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東京在住者で移住希望は4割!憧れの移住で注意点は?(2ページ目)

最近、地方移住や田舎暮らしがメディアで取り上げられているのを目にする機会が増えてきました。東京在住者で、移住を希望している人は、実に4割だそうです。それだけ関心が高まっているといえますが、単に憧れだけだと失敗するケースも……。地方移住・田舎暮らしを成功させるための秘訣を考えてみました。

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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移住をする前に、しっかり検討しておきたいこと

田舎暮らしは、新鮮で、おいしい野菜が食べられるのは嬉しいけれど、憧れだけで大丈夫?

田舎暮らしは、新鮮で、おいしい野菜が食べられるのは嬉しいけれど、憧れだけで大丈夫?

同調査より、移住を希望している人のうち、移住したいと思う理由(複数回答)について、見てみましょう。最も多かった回答は、「出身地であるから」(37.9%)でした。また、4番目に多かった「家族・親戚・知人など親しい人がいるから」(27.7%)は、地方から東京に出てきた人のうち、「いずれは故郷に戻りたい」、と思う人が多いからでしょう。

その他、回答の多かった理由を見ると、「スローライフを実現したいから」(36.9%)、「食べ物や水・空気が美味しいから」(29.9%)、「自分に合った生活スタイルを送りたい」(24.0%)などが挙げられます。これらの回答をみて、全体的に「田舎暮らしへの憧れ」のようなものを持っているのだなと感じつつ、「本当に、それだけの理由で、移住するの?」と、正直、思ってしまいました。

内閣官房「東京在住者の移住に関する意向調査」のデータを元にグラフ作成

内閣官房「東京在住者の移住に関する意向調査」のデータを元にグラフ作成


最近、地方移住や田舎暮らしに関して、メディアなどで取り上げられることが多くなっているなと感じています。多くの成功事例(地方移住や田舎暮らしで、幸せそうに暮らしている姿)と、最近は、少しの失敗事例(地方移住してはみたものの、目論見が外れてしまった、苦労している姿)も、取り上げられるようになりました。

■移住の目的・動機の明確化と共有が成功の鍵!
成功事例に登場している人たちの共通点は、単に、「スローライフを楽しみたい」、「食べ物や水・空気が美味しいから」といった理由ではなく、少し表現するのが難しいのですが、その人の人生経験の中で、人生観や価値観に大きく影響を与える出来事などがあって、その人生観や価値観を実現するために今の暮らしがある、ということです。そして、心底、今の生活が自分に合っていると感じつつ、楽しんでいるように思います。もちろん、メディアで取り上げられるためには、「なぜ、地方移住(田舎暮らし)したの?」という、視聴者・読者の疑問に明確に答えられる要素と、視聴者・読者が憧れる、田舎暮らしを満喫している姿という要素が含まれていなければならないことは言うまでもありません。

いずれにせよ、単なる憧れだけではなく、その人にとって、移住や田舎暮らしをする明確な目的・動機がなければ、うまくいかない(心底、満足した暮らしができない)のではないかと思います。特に、パートナーや家族と移住をする場合は、全ての人が目的や動機を共有していないと、不満や歪(ひずみ)が、いずれ出てくると思います。移住・田舎暮らしの決断をする前に、しっかりと話し合いをすることが大切です。

■移住先情報の収集をしっかりと!
失敗事例に登場している人たちの共通点は、想定外の苦労や目論見外れです。田舎暮らしをしてみたけれど、予想以上に物価が高かった、交通機関は公共施設の利便性が悪く、生活が不便で、思ったよりもスローライフを楽しめていないというものです。

先の調査より、移住を希望している人のうち、移住する上での不安・懸念点(複数回答)について、見てみましょう。最も多かった回答は、「働き口が見つからない」(41.6%)で、「給料が下がる可能性」(24.8%)と合わせて、就労に関する不安です。憧れの田舎暮らしを実現しても、収入の基盤がしっかりしないと安心できないということです。

その他、回答の多かった不安・懸念点を見ると、「日常生活の利便性」(36.7%)、「公共交通機関の利便性」(35.9%)、「医療・福祉」(27.0%)など、暮らし全般の利便性に関することが挙げられます。理想のライフスタイルとして、地方移住や田舎暮らしを選んでも、生活が不便だと、生活そのものを楽しむことができません。

内閣官房「東京在住者の移住に関する意向調査」のデータを元にグラフ作成

内閣官房「東京在住者の移住に関する意向調査」のデータを元にグラフ作成


これらの情報は、実際に現地に行ってみると、具体的なイメージが持てるようになります。また、実際に移住をした人の体験談などが聞けると、生活面のよりリアルな問題点などを知ることができるでしょう。

また、情報収集や、話を聞くだけではなく、短期間でも良いので現地に滞在し、実際に生活をしてみることが大切です。不安・懸念点に挙げられた、「住居環境」(28.3%)は、季節を変えて、何度か足を運ぶことで、体感することができますし、「移住先の人間関係」(30.3%)も、足しげく通うことで、移住先の人の交流が生まれ、移住した時の人間関係も良好になると思われます。

■現実を冷静に見つめるために、ライフプランの作成を!
移住生活・田舎暮らしも、憧れだけではなく、きちんと暮らして行けるかどうかを、家族のライフプランとお金の両面で、ここは少し、冷静になって考えてみる必要があります。若い世代であれば、就労や子育て・教育関係について、しっかり考える必要がありますし、シニア世代であれば、「ずっと田舎暮らしをするのか?」、「また都心に戻るのか?」、戻るとしたら、「家を残しておくか?」など、自分と家族の年齢に合わせて、ライフプランをイメージしてみましょう。そして、お金の面では大丈夫か、確認してみましょう。「収入は?」「支出は?」「貯金を取り崩していっても大丈夫か?」など、現実を冷静に見つめながら、地方移住・田舎暮らしを検討してみましょう。

支援施策を活用し、地方移住・田舎暮らしを成功させよう!

現在、国は、「まち・ひと・しごと創生(地方創生)」を合言葉に、地方や地域の活性化への取り組みを行っています。特に、地方都市・町村では、若者が都心へ人口が流出し、高齢化は加速されて、深刻な問題になっています。そこで、国も各道府県・市町村単位で、地方移住を促進するために、さまざまな支援施策を用意したり、相談窓口を設置しています。

総務省は、移住にかかわる情報拠点として、「移住・交流情報ガーデン」を東京駅前(京橋)にオープンさせました。移住コンシェルジュ(専門の相談員)が常駐し、移住を検討している人に対して、地方の仕事や住居についての情報を提供し、移住に関わる相談に乗ってくれたり、地方移住に関するイベントも行われています。また、自治体から集めた仕事や住居などの情報を、データベース化したWEBサイト「全国移住ナビ」を開設し、検索コーナーもあります。「全国移住ナビ」から、さまざまな地域の移住に役立つ情報を探すことができます。

各道府県、市町村単位でも、相談窓口を設けたり、支援施策の情報をWebで発信したりしています。中には、移住希望者に対する補助金・支援金制度や、トライアル移住制度を設けている自治体もあるので、このような制度を活用しながら、地方移住・田舎暮らしを成功させましょう。

地方移住・田舎暮らしを憧れで終わらせるのではなく、自分の人生をより豊かにするライフスタイルの一つとして、考える方は、ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

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