常が分からないので、家族や友人などが気づくことができません。本人も食べ物が美味しくないというストレスを抱えながらも、それ以外の日常生活に支障がないため、つい放置してしまいがちです。「食べること」は人間の3大欲求のひとつ。「おかしいんじゃないか?」と感じたら、念のため早めに耳鼻咽頭科を受診することをオススメします。