スペインではあまり敬語を使用しない
スペイン語でも敬語表現は難しい
敬語は動詞の活用で表す
本日は、スペイン語初心者の皆さんのために、敬語の使い方を少しだけ紹介したいと思います。スペイン語にも、日本語と同様に敬語表現がありますが、日本語のような丁寧語、謙譲語、尊敬語の3種類ではないので安心してください。
スペイン語では、動詞の活用形で尊敬、丁寧を表現します。
動詞querer(ケレル、欲しい)の場合
¿Quieres tomar un café?
キエレス トマル ウン カフェ?
(自分と同等かそれ以下の立場、年齢の人に)コーヒーでも飲む?
¿Quiere tomar un café?
キエレ トマル ウン カフェ?
(自分より目上、立場が上の人に)コーヒーはいかがですか。
敬語を使う時、使わない時
スペインでも、明らかに年上の人、立場が上の人に最初に話しかけるときには、敬語表現を使います。相手が対等に話してほしいと言ったら、その時点から対等な表現に切り替えます。Gracias por darme la oportunidad de trabajar con ustedes.
グラシアス ポル ダルメ ラ オポルトゥニダ デ トラバハル コン ウステデス
(仕事の初日に)あなた方と働く機会をいただいて感謝しています。
敬語を用いず、対等に話すことをtutear(トゥテアル)と言います。
No me hables de usted. Tutéame.
ノ メ アブレス デ ウステ。トゥテアメ
「あなた」なんて言わないで。対等に話してくれていいんだよ。
商店や飲食店では、老舗であれば、客に敬意を示して敬語表現を使うこともあります。また、見知らぬ人と距離を置く手段として、敬語で話しかけることがあるのも日本と共通です。
セニョラ、セニョリタの使い分け方は?
スペイン語でも、英語と同様に、公の場では名字や名前の前に敬称を付けて呼びかけます。男性は、小さな子供から高齢者までseñor (セニョル、略すときにはSr.)の一つしかありませんが、女性は、señora(セニョラ、略すときにはSra. 既婚の女性の敬称)、 señorita(セニョリタ、略すときにはSrta. 未婚の女性の敬称)の2種類あります。未婚、既婚に関係なく女性の敬称として使える、政治的に正しい英語のMs.のような表現は、今のところ登場していませんので、 señoraとseñoritaを、場面や相手によって選択することになります。これが、なかなか困難です。ビジネスの関係なら、年若い女性でもseñoritaではなく、señoraと呼ぶことで、彼女のことを年齢のせいで軽んじていないことを表します。
わざとseñoritaが使われることも
しかし、スペインも西洋の国。中世の騎士精神の理想が今も息づいています。スペイン語では、女性に優しくてマナーの身についた男性をcaballeroso (カバジェロソ、「caballero(騎士)のような」の意。ちなみにcaballoは「馬」)と表します。女性はか弱いものとして保護するという感覚が未だに残っているので、年上のcaballero(カバジェロ、紳士)が若い女性に敬意を込めてseñoritaと呼びかけることもあります。これは蔑称ではなく、逆に、若い女性を尊重する響きがあります。また、母と娘など、明らかに年の離れた複数の女性に対するときに、各人を区別するためにも、年上の女性はseñora、年下の女性はseñoritaと呼ばれます。スペイン女性の微妙な心理
密室の空間での複雑な女性心理
エレベーターでハンサムな若い男性と一緒になった妙齢の女性が、このように聞かれてショックを受けます。
¿A qué piso va (vaは動詞irの活用形。目上の人に対する二人称ustedに対応する)?
ア ケ ピソ バ?
何階に行きますか。
自分の歯が黄ばんできたせいで年上に見られたと思った彼女は、歯磨き粉を変えてみます。後日、また、エレベーターで同じ男性に出くわします。今度は、このように聞かれてにんまり。
¿A qué piso vas(vasは動詞irの活用形。対等な立場の二人称túに対応する動詞irの活用形)?
ア ケ ピソ バス?
何階に行くんだい。
もちろん、敬意をもって話しかけられたいけれど、いつまでも若く見られたい。スペイン女性の複雑な気持ちが表われていますね。
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