三歳児神話は既に崩壊しているはずなのに……
大切なのは「心の安全基地」が作られること
安倍首相が、いわゆる「3年間抱っこし放題の育休3年、職場復帰支援」を打ち出した時にも随分あちこちで見かけましたし、つい最近では、埼玉県所沢市の「育休退園」方針(下の子を出産後の育休中に、2歳児クラスまでの上の子を退園させる)に対して親たちが行政訴訟を起こした時にも、三歳児神話が新聞やネット上で話題に上っていました。市長が「子どもに聞けば、お母さんと過ごしたいと言うだろう」と発言したと報道され、この点も物議を醸しました。
ところで、平成10年版厚生白書で既に
と明記されています。三歳児神話(子どもは三歳までは、常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪影響を及ぼす)には、少なくとも合理的な根拠は認められない。
その根拠として、下記などが挙げられます。
・「母親は子育てに専念するもの、すべきもの」との社会的規範は、戦後の数十年の間に形成されたに過ぎない。
・例えば、おむつを交換する、ごはんを食べさせる、本を読んで聞かせる、お風呂に入れる、寝かせつけるといった育児の大半は、父親(男性)によっても遂行可能。
・母親の育児不安を解消するには、できる限り多くの人が子育てにかかわる中で、母親自身も過度の子どもとの密着関係を見直すことが必要。
この、言ってみれば「とっくに三歳児神話が崩壊している」ということも、私自身の子育ての中で何度も耳に目にしてきました。
一方で、何かにつけ三歳児神話が話題に上り、その正しいか否かの意見が時に激しくやり取りされる様子などを見ると、誰もが、乳幼児期の子育ての期間を大切したいと思っていて、それぞれの立場で模索したり葛藤したりしていることを感じます。
大切なのは、「心の安全基地」を作ること
三歳児神話はすでに崩壊していると書きましたが、生まれてから3歳ぐらいまでの子どもの育つ環境が大事だという点は揺るぎない事実です。3歳ぐらいまでに、身近な大人との濃密なかかわりを築いていく中で、安心や信頼を十分に感じることができる心の「安全基地」を築けることが、その後、さらに活発になっていく子どもたちが自分の世界を広げていく土台になります。しかしこの「身近な大人」は、母親だけではなく、父親や祖父母、保育園の先生などでもありえます。子どもを赤ちゃんの頃から保育園に預けている方は、必要があって取ったその選択と、親とのかかわりに加えて親以外のかかわりの中でもお子さんが育てていることに自信を持っていただきたいです。
とはいえ、時間的・物理的に子どもと多くの時間を過ごせないワ―キングマザーはやはり不安。それを解消する手助けとなるのが「園での様子を知ること」「それを我が子と共有すること」です。連絡帳を活用したり、「保育参観」ではなく「保育参加」を体験したりすると、限られた時間内での子どもへの声がけや会話も膨らみます。
これらに関しては、関連記事もご紹介します。
※参考記事
・「連絡事項だけじゃない、保育園の連絡帳活用のコツ」
・「どう過ごしてる!? 気になる保育園での友だち関係」
・「保育園行事を親子で楽しむポイント」
幼稚園前まで、身近な大人が母親だけでも大丈夫!
逆に、幼稚園に入るぐらいまでの間、この「身近な大人」がほぼ母親だけであったとしても、子どもの育ちが歪むということはありません。2歳ぐらいまでは複数の子どもが同じ空間にいても、それぞれが別々の遊びをしている「平行遊び」も多い時期。子どものためにお友だちを作らなきゃと必死になる必要も、ありません。ただ、この場合心配なのが、子どもとだけ向き合う生活に、お母さんが疲れてしまって心身の調子を崩してしまったり、そんな自分を責めてしまうこと。
それを防ぐためには、子育てのことを共有できる仲間のいる場に行ったり、託児付きの講座などで趣味や勉強に集中する時間を持つことも役立ちます。うまくバランスを取りながら家庭で育児をすることには、自信をもっていただきたいです。
>>>多様な子育てを見守れる社会に