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勝手にお勧め。カレーの美味しい街に住みたい

ラーメンと並ぶ日本人の国民食、カレー。かつてのインド風、欧風などといったオーソドックスなものに加え、スープカレーやらタイカレー、はたまた白いカレーなども登場。美味しい街も増えています。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

日本にカレーが到来したのは江戸末期。ただ、実際に食べられるようになったのは明治初頭以降だったそうで、その普及にあたっては海軍、陸軍などの昼食として供されるようになったのが大きな役割を果たしたことはよく知られています。実際、海上自衛隊のホームページの中には艦船ごとのレシピが掲載されており、たかがカレー、されどカレーな状況を知ることができます。

新宿中村屋

新宿中村屋ではレストランでカレーが食べられるほか、レトルトカレー、カレーパンなども販売されている(クリックで拡大)

さて、カレーの美味しい街と言った時に思いつく街は人それぞれ。日本で最初に本格的なインドカレーを出した店として名高い新宿中村屋がある新宿、日本最古のインド料理専門店ナイルレストランのある銀座、はたまたカレーうどんの名店として知られる古奈屋のある巣鴨……、いろいろあるでしょうが、ここでは街にカレー店が多いことを重視、いろいろな味が楽しめる街を6カ所、勝手にピックアップしました。

 

店の数、バリエーション豊富さでダントツ「神保町」
10月にはカレーグランプリも

神保町共栄堂など

共栄堂のある界隈。手前にはタイカレー、間にもカレー店。カレーだらけの神保町の街角(クリックで拡大)

店の数、バリエーションの豊富さでダントツなのが学生街、古書街としても知られる東京メトロ半蔵門線・都営三田線・同新宿線神保町(千代田区)。スマトラカレーで有名で、しかも神保町最古参の共栄堂のオープン(ただし、この時点ではカレー専門店ではない)は関東大震災の翌年大正13年と言いますから、この街では古くからスパイシーな匂いが漂っていたわけです。ちなみに新宿中村屋、資生堂パーラーがカレーをメニューに載せたのは昭和2年、日本最古のインド料理店ナイルレストランの開業は昭和24年だそうですから、その古さは特筆ものです。

古書店街

神保町でカレー店が多いのは本を買った後で片手で本を読みながら食べられるからという説がある。本当だろうか?(クリックで拡大)

ことにここ10年ほどでカレーを出す店の数が増加、平成22年から始まった神田カレーグランプリのホームページには300軒以上が掲載されており、圧巻。ただし、チェーン店やごく普通の喫茶店、そば店なども入っているので、味については玉石混淆というのが本当のところ。間違いなく美味しいところを選ぶなら、きちんと味についての解説のある店を選ぶべきでしょう。

 

獅子頭カレー

神保町すずらん通りにある揚子江飯店の獅子頭カレー。でかい肉団子が乗っかったカレーと思えば分かりやすい。ちなみに肉の量は200グラム。かなりでかい(クリックで拡大)

数以上にうれしいのはジャガイモ、ニンジン、玉ねぎのいわゆるお母さんカレーの他に欧風あり、スープカレーあり、焼きカレーあり、タイ風あり、ドイツ風(?)あり、ホワイトカレーあり、カレーラーメンあり、中にはカレーどら焼きありと味のバリエーションが豊富なこと。このリストには入っていませんが、個人的には神保町に多い中華料理店のカレーもお勧めです。

 
さぼうる

神保町にはカレー店以外にも中華料理店、ラーメン店、餃子店、定食屋さんその他よく知られた店が多い。写真はナポリタンで有名な喫茶店さぼうる(こちらは夜のみ。さぼうる2ではランチのみ)の行列。ここはピザなども懐かしい味(クリックで拡大)

最近では神保町のお隣、秋葉原にもカレー屋さんが増殖しており、店の数はますます増えています。また、2015年も10月にはカレーグランプリが開かれ、8月から11月にかけてはスタンプラリーも開かれる予定です。

 

味の流行に敏感な街「下北沢」は
カレーフェスティバルで大盛り上がり

なすおやじのカレー

下北沢のカレー店では最古参、なすおやじの全部乗せ。真ん中の真ん丸はゆで卵(クリックで拡大)

同じく10月に下北沢カレーフェスティバルを開く小田急線・京王井の頭線下北沢(世田谷区)も昨年のカレーマップで見ると店舗の数は100軒余とやや負けてはいるものの、こちらも熱気はなかなか。神保町に比べるとコンパクトな下北沢に店が集まっているため、食べ歩きはラクですが、お腹が空く前に次の店があるという問題も。地元の方に聞くと、インド料理店、カレー専門店以外にカレーを出すカフェが多いのが特徴とのこと。

カレー専門店

カレー専門店も増加中。こちらはラーメンではないのに背脂入り。若い人が多いこともあり、カロリーは高め?(クリックで拡大)

また、カレーたこ焼き、カレーカツサンド、カレーソース添えのフィッシュアンドチップスなど、ムール貝のワイン蒸しカレーソースなどちょっと無理があるメニューも多々。でも、ここならではの味ということでトライしてみるのも一興でしょう。

 

下北沢商店街

下北沢ではレトロな店も一定数生き残ってはいるものの、移り変わる店もあり、いつも変化している(クリックで拡大)

ちなみに下北沢は味の流行には敏感で、これまでにも平成4年前後のもつ鍋ブーム、平成16年前後のジンギスカンブームなどを牽引してきた街です。その一方で30年以上も続く広島風お好み焼き店がなぜか複数軒あるなど、流行に流されない部分もあり、グルメには楽しい街のひとつ。ちなみにかつてのブームから10年を経て、またジンギスカンブームが来る、来ているという噂がありますが、今のところ、下北沢には波及していないようです。

 

下北沢駅周辺

下北沢駅周辺では小田急線の地下化に伴い、整備が進行中。大きな空地などができており、これからどのようになるかが楽しみだ(クリックで拡大)

平成24年に40店舗強で始まった下北沢カレーフェスティバルですが、年々出店が増えており、昨年は100店超。今年はさらに増えそうです。もうひとつ、ちなみに付け加えると、カレーフェスティバルではカレーまんなる全身金色タイツのお兄さんたちがマスコット(?)として期間中街をうろうろします。かなり目立つ人たちですが、神出鬼没なので、出会ったらラッキー。ぜひ、一緒に写真を撮ってもらってください。

海軍カレーの街「横須賀」では
牛乳、サラダとのヘルシーな組み合わせが基本

スカレー

JR横須賀線駅にある横浜海軍カレーのマスコットスカレー。かもめの水兵さんらしい(クリックで拡大)

海軍の街横須賀(神奈川県横須賀市)は平成11年に「カレーの街」を宣言、現在は「よこすか海軍カレー」の街として知られてもいます。横須賀市では「海軍割烹術参考書」のレシピを基に、サラダと牛乳をセットに認定店が市内で提供するものを原則としており、カレーパンやカレーコロッケなど関連商品も含めると70店ほどがカレーを売りにした商品を出しています。中にはカレーマドレーヌ、カレーカステラなども。

 

レトルトカレー

横須賀ポートマーケットに並べられていた横須賀海軍カレー。あまりにいろいろあって悩む(クリックで拡大)

味のほうは店によってかなりアレンジされているようですが、基本的には毎日食べても飽きないような、ベーシックなものが多く、レトルト化された品も各種。横浜ポートマーケットなどでは多くの種類を揃えて販売されているので、食べ比べしてみるのも一興かもしれません。また、この街でも5月に三笠公園を舞台にカレーフェスティバルが開かれています。

 

ハニービー

ドブ板通りにあるいかにもアメリカンなダイナーはネイビーバーガーが名物。普通に頼むと200グラム以上のパテが挟まれてくるので、女性はハーフにするなどしたほうが良いかも(クリックで拡大)

最近は新しい名物、ネイビーバーガーも注目されており、ドブ板通りを中心にした10店余で食べられます。つなぎを入れない、100%牛肉のパテが売りだそうで、味付けはたいていの場合、塩だけとシンプル。繊細な味わいを求める人には物足りないかもしれませんが、いかにもアメリカの田舎にありそうな食堂の雰囲気を味わいながら、がっつり食べたい向きにはお勧めです。

 

カレーパン

もちろん、お約束のカレーパンもあり。ついでにドブ板あんぱんなる商品も。あまりにストレートなネーミング過ぎてちょっと微妙(クリックで拡大)

ちなみに横須賀は三崎も近く、漁港も多くあるため、海産物も名産。街の魚屋さんの店頭を覗くと地物の、鮮度抜群の魚が東京のスーパー価格の何分の1かで並んでおり、羨ましい限りです。

 

グローバル化の反映?「西葛西」では
本格的なインド料理店が急増中

西葛西駅

東京メトロ東西線で都心のオフィス街に直通。そのため、IT技術者を中心にインド人の人口が増えた西葛西(クリックで拡大)

グローバル化の進む首都圏では街の味もそれにつれて変化しています。その代表例が東京メトロ東西線西葛西(江戸川区)。この街ではパソコンが誤作動する、いわゆる2000年問題に対処するために来日したインド人技術者がきっかけとなり、大手町や日本橋などのオフィス街に近く、URの団地などが多くて家賃が手頃な西葛西にインド人人口が急増。現在では都内居住のインド人のうち、4分の1ほどがこの街で暮らしているのだとか。当然、街にはインド料理店、食材店に学校などが増えています。

 

ホリデーランチ

社長が江戸川インド人会の会長を務めるスパイスマジックのホリデーランチ。普通の辛さでも、そこそこ辛い(クリックで拡大)

とはいえ、数としては神保町、下北沢などとは比較にはなりませんが、味のほうは超本格的。カレー以外にもビリヤニ(スパイシーなピラフのような米料理)、ドーサ(米と豆から作ったクレープ)、ストッククレラ(ゴーヤの中に詰め物をして揚げた料理)など様々な料理があり、インド料理の奥深さを知ることができます。

 
ビュッフェスタイル

休日のランチ時にはビュッフェスタイルでランチを提供する店もあり、カレー以外のインド料理もいろいろ食べられる(クリックで拡大)

ちなみに同じように海外からの人が多く、その味が地元名物になった例としては群馬県大泉町のブラジル料理や新大久保の韓国料理が有名ですが、個人的にはアジアの居住者が多い高座渋谷のいちょう団地、平塚の横内団地などもエスニック系の料理が好きな人には楽しいのではないかと思います。ただ、店の変遷が激しいので、なかなか地元の味に定着するまでには至っていないようで、そのあたりが残念です。もうひとつ、ちなみに新大久保ではこのところ、イスラム系の人たち向けのハラルフードなどを扱う食品店も目に付くようになっており、多国籍化が一層進んでいるようです。

中華がメインだけれどカレーもね。
注目度上昇中の「中華街」

横浜中華街

副都心線を経由して埼玉方面などと繋がったことで観光客が増えた横浜中華街(クリックで拡大)

日本全国の中華街の中でも最大規模を誇る横浜中華街でもこの2~3年、カレーが表に出始めています。もともとは賄いとして作られていたものを常連に出すようになり、そのうちに表メニューに出るようになり……というのが経緯のようで、気取らなさが特徴です。

 

中華街店頭のポスター

最近ではカレーを名物として店頭に掲げる店も。そのうち、カレーは中華ということになる?(クリックで拡大)

神保町の中華料理店のカレー同様、大ぶりに切った玉ねぎがどっさり入っていることが多く、肉は牛か、豚のバラというケースが一般的。八角など中華風のスパイスが中華らしいといえばらしいようです。とはいえ、店によってはいかにも日本風のカツカレーなども作っており、ココナツミルクを効かせたアジア風のカレーなども目に付くようになってきました。

 


焼き小籠包

このところ、中華街で大人気の焼小籠包。食べながら歩いている人たちも多い(クリックで拡大)

ちなみにカレーと並んでこのところの中華街を席巻しているのは焼き小籠包。元々は蒸して作る小籠包同様に上海の名物で、数年前に町田にできた店が行列のできる人気店になったことがきっかけで知られるように。当然、中華街でも焼き小籠包を売る店が増加、今では以前大流行した肉まんに代わり、主役の座を奪いつつあります。他の街と違い、中華街では具にふかひれを入れたり、皮に青菜を練り込んだりとバリエーション豊富な品が売られているのが特徴。さすが、プロの料理人が集まっている街だけあります。

 

 
占い店舗

あちこちで見かけた占いの掲示。基本は手相占いで、50店舗以上あるのだとか(クリックで拡大)

ちなみにもうひとつ、最近の中華街で流行っているのは占い。逆に少し前にうるさいほどだった甘栗の押売り(!)は多少静かになっています。

 


正統派からオタク系まで種類豊富な
「中目黒~祐天寺」

香食楽の薬膳カレー

香食楽の薬膳カレーに揚げ野菜、チキンをトッピング。各種のスパイスが効いている(クリックで拡大)

最後は至って個人的な好みからピックアップ。数はそれほど多いわけではありませんが、それぞれに有名店揃いの東急東横線の中目黒~祐天寺(目黒区)です。中目黒銀座商店街の中にはカレーうどん発祥の店として知られる蕎麦屋、朝松庵、薬膳カレーで評判の高いカレー専門店香食楽、タイ料理のソイ7、山手通沿いにはフレンチも食べられるカレー屋さん、ムッシュヨースケがあります。

 

朝松庵

朝松庵のウィンドウに飾られた色紙類。中目黒銀座商店街の外れのほうにある(クリックで拡大)

ちなみにカレーうどんは2010年で誕生から100年を迎えたそうで、8月2日はカレーうどんの日なのだとか。発祥の店はごく普通の町場の蕎麦屋さんといった風情で、それと分かるのは店頭に有名人の色紙があるから。ただ、ものすごく美味なるものを期待していくと普通すぎて落胆します。世にカレーうどんが存在しなかった時にはすごかったんだろうなあと妄想しながら食べるべきでしょう。

 

ナイアガラ

以前は駅からすぐのところにあったナイアガラだが、現在は少し奥まった場所に移転。それでもやってくる人多数(クリックで拡大)

お隣祐天寺にはカレー好きというより、鉄道好きの人に有名な、汽車がカレーを運ぶ店、ナイアガラがあります。実にしばしばマスコミにも登場しており、出演後しばらくは必ず行列ができていますが、そうした時期でなければ特に大きな混雑は無し。いつも制服、制帽姿の店長さんは近くにある幼稚園の敷地内に置かれた大きな鉄道車輪を毎日磨いているほどの鉄道マニアで、お好きな人にはたまらないでしょう。ただし、こちらも雰囲気がメインと考えたほうが落胆しなくて済みます。

 

祐天寺には他にもスパイスがたっぷり効いた無茶苦茶辛いカレーが名物で激辛好きには聖地と呼ばれるカーナピーナ、タイカレーとデザートのプリンが絶品の一軒家カフェミタケ・オアシンその他があり、中目黒まで含めて考えると、かなりの場所でその店ならではのカレーが食べられます。その他、夕方から開いているモツ焼き屋さんや居酒屋なども多く、しゃれた雰囲気というよりは庶民的な街というのが本当のところ。構えずに訪ねてみてください。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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