子どもの時間感覚と行動
子供に時間感覚を教えるにはどうしたらいい?
朝の支度は、親子ともに1日の中で一番バタバタする時間。
「あと5分で着替えて」
「8時には出るからね」
と子供に言ったものの、数分後に見に行ったら、なんとまだパジャマのまま……。
「○時」や「○分」という言葉が分かっているだけに、親も期待してしまい、「なんで時間を守らないの」と怒ってしまいます。
なぜ時計は読めても、時間通り行動できないのでしょうか? 最近アメリカで行われた実験が、子供の時間への理解について教えてくれています。早速ご紹介しましょう。
その実験では、3~6歳の子に次のような質問をしました。
- Aさんは1分間ジャンプをし続けました
- Bさんは1時間ジャンプをし続けました
その他にも、「秒」「日」「月」「年」という時間の単位を用いて、同様の例題を作り、子供たちに比較をさせました。その結果見えてきたのは、4歳くらいまでには、ほぼ正確に時間の単位を把握しているということ。
しかし、質問のレベルを一段階上げると、その知識が揺らぎました。
- Aさんは3分間ジャンプをし続けました
- Bさんは2時間ジャンプをし続けました
大人であれば、分数や時間数が増減したところで、その判断に迷うことはありません。しかし、子供たちにとって、これらは非常にトリッキーな問題で、5歳の子でさえも、数の多いAさんの方を選ぶ傾向が強かったのだそうです。1分よりも1時間の方が長いことは知っている。でも2よりは3の方が大きいという知識の方が、前に出てきてしまったわけです。
また、5~7歳の子を対象にした別の実験でも、面白いことが分かりました。子供たちに、「○○にかかる時間」を短いものから長いものへと順番に並べてもらったところ(例:まばたきの時間=非常に短い、朝から夜までの時間=非常に長い)、順序自体は正しく並べられても、それぞれの行為がどれくらいの時間を要するのか(○秒なのか、○時間なのか、など)までは理解していないことが分かりました。
子どもが時間通りに行動できない理由
両方の実験を総合すると、幼稚園から小学生低学年の頃は、- 「秒」「分」「時」「日」「月」「年」という順序で時間の単位は並んでいる
- この順序でだんだん長くなっていく
- それ自体が、実際どのくらいの長さなのかは感覚的につかめていない
電車や車の中で、「あとどれくらい? もう着いた?」と聞かれ、「あと30分よ」と答えたら、「いーっぷん、にーふん、さーんぷん、……にじゅうきゅうふん、さんじゅっぷん! もう着いた?」 なんて言われた経験ありませんか? こんなやりとりも、「秒」と「分」それぞれの長さがつかめていないからこそ起こるのです。本人はふざけているわけではなく、至って真剣なわけです。
時計の授業は小学1年生で始まり、2年生くらいでほぼ正確に読めるようになってきます。ただ、それで自動的に「8時だから急がなくては」と思うようになってくれるわけではありません。1は「いち」と読み、りんごの色を「あか」と言う。こんな数字や色の認識と同じように、時計も読むことだけは先にできるようになるのです。でも、それを時間感覚として活かしていくのはまだまだ先です。
「時計を読めること」と「時間管理ができること」は別のこと。時間管理は、生活習慣を時計に当てはめ、ビジュアル化したものです。だから時計云々よりも、普段からの規則正しい生活リズムがものを言います。
先々、時計を見て行動できる子にするには、小さい頃からリズムある生活を心がけることが大切です。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。そういう基礎的な働きかけが、子供の時間感覚を育てていきます。
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*出典:Cognitive Psychology (2015). 「Learning the language of time: Children’s acquisition of duration words」