田舎暮らし/田舎暮らし・スローライフ情報

ボクが出会った田舎で“つまずいた”残念な人たち

ガイドが長崎の海辺で暮らした十数年間に出会った残念な人たち。快適なだけではない生活環境、ご近所さんのおせっかい、離れて気付く都会への未練…… 田舎のオキテ(常識)につまずいてしまった、残念なエピソードを紹介。

堀江 康敬

執筆者:堀江 康敬

田舎暮らしガイド

楽しみを探しにあぜ道を走る残念な人たち

楽しみを探しにあぜ道をひた走る

楽しみを探しにあぜ道をひた走る

「田舎の楽しみは自然だけで充分」と移住して来たものの、未だに都会の便利さ楽しさを忘れられないSさん夫婦。

24時間営業のコンビニ、自動販売機、電車・バスなどの交通インフラなど、インターネットが普及してきたとはいえ、やはり都会には到底かなわないと日頃からぼやいていました。

都会生活を数十年体験している彼らには、我慢できない欲望が湧いてきます。美術館での作品展や大迫力の最新映画、本屋さんのハシゴ、演劇やバンドのライブなど、田舎暮らしでは体験する機会が無いのが現状です。特に音楽好きの彼らの場合、お気に入りの海外ミュージシャンが来日しても、わざわざ都市部に行くに行けず悔しい思いをすることも。

田舎暮らしとはいえ、大迫力のモニターもスピーカーも設置した、衛星放送とも契約した、最新作のDVDもネットでレンタルした…… でもやっぱり物足りない。やっぱりエンターテインメントはライブじゃなけりゃ!と、あぜ道を走り高速代を払ってまで追っかけをする夫婦でした。

幻のワイナリーを夢見た残念な人たち

海辺のワイナリーの実現を目指す

海辺のワイナリーの実現を目指す

何を隠そう、ガイドの私は無謀にも自家製ワインを作ろう!と企てたことがあります。話にのってきたのはお隣りの酒盛り友だちのHさん。

場所は我が家の前の海辺の空き地。「ココを使って自家製ワインが造れないか?1本だけでも出来たら凄い!」と、アルコールの勢いで盛上がったわけですが……

役場に紹介してもらった巨峰栽培四十年という達人に教えを請うと「わが国の生産地は北は北海道から南は九州まで全国にある」と、頼もしいお言葉。早速、現場に来て頂きました。御歳七十余歳、正しく達人の風情。しばし沈黙の後に、彼はこう呟きました「残念ながら、ココは潮をかぶる」。……でもだって、栽培は日本全国何処でもOKだって、電話では!

さらに達人の言葉は続きます。「ワインは極端にいえば、潰してそのまま置いておけば酒にはなる。肥料入れぐらいまではワシも手伝えるが、その後の若枝の針金止と剪定、芽掻き、袋掛け、消毒、その他もろもろは自分たちでやらにゃあならん。春に苗を植えれば二年目の秋には若木から少しは収穫できるじゃろう、まぁ五年目で一人前の量が取れるかな。しんどい作業じゃ。それに醸造はどうする?無免許でやったら手が後ろへまわってしまうから、どこかの専門工場にまかせるしかない」

固まってしまいした。二人の植物栽培スキルはというと、小学校の夏休みの宿題で朝顔の種を蒔き、育てたことしかありません。実はオリジナルラベルも考えていました。ワイン名は「まむし谷2001(私たちが引っ越してくる前に、地元の人はこの土地をこう呼んでいました)」。コルクの焼印なんかのデザインも凝っちゃって…… 完敗です。

その後、葡萄づくりは無期限延期と決定。しかしまだ諦め切れず、千円ワインを買ってきて「ラベルだけでも作ってハウスワインの雰囲気を味わおうか!」と懲りない残念な二人でした。

ご近所のおせっかいに溜め息する残念な人たち

田舎暮らしの夢はハーブガーデン

田舎暮らしの夢はハーブガーデン

田舎暮らしの「リラクゼーション」を求めて移住してきた、元商社マンのKさん夫婦。慰安旅行で会社仲間と訪れたことがあり、湖のような静かな海や緑豊かな棚田など美しい風景を残すこの地に惚れ込み、移住を決断。

しかし実際に暮らし始めてみて、自分の夢見ていたイメージと田舎の現実のギャップに徐々に困惑していきました。

Kさんの奥さんは、移住前から通信講座でガーデニングを受講し、田舎でのハーブガーデン作りを楽しみにしていました。最初はご近所付き合いも考え、リタイア後の畑仕事を楽しむお隣のM翁を「師匠」と呼び、庭仕事の教えをを請いながら良い関係を保っていたんですが……

しかし付き合いが深まるにつけ、M翁から自分の畑から間引きしてきた野菜の苗等々のプレゼント攻勢が。「あぁ、カモミールの、コリアンダーの、セージの、タイムの、ラベンダーを植える場所が無くなっていく!」。種蒔きから苗まで愛情たっぷりに育て上げ、後は庭に植え付けるばかりのハーブたちを見つめながら、奥さんは溜め息をつくばかり。

そしてある朝、我が家の庭付近で水道水の音が。慌てて表に出てみると、M翁が何やら幼木を植え付け水やりをしてます。彼はにこやかに「柳の木だよ。この時期に植えとけばスクスクと育って、いい木陰を作ってくれるから」と。和風庭園に変身しつつあるハーブガーデン(計画では)を見つめながら、奥さんは再び深い溜め息をつくのでした。

若い世代かシニア世代か、単身か家族か、100%の田舎か週末だけの田舎か…… それぞれの事情で異なるとは思いますが、田舎には都会を超える魅力があることは間違いないはず。しかし、都会でしか出来っこないこともあるはずです。田舎への移住は、それから先の人生を決定づけるターニングポイント。都会と田舎のメリット・デメリットをじっくりと考え、あなたにピッタリの田舎を探しましょう。

まだまだいます、田舎の残念な人たち。次回に続きます。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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