子どもを「怖い」と思うことは、なんらかの危険信号です
わが子を加害者にしないために、親は何ができるでしょうか。
私はいち臨床家に過ぎません。けれども、子育て支援や、刑事施設で犯罪を犯した人たちの更生と社会適応のための支援に関わっているカウンセラーとして、子どもの行動に残虐性の萌芽を見つけたときに、周りの大人がどのように対処すればよいのかについて考えてみました。
素行障害 → 反社会性パーソナリティ障害
子どもの残虐行為と関連する疾患としては、元少年Aや佐世保の少女の診断名でもある「素行障害」が考えられるでしょう。人や動物に対する攻撃行動や破壊行動、嘘をつく、盗みをはたらく、重大な規則違反をする、などの問題行動が反復して繰り返されることが診断の基準となっています。ただし、正常な発達段階における「かんしゃく」などは診断根拠にはなりませんし、他の疾患(適応障害や反抗挑戦性障害、注意欠如・多動性障害[AD/HD]、双極性障害や抑うつ障害など)との鑑別も必要です。「素行障害」が改善することなく大人になると、「反社会性パーソナリティ障害」と診断されるようになります。いずれも、感情が乏しく、共感性に欠けていて冷淡で、誰かを傷つけても後悔したり罪悪感を持たないという特徴があります。
佐世保の少女は「素行障害」と「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の合併があり、人の痛みや苦しみが理解できないなど「共感性」に重い障害があると報道されていました。
また、注意欠如・多動性障害(AD/HD)の20~40%に素行障害が認められるとの報告があります。幼少期からAD/HDの特徴を持つ子どもは、周囲の大人から叱られ続けることで自尊感情が低下し、その結果、思春期から青年期に、反抗挑戦性障害や素行障害の特徴を認めるようになるという見解もあります。
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