ところが火曜22時のドラマ10枠で放送中、仲間由紀恵主演の『美女と男子』は約5ヶ月、全20回と異例に長い放送期間です。なぜなのか?
インフレの影響
長くなった理由を書く前に、歴史を振り返ってみましょう。NHKドラマの放送期間が短くなったのは1970年代半ば、約40年前のことです。それ以前はオールスターホームドラマでヒットした1973年の『銀座わが町』など一年間続くドラマもありました。ところが、その放送中に第四次中東戦争が始まり、原油の不足により日本では「狂乱物価」と呼ばれる急速なインフレが発生。いわゆる第一次オイルショックです。
物価の高騰によりドラマ制作は苦しくなります。例えば怪獣がでてくるので制作費がかかる「ウルトラシリーズ」は1974年の『ウルトラマンレオ』で中断します。
NHKのドラマ制作もさまざまな問題が噴出します。特に有名なのは1974年の大河ドラマ『勝海舟』。途中で主演の渡哲也が病気降板し松方弘樹に交代したのは不慮の事態ですが、さらに脚本の倉本聰が週刊誌のインタビュー記事が問題になり降板。松方弘樹も「NHKはモノをつくるところじゃない」と発言するなどかなりトラブりました。
ちなみにテレビ東京系の『不便な便利屋』の主人公・脚本家の竹山純(岡田将生)は監督ともめたことから東京を離れて富良野を目指すところからドラマが始まります。明らかに『勝海舟』事件を元ネタにしています。
成功体験が放送回数を決めた
問題の後、NHKは体制を一新するため変えてきたのが放送期間・回数。放送期間が一年だった朝ドラを1975年の大竹しのぶ主演『水色の時』から半年に。1975年に始まった土曜ドラマは、当初は一時間強(回によって変わる)×約3話の変則形式。1976年に始まったドラマ人間模様は45分×4~6回ぐらい。
朝ドラは半年になって、『おはなはん』以来の良妻賢母から1976年の浅茅陽子主演の『雲のじゅうたん』で現在まで続くみずから夢を持ち働くヒロインに変わり上り調子。土曜ドラマは『男たちの旅路』『阿修羅のごとく』、ドラマ人間模様は『夢千代日記』『あうん』など、名作を生み出し絶好調に。
この成功から大河、朝ドラを除くNHKドラマの放送期間は短めになります。
次は「長くなりだしたのはあのヒット作から」