その人間の価値観、人生観の深い部分までが見事に見える
小日向文世
柔らかいもの言いと屈託のない笑顔が印象的な小日向文世ですが、『相棒』では殺人に取りつかれた予備校講師を演じました。強い目も怖いのですが、”強くない目の怖さ”にゾクッとさせられました。政治家、刑事、医師、様々な肩書きを軽やかに演じ分けます。威張った人間、腰のひけた人間、卑屈な人間。声や表情ではないところに内に秘めた闇を感じさせ、小日向文世の凄さを見ます。
『DOCTORS~ 最強の名医~』では主人公のよき理解者を、『トライアングル』や『MOZU』では、敵か味方かわからない謎多き人物を、現在放送中の『まれ』ではガンコだけど愛される個性的なパティシエを演じています。これからも、まだまだ見たことのない演技で私たちを楽しませてくれそうです。
すべてを生瀬流で演じきる憎めない俳優
生瀬勝久
メガネの達人である生瀬勝久はコミカルな印象が強いのですが、彼もまた『相棒』で特異な殺人犯を演じています。『ストロベリーナイト』では主人公の絶対的な味方でしたが、最近ではどこか憎めない主人公の天敵役で、ドラマを盛り上げています。現在放送中の『花咲舞が黙ってない』や『隠蔽捜査』では鼻につく計算高い人間を演じていますが、完全無欠とは言えず、なんだか憎めません。主人公の古美門研介との論戦が記憶に新しい『リーガル・ハイ』の弁護士、三木長一郎の登場は毎回待ち遠しいものでした。ピシッとした身なりで嫌味たっぷりに話すのですが、過度なつくりこみをしない生瀬流の自然体的悪役には不思議な魅力があります。
笑顔のムコウは希望か絶望か 怖いもの見たさに近い好奇心
光石研
登場すると「何かあるのではないか」と勘ぐってしまいます。そして緊迫感を持って注視してしまいます。それでも「見抜けない」演技こそが光石研ではないでしょうか。
『ウロボロス~この愛こそ、正義。』では怪しさをにじませながら信念ある刑事を、『Nのために』では、どうしようもない父親を演じています。今の社会の生き難さを鋭く表現する演技は人物の背景まで映す深さがあります。
現在は『ど根性ガエル』でカラッと明るい梅さんを演じています。ファミリードラマ、コメディ、そしてミステリー、どんなドラマにもうまく染まる光石研は、最高に素敵な年の重ね方をしている俳優です。