最優秀案 ザハ・ハディド デザインの魅力
ザハ・ハディド氏の案が最優秀案となった決め手は、圧倒的な流動する造形美と大胆な構造美。それらが一体となり、シンボリックに描かれたデザインだからであろう。過去から現在において、ザハ・ハディド氏の主な作品を観ていると直面から曲面へ変遷はあるが、一貫して存在するのが「動きの造形美」である。これは以前の【ザハ・ハディド / 動きの家具デザイン】でもご紹介した「とんでもなく美しいテーブル」に重なる彼女の造形力である。(どうしても、ファニチャーデザイン目線になってしまう)。
この新国立競技場案でも彼女の造形力は、遺憾なく発揮されている。橋梁(きょうりょう)のような二本の巨大アーチが、それだ。
橋梁といえば、隅田川にかかる永代橋などを思い浮かべるとわかりやすい。
キールアーチ構造の橋梁:永代橋は、関東大震災後の帝都復興事業のシンボル。
この巨大なアーチが、ちまたで問題の『キールアーチ:keel arch』と呼ばれる主構造体だ。キール:keelとは、竜骨のこと。まさに竜の骨のような巨大なアーチだ。
スタジアム内部断面をのぞくと、力強さとしなやかさを備えた巨大な骨格のアーチが存在感を表す。それでいて開放感と躍動感があるのでスタジアムで繰り広げられるプレイと一体感が増す空間となる。
天幕を格納する機能も含め、全天候性の比類なき新しいスタジアムの完成となるであろう。
一部敷地条件を満たしておらず、修正すべき箇所の指摘があったようだが、デザインコンペの諸条件もクリアし、見事最優秀賞を勝ち取ったザハ案であった。
(公表されている審査講評でも同様の意見が記載されている)
が、その後、問題が発生する。